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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第5章:死の縁
145/226

145.…へぇこういう構造になっていますのね



「あそことか良さそうじゃないですかぁ~?」


「おお、店も大きいし質の良い服がありそうだな」



 スタンが指をさしている方向を見ると一目で服屋と分かるデザインの看板が見える。


 看板のサイズが大きく遠目から見ても分かりそうなものだが、今回早々に見つけられなかったのはこの人混みのせいだろう。



「ではあそこでいいですわ」



 そう仰る姫様の表情はどことなく暗い。


 きっとこの人混みの中に居るのが不安でいらっしゃるのだろう。



「承知いたしました。では行きましょう」



/////////////////////////////



「おおぉ~!見たこと無い服がいっぱいだぁ~!」


「確かにそうだけどよ…お前最後に新しい服買ったのいつなんだ…」


「5年以上前…かなぁ~…」



 スタンの御洒落意識の低さはさて置きとにかく服屋に到着した。


 女物の服屋に入ることなど今まで数える程度にしか無かったが、こんなにも様々な種類の服があるものなのだと一人感動してしまう。



「サリン様!これとか最近の流行物ですよ!」


「最近の流行…随分と一風変わったデザインですわね…」



 高揚しているのかいつもより若干声の高いドルティが楽しそうに提示した服は随分と自分の常識と離れたデザインかつ変わった色合いをしている。


 こ、コレが流行なのか…そういえばこれに似たような服を王国で見かけたことがあるな…あの時は芸人か何かと思って居たがそういう事だったのか…



「試着できるみたいですのでどうですかぁ~!?」


「ええ、それはいいのだけれど…もしかしてそこで着替えるんですの?」



 姫様の視線を辿ると試着室と書かれた看板が付いた小さな個室があるようだった。



「はい勿論…え?何か問題でもぉ~…」


「そ…そうですわね」



 不思議そうな表情で見つめるスタンとドルティ。


 姫様の表情はどんどん暗くなっていく、もしかしなくともご不安なのだろう。


 恐らく湯に浸かった時同様ご一緒するべきなのだろうが…姫様の着替えをあの狭そうな個室で護衛…というのは…如何な物だろうが。



「カロン…」


「……ご一緒します」



 覚悟を決めて自分から言い出そうと思った矢先に姫様にご指名頂けた。


 他の二人よりは信頼されているのだと感じて嬉しく思う。


 思う…のだが…いや!護衛に集中するべきだろう。



「…へぇ!?騎士とはいえそれは流石に…こいつ男ですよ??」


「べ、別にいいではありませんの。それに貴女は彼以上にわたくしを守れますの?」


「それは…こいつには勝てませんが…!」


「ではこれが最善ですわ」



 姫様はいつも通りの表情に戻られる。


 がしかし、若干耳が赤くなっていらっしゃるのできっと恥ずかしいとは思っていらっしゃるのだろう。


 こうする事しか出来ない自分が情けない。



/////////////////////////



「…へぇこういう構造になっていますのね」


「…………………」



 最低限俺も入れる程度のスペースがあった為小部屋の隅で待機しているのだが…目の前で着替える女性をまじまじと見ていなければならない状況というのは中々に異様な気がする。


 もし俺が鍛え抜かれた騎士でなければ、劣情を催していただろう。



「どうかしら?」


「良く似合っております」



 上半身だけ服を来た姫様が俺のせいで狭い個室の中をくるりとお回りになる。


 …そういえば前に貸切露天風呂に入る際に見たパンツは小さなリボンが付いた白いものだったが今日は青いフリルのついたパンツなのか……まずいまずい!そこではない!今見るべきなのはそこでは無いのだ!



「それは良かったですわ。ええとそれでは…次はこれですわね」



 姫様が先ほど来ていた服を脱ぎ、事前に持ってきた何着かの内ひとつを手に取られる。


 ほう、まだお召しになってはおられないが既に姫様に良く似合いそうな雰囲気を感じるスカートだ。



「あっ…これは少し…恥ずかしいですわ」


「……流行とは無縁ですがこれは流石に疑いかねますね…」



 下半身だけスカートを履かれた姫様だったが、そのスカートには深いスリットが入っており角度によってはパンツが見えてしまいそうである。


 それはそうとブラもしっかり青いフリルの物でそろえている所がとても姫様らしい……危ない!この思考は駄目だ、切り替えなくては!



「ふふ、こうしていると普通の女の子みたいですわね」


「…そう…ですね」



 そう仰って微笑まれる姫様はとてもじゃないが"普通"の女の子には思えない。


 こればかりは仕方がない、なにしろ俺が今まで出会って来たどんな女性よりも美しく、そしてとても可愛らしいのだから。


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