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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第5章:死の縁
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149.王に噓を吐けと?


「はぁ~っ!やぁと解放されたねぇ!」


「遅れて申し訳ありません姫様」


「仕方ありませんわ」



 俺たちは覆面集団を始末した後無事目的地であるマガラナに到着していた。


 そこで勿論色々と説明することになったのだが…思ったより長引きこの様だ。



「言っても1時間程度だけどな」


「えぇ…1時間は長いでしょうよぅ」


「事情の説明って奴は長ければ長い程誤解される可能性が減るんだよ」



 そんなことは無いと思うがまぁ…いいだろう、今はこんな事で論議をしている暇は無い。


 長かろうが短かろうがどちらにせよ予定より1時間遅れているのだ、早々に次の行動に移らなくてはいけない。


 大型飛空艇の操縦で休みは取れなかったがそこまでの苦痛は無い、これも現在俺の身体に起こっている異変が関係しているのだろうか…いや、こうなる前からある程度耐性があった気がする。


 …気がする?何故が記憶がはっきりしないな、良く考えてみると数日前までは覚えていて当然だったことが少しずつあやふやになっている…恐らくこれこそ俺の身体に起こっている異変が原因なのだろう。



「…」


「どうか致しましたの?」


「はい、どうやら少し記憶に障害が起こっている様でして…数日前までは覚えていた事がはっきりと思い出せないのです」


「記憶障害ぃ~?」



 姫様の不安そうな視線が痛い、お伝えしない方が良かったのやもしれないが…聞かれて嘘を言う訳にもいかないからな。



「いえ、問題ありません。もとより何時正気を失うかもわからぬ身ゆえ、姫様を王国に送り届ける事が最後の任務…と考えておりますのでそれまで身が持てば良いのです」


「最後って…騎士を引退するのぉ?勿体無いなぁ」



 勿体無いか、いやまぁ騎士を辞めたとしても大抵の元騎士は実力を失う訳では無いし大きな問題にはなりえないと思うのだが…まぁいいだろう。



「騎士を引退し…どこかの秘境で一人自害しようかと」


「…」


「騎士である私がモンスターと化したら止めるのは一苦労だと思いますので」



 謙遜はしない、騎士である俺が暴走して弱いわけが無いのだ、きっと多くの民を殺してしまうだろう。


 だが騎士としてそんな事を自分にさせるわけにはいかないのだ、だからこそ俺を殺す必要がある…と言っても騎士を辞めてもあの"宣誓"が解除されなかった場合もっと厄介なことになってしまうのだが。


 それに関してはまぁ…腕の見せ所という奴だろう、何とかする。



「駄目ですわ」


「そうだぜ、お前がわざわざ死ぬこと無えだろ」



 ドルティはともかく姫様はそう仰ると思って居た。


 だがこればかりは駄目だ、これに関しては自身でケリをつけなくてはいけない。


 自害は騎士にとって重要な最終任務でもある、何らかの原因で仲間や王国の民に自身が危害を加える可能性があるとき、騎士は最終任務として自身を討伐しなくてはならない。



「申し訳ございませんが、こればかりはどうかご容赦下さい」


「騎士君の死体は貰ってもいいのかなぁ~?」


「構いませんよ、アンデットとして人里にたどり着かない様に様々な魔術を遅延行使しますので用途は限られますが」


「え、えぇ…」



 恐らくスタンは俺を…いや難しいとは思うのだがきっと蘇生しようと思っていたのだろう、だがここまで異常な俺の身体だ、蘇生した際に未知の化け物にならないとも言い切れない為蘇生は出来ないように魔術で対策はさせてもらう。


 かつて俺が考えたように自身が死亡した際に姫様をお守りする為アンデットとして蘇るという手段はあるのだがそれは自爆系の魔術を遅延行使する必要がある、そうしなければ最悪の場合敵を排除したとしてもアンデットと化した俺は生者を襲ってしまうだろうからだ。



「ご安心ください、皆様にはご迷惑をお掛けしません」


「もしかしたら王国には解決法があるかも知れないしぃ~…まだ決断するには早いんじゃないかなぁ~」


「恐らく事情を知れば王国は私を処刑すると思いますよ。良くて国外追放ですので結局どこか人気のない場所で自害することになると思います」


「はあぁ!?じゃあこの事を黙ってればいいじゃねえかよ、聞かれてもとぼけりゃいいだろ」


「王に噓を吐けと?」



 まぁドルティの言う通りこの身体のことを黙っていてもいつかはボロが出る、そして異端者として処刑されるより俺は騎士らしく堂々と死んでやりたいものだ。



「じゃあなんだよ…お前は死ぬために王国に向かってるようなもんじゃねえか」


「それは違うぞドルティよ」


「…」


「俺は大戦で起こったことの報告と…何より姫様をお守りする為に王国へ向かっている」



 俺は伝えなくてはならない。


 魔族の戦力を、魔族の弱点を…伝えなくてはならないのだ…次の戦争で少しでも人類が優位に立てるように。



「さて、そろそろ移動しましょう」


「あ、うん…」



 スタンの気の無い返事を聞いて魔動車に魔力を送り込む。



「カロン」


「如何なされましたか?」


「わたくしは、…諦めませんわ」



 深い青色の瞳が俺を見つめる。


 とても美しい瞳だ。



「どうか…姫様の目的が果たされますよう」


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