142.そろそろエルドレインに到着します
しばらく他愛もない話をしつつ石畳の道を魔動車で走っていると遠目にエルドレインの低い外壁が見えてきた。
エルドレイン周辺にはあまりモンスターは出現せず、比較的平和なため最低限の外壁しか無い…という訳では無くあの低い外壁には仕掛けがあり、外壁を乗り越えようとすると魔術道具によって非常に強い防護魔術が行使されて登れないようになっているのだ。
…非常に強いと言っても一般的にという視点からであり、騎士である俺達からするととても脆く感じるのであまり信用はしていなかったりする。
まぁ俺達騎士の防護魔術には劣るとはいえ、それなりにエルドレインが長く存続しているのだから実際効果はあるのだろう。
確かに褒めようと思えば褒める事が出来る、例えば防護魔術が破壊されようとも再行使すれば大したコストもかからず再び外壁を再構築出来る…といった点などだ。
「そろそろエルドレインに到着します」
索敵魔術を行使する。
…どうやら付近にモンスターや魔族は存在していない様だ。
だからといって警戒を怠りはしない、もしエルドレインの住民が既に魔族の傀儡と化していた場合、油断し警戒を怠っていては奇襲された際に対処が後手に回ってしまう。
例え同じ人間だとしても思想が同じだとは限らないのだからな…いや、姫様に敵対する者など人間では無いな。
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「なんかあっさり入れたねぇ~」
街の中心部にある一際大きな噴水に腰掛けているスタンが言った通り本当に何もなく無事エルドレインに入れた為少し安堵する。
…まぁ街に入るたびにこう警戒していると何だか…こう何とも言えない気持ちになるな。
それにしてもこの街の建物はほとんどが石を組み合わせて作られているようだな、しかも屋根が平たい建物が多い。
ある程度器用な者であれば石のすき間を掴んで簡単に屋根の上に登ることが出来るだろう……危険だ、屋根上からの攻撃にも注意しておかなければ…
…いやいや!こんなこと考えている場合ではない、飛空艇の搭乗券を手に入れなければならないのだ、急いだほうがいいだろう。
「私は搭乗券を購入してきますが、皆様はどうなされますか」
「ワタシは適当にブラついてるよぉ~…あ、サリン様もどうですかぁ?」
「遠慮しておきますわ」
「何か役立ちそうな魔道具が無いか見てくる。えっと…サリン様も一緒にどうですか…?」
「遠慮しておきますわ」
三者三様の答えが返ってくる。
…いや姫様はどうなさるのだろうか?姫様は時々突然お姿が見えなくなられるのでなるべくいつでも護衛できる様、事前にどこへ向かわれるのかを教えていただきたいのだが。
………
「…では姫様、私と共に搭乗券を買いに向かいませんか?」
「そうですわね…良くってよ」
「感謝致します」
姫様に頭を下げ一礼をする。
姫様が俺と共に搭乗券を買いに行って頂けるのならば護衛もし易いし姫様の傍に居られるため良い良い尽くしだ。
…若干その他二名から羨望の眼差しを向けられている気がするが多分気のせいでは無いのだろう。
はは、羨ましいか?
「それではまた1時間後にここで合流致しましょう」
恐らく1時間も掛かりはしないと思うが、長めに時間を見積もっておいた方が時間を気にせずその他二人が買い物をすることが出来るだろう。
「はいよ」
「うぅん…わかったよぉ~」
スタンが少し難しそうな顔をしているがとりあえずは大丈夫そうだ。
…まぁ姫様の決定に文句をつけられないのだろうが本当は姫様と行きたかったのだろう。
「それでは姫様、向いましょう」
「ええ、そうしましょう」
姫様はニッとほほ笑まれる。
それにしてもエルドレインか…もう随分と大戦跡地から離れたな。
ここまでの旅は短いようで…とても長く感じられた。
きっと姫様と共に歩んできたからだろう、一つ一つの出来事が新鮮で…驚きに満ち溢れている道のりだった。
だがまだ中間地点だと言えるだろう、ここからはモンスターが減るがその代わり人間が増える。
人間すら信用できないというのはここに来るまでの道のりで既にわかった事だ、用心しなくてはな。
「どうか致しましたの?」
「…いいえ。何でもありません、行きましょう」
流石に搭乗券を買うだけで面倒ごとになる事は無いと思うが…気を引き締めていこう。
新しいシリーズを書き始めました。
もしよろしければご覧ください。
きょ、強制では無いのでご安心くださいね…