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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第5章:死の縁
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138.訓練しているなぁ!!



「っと!あぶねぇなぁ!!」



 緑髪の女性が隠し持っていたナイフ?を受け流した男はその勢いを利用して女性を投げ飛ばした。


 緑髪の女性は体重が軽いのかそのまま壁に打ち付けられてしまった。



「ぐぅっ!?」


「お姉ちゃん!!」



 壁際で苦しそうに悶えている緑髪の女性に青髪の女性が駆け寄り必死に呼びかけている。


 どうするべきだ…正直この得体のしれない二人組に関してはさっき会ったばかりの他人だ、そんな他人を助けるためにジオネを危険に晒していいのだろうか。


 ……良いわけが…無いだろう。


 俺は強いが万能なわけじゃない。


 アレもコレもと欲すればいつか痛い目にあうだろう。


 


 だが俺が痛い目をみて、その代わりに他人を助けられるのなら…それでいいじゃないか。



「ジオネ」


「アァ、まかせとけ…よっとォォ!!」



 ジオネの身体強化魔術が俺に作用し、俺の戦闘力が高まる。


 男はこの部屋唯一の出入り口であるドア付近に陣取っている為不意を突くのは難しい、だがそんな必要はない、正面から叩きのめせばいい。



「フッ!!!」



 本来ならば出せない速度で男に詰め寄り直剣をを振るう。


 もしこの強化魔術を今初めて受けていたとしたらきっとこの身体能力の向上に驚いていただろう。


 だが俺は普段からジオネと魔術の訓練をしていた為驚くことはない。


 むしろ平常心だ…いやここまで少なくない人数を殺してきたのに平常心というのは若干不味いのでは…?無事に戻ったらもう一度道徳について学んだ方が良さそうだな…。



「!?おうおうなかなかやるじゃねえかぁぁぁああ!!!」



 驚いたことに男は腰に携えていたショートソードで俺の一撃を防いだ。


 この速度に対応するとは…とてもじゃないが普通の人間にこんなことが出来るとは思わない、きっと何かしらの訓練を受けていたのだろう。


 俺はこのまま後退せずに男と何度も剣を交える。



「はッはぁ!小僧、訓練しているなぁ!!」



「…」



 俺は男の言葉を無視してひたすらに直剣を打ち込む。


 腕が重い。


 流石に少し疲れてしまっているようだ。


 だがここで引くわけには行かない、引けばジオネが殺されてしまうかもしれないのだから。


 もう一度気合を入れ、戦闘を続行する。


 

「無視か…まぁいい、それより小僧?随分とボロボロじゃないか。ここまでずっと戦って来たんだろォ?なのに全然疲れてないように見えるなぁ?いいよなぁ若さってのは」



 なんだこのおっさんは…無視してるのをいいことにずっと話しかけてくる…。


 あれか?精神的に追い詰めようとしてるのか?


 …もしそうなら効果は大有りだよ…おっさん。


 そこそこイライラしてるからな…。



「疲れてはいるさ、顔に出さないだけで」



 直剣を大きく振りかぶり頭頂部めがけて振り下ろす。


 男はそれを先ほどと同じように受け止める。


 剣と剣がぶつかった直後に手を離す。



「死ね」



 直接男の身体に触れて爆発魔術を植え付け、そのまま魔術を行使する。



「ぼべ」



 男の上半身はおろか部屋ごと吹き飛ぶ。


 重傷を覚悟していたが、どうやらジオネが防護魔術で守ってくれたようだ。



「ありがとう、助かった」


「それは私のセリフだ、カロンが来なけりゃ今頃どうなっていたかわかんねぇからな」



 口は悪いが、ジオネはこのように根は優しく常識的だ。


 本当に良い友達だと思う。


 とりあえず男を殺したので索敵魔術を行使する。


 …もう俺たち以外に生きてる人間は居ないようだ。



「君たちはこれからどうする?」



「わ、私たちはこのまま二人で…逃げようと思います。助けてくれてありがとうございました」


 

 緑髪の女性を担ぐ青髪の女性は無残な男の死体をみて顔をしかめながらそう答えた。


 さっき一瞬見えた耳…きっとこの青髪の女性にも同じ特徴があるのだろう…妹?の様だしな。



「わかりました。次はこんな奴らにつかまらないよう気をつけてください」



 あまり詮索するのは良くないし、きっと望んでもいないだろう。


 だから今回の件はここまでだ、ここから先は当人たちだけでどうにかするべき問題なのだろう。



「はい、勿論そうしたいです。さ、いこうお姉ちゃん」



 青髪の女性は緑髪の女性に肩を貸して歩き始める。


 見たところ大きな外傷は無かった為きっと大丈夫だろう。



「…ジオネ、俺たちも帰ろう」


「…ああそうだなァ」



/////////////////////////////////////////////


 

 …俺はこの話をところどころ省略して姫様達に話した。


 特に耳の長い姉妹については耳の特徴を無かったことにして話した。


 姫様にはあとでお話するつもりなのだが。



「ずず…そんなことがねぇ…あ騎士君の分も用意してあるからねぇ~」



 スタンはいつの間にか用意していた珈琲を啜りながらそう反応した。


 良い香りがする。



「じゃあやっぱり昔からタフだったってことかぁ」



「…まぁそうだな、そんなところだ」



 まぁその通りではある…が…いや、言うのはやめておこう。


 わざわざ口に出すほどの事でもない。



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