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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第5章:死の縁
132/226

132.…そうかよ



…日の光がまぶしくて目が覚める。



「…」



 もう朝か、宿の外からは鳥の囀りしか聞こえない。


 窓から外を見ると太陽はまだまだ低い位置にあるので早朝であることが分かる。


 どうやら俺はだいぶ早起きしたようだった。



「しぴーー…………………んごッ………………」



「…」



「カ八ッ!………しぴー…」



 スタンはまだ眠っている。


 随分と幸せそうな顔だ。


 よく考えてみれば、広範囲人型消却爆弾によって死んだ人間の中にスタンと親しい者がいたかもしれない。


 知り合いや友人が死んだとしてもここまで平和に眠れるというのは才能なのだろうか?


 まぁそもそも親しい人間が居ないって可能性も…いやいや!それは流石に失礼だな。


 うむ…いつまでもスタンの寝顔を見ているわけにもいかん、とりあえず重装鎧を装着して自己鍛錬に励むとしよう。



//////////////////////////////////////////



「……まだ早いと思うが」



 俺は魔動車を止めた空き地に訓練をしに来ていたのだが…



「…おはよう」



 …ボス子が魔動車の前で突っ立っていた。


 大きな背嚢を背負っているので恐らく同行する気はあるのだろう。


 …まぁこの時間にいるのはきっと時間を伝えられていないからなのだろう。


 案外こいつはしっかり者なのかもしれない。



「姫様ならばまだお部屋にいらっしゃる、時間はまだあるので座っているといい」



 ボス子が目を丸くする。



「…ああ、わかった。…それにしても、やっぱり騎士は頭がいいんだな」



「?頭がいいかと聞かれればば悪くは無いとは答えるが…何故そんな事を?」



 ボス子は魔動車に背を預けて座り込む。



「聞かなくたって察してるんだろ?…さっきこの時間に居る私を見て、全部事情を理解した様だったからそういったんだよ」



「なんだ、そんな事か。それくらい騎士でなくとも出来る」



「…そうかよ」



 ボス子は黙ってしまった。


 俺も特に話す用事があるわけではないので鍛錬を始める。



「……」



 まずは素振りからだな…よし、始めよう。



//////////////////////////





「なぁ、おい」


「……」


「なぁおい!!」



 ボス子に声を掛けられて素振りを止める。



「…なんだ」



「お前どんだけ素振りしてんだよ!もう3時間ぐらいぶっ通しじゃねえか!身体をぶっ壊してぇのかよ!」



 ボス子が半狂乱で詰め寄ってくる。


 …確かに傍から見れば異常に見えるだろうが、騎士としては普通な部類だ。



「私は騎士だぞ、これくらいは当たり前だ」



「これで普通って…聞いてはいたが…イかれていやがる…」



 ボス子が本気で引いているのがなんとなく分かる。


 そこまで言うほどだろうか?



「…なぁ、なんでお前はそこまでして騎士になろうとしたんだ?」



 …なぜ騎士になろうとしたか…確かにここまでして騎士になった理由は気になるのだろう。


 俺の場合は特にどうということは無い、ある騎士に適正があると言われたからなっただけだ。



「適正があったからだ」



「へぇ、やっぱり騎士にも適正があるとかないとかあるんだな!じゃあお前はどんな適正があったんだよ、頑丈さか?」



 興味津々といった様子で話を続けてきたので会話をつなげる。



「いいや、俺は幼馴染を助けるために山賊を皆殺しにした。そうしたら本来その山賊を討伐するはずだった騎士に拾われた」



「皆殺しって…お前その時いくつだったんだよ」



 微妙な表情を浮かべるボス子にそう尋ねられる。


 まぁ、結局幼馴染も無事だったわけで俺としては別に悪い思い出だったわけでもない為、普通に話す。


「確か…16だったか」



 ボス子の表情が強張る。


 …そんな目で見るな、別に裏切りさえしなければ俺の直剣がお前の首を切断することも無いのだから。



「…やっぱり、イかれてやがる」



 なかなか失礼だな、こいつ。


 肝が据わっている…という認識で大丈夫なのだろうか…



「ちなみによ、その幼馴染ってのは無事だったのか」



 無事だったのかと聞かれふと幼馴染を思い出す。


 金髪で、さらさらで腰までとどく髪が綺麗な奴だった。


 瞳も髪と同じく輝くような金色で顔が整っており、なかなか美人ではあると思う。


 …あの恐ろしい口調とドラゴンの如きギザギザの歯が無ければ。



「ああ…無事だ。臓器を売られることも犯されることも無かった」



 まぁ、そりゃ攫われた瞬間にたまたま居合わせた俺が逃げた山賊の拠点までずっと追いかけまわしたのだからな。


 そんな時間もあるまい。



「へー、付き合ってんのか?」



「?ああ…付き合ってはいないな」



 あまりにも唐突だったので一瞬考えてしまったが別に付き合っているわけでは無いので正直に答える。



「なーんだ、つまんねぇ男だな」



 なんだこいつ…


 なんかこの感覚懐かしいぞ…………そうだ、同僚騎士のアイツにそっくりだ。


 先輩騎士の怒りを買って協会送りにされたアホ。



「なんの話ですの?」



「!?姫様ッ…おはようございます」



 ど、どれだけタイミングが悪いんだ…


 まさかボス子がわざと姫様が来るタイミングでこういう話を切り出しているのではないか?



「おはようございます姫様、ちょっとこの騎士の昔話を聞いておりました」



「へぇ、わたくしも聞きたいですわ」



 自分の過去の話などあまり面白くは無いと思うのだが…



「………車でお話しいたします」



 まぁ姫様がお聞きになりたいと仰るのであれば、お話するとしようか。

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