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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第4章:金級冒険者
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116.ふあふふふっふはは



「まだスタンは戻ってきていないようですわね」



 俺達は特になにかするわけでもなく旅館に戻った。


 日は少しずつ落ちてきているが部屋の場所が良い為か、部屋の中はまだ明るい。



「そうですね。危ない目に合っていなければ良いのですが…」



 非常時は合図をする手筈になっているのでいつ呼ばれても良いように重装鎧は装着したままにしておこう。


 それに…装着していた方が重装鎧の修復効率は良い。

 


「貴方もお座りになって」



 姫様は先にお座りになられ、俺に座る許可を出される。


 きっと俺がいつまでも座らず立っていたからだろう。



「正面失礼します」



 俺は姫様の正面に座る。


 改めて部屋の中を見ると全体的に落ち着いたつくりになっているが、戦闘で気が立っていた為かあまり落ち着かない。


 いや…姫様がいらっしゃるからだろうか?



「そういえば昼食は取りましたの?」



 …そういえば何も食べていない。


 緊張からか腹が減ってることに気がつかなかったのか。



「いえ、食べていませんね」



 姫様はニッと微笑む。



「では、何か取り寄せましょう?」



 そういえば受付の者に旅館内で腹が減った時に別料金になるがいつでも食事を用意できると説明されたのを思いだす。


 …姫様は何故知っているのだろう?



「そう…ですね、私が注文してきます。姫様は何をお食べになられますか?」



「わたくしは不要ですわ」



 …俺が姫様に気がついたのは最終試合の時だ。


 恐らく昼食を取ってから観戦しに来られたのだろう。


 はじめから観戦なさっていた可能性は低い…なぜなら姫様が初めからいらっしゃればもっと早く俺が気がついていたはずだからだ。


 姫様のお美しさは凡衆にかき消されるような物ではない。



「承知致しました、では行ってまいります」



 不要と仰っていたが…デザートくらいならお召し上がれるだろうか?


 何か姫様の為に甘い物も買ってこよう。



//////////////////////////////////////////



「おっほおおおおおおおおおおおおおおおお~~!!!」



 ワタシは目の前の異常な生き物達を見て心臓が高鳴る。



「どうなってんのコレぇ!ふあふふふっふはは」



 実はワタシは研究者になる前、コレらの様に人体に異常のある者達を調べていた時期があった。


 モンスター化したわけでも無いのに異形になり果てた者、異種族と人間の間に生まれた子供……本当に見ていて飽きない。



「めぇずらしぃ~ねぇ~!!?きみはぁ、ナニと何の混血なんだいぃ~?」



 おびえた目でワタシを見る魚と人間がくっついたような生き物は喋れないのか引き続きおびえているだけ。



「むしぃ~?まぁいいけどさぁ」



 コレはあきたので次のコーナーへ向かう。


 ワタシは早く新しいモノを見たくて見たくて身体がぐにぐにするよ!


 早歩きで垂れ幕をくぐり次のコーナーにたどり着いてすぐに今までで一番ヤバいのがある。



「へわぁ……なにこれぇ…」



 若干濁ったガラスの箱になみなみ入っている肌色の液体。


 ガラス箱の上部は開いており触れても良いみたいなので右手を突っ込んでみる。



 



 「うぉおう………」



 桶にためた水に手を突っ込む時と同じように抵抗なく手が入る。


 生暖かい…液体に触っているというよりは…太ももに挟まれているような感覚?


 全く手にこびりつかず、濡れもしない。


 まるで人肌に触れているようだ。



 むにむに



「ヒェッ……………………」



 なんかこの液体ワタシの手を揉んでくるんですけどぉ…



「…これ生きてたりするのかねぇ~」



「気に入りました?」



「うん」



 なんか…この液体には可能性を感じる。


 なんというか…生命の元的な何かを感じる。



「コップ一杯分だけなら譲りますよ」



「ほんとぉ!?…………ていぅか………どちらさま…??」



 ワタシはゆっくりと後ろに振り向く。


 いやぁ…後ろに音もなく現れないでよぉ…こえぇからさぁ…



 振り返ると入口で立っていたおっさんが居た。


 ただものじゃねえ……気がするおっさんだ。



「ははは、とても熱心に触っていらっしゃいましたね」



 足音に気がつかないほど、と言いたいのだろう。


 悪かったなぁ!



「えぇえ、なんとも不思議な感じでぇ~いいですねぇコレ~」



「そうでしょうそうでしょう。コレは元人間なんだとか」



 まぁ…ですよねぇ。


 そんな気はしてたよ。


 だってワタシの手を揉んでくるし…



「因みに本当にコップ一杯分もらっちゃっていいんですかぁ~?」



 おっさんは壁に掛けてあるコップを一つ手に取り、その生命の元的な液体をサッと回収する。


 そしてまるで酒でも渡すようにワタシにコップを差し出す。



「はいよっ!!」



「いや軽いよぉ!!」



 おっさんはキョトンとしている。



「それなんかもっとヤバい奴じゃぁないのぉ!?そんな簡単に はいよぉ!って人にあげていいやつじゃないでしょぉ!?」



「ぼははは!大丈夫ですよぉ~!はいどうぞ」



 ぼははは!じゃねぇよぉ~…なんだこのおっさんよぉ~…



「あぁ~!まぁいいやぁもう…アリガトウゴザイマス」



 もうなんか親戚のおっさんにジュース貰ったみたいじぁゃん…



「私もなんかたまたま見つけただけで実はなんも分かってないんですよ」



 たまたまって…ドコでなにしてたらこんなん見つけられるんだよぉ~…



「たまたま…ねぇ…」



 コップの中の液体を見つめる。


 ただの肌色の液体だ…でも…


 ワタシの目には…人間の姿が映っていた。


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