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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第4章:金級冒険者
115/226

115.それは安心ですわね


「カロン、もう鎧の傷が無くなってますわ」



 光栄にも姫様と二人で温泉旅館までの道を歩いていると姫様がこちらを見てそう仰る。



「…本当ですね。あれだけボロボロだと普通なら3日は修復に時間がかかるのですが…」



 焼けただれていた重装鎧は既に本来の輝きを取り戻しつつあり驚く。


 この重装鎧は着用者の魔力を吸収して自己修復する優れものだ。


 そして俺の魔力は以前より強力になっている。


 これだけ早いとなると着用者の魔力が強力であればあるほど重装鎧の修復も早くなるというのは本当なのだろう…別に疑っていたわけではないのだが。



「それにしても…よくあの一撃を受けて立っていられましたわね」



 "あの一撃"…確かにあれは強力だった。


 俺は今、本来重装騎士が使えるはずの"守護の誓い"を使う事は出来ない。


 誓いを使えばあそこまでの重傷を負う事は無かっただろうが…あの誓いは破棄してしまったのだから仕方ない。



「あれぐらいでしたらもう数発受けても死にません。ご安心下さい」



 ここでギリギリでした、などとぬかせば姫様が不安になられるかもしれない。


 だから俺はやせ我慢をするのだ、全ては姫様の為、王国の為。



「それは安心ですわね……でも、避けれるのなら避けて下さいまし」 



「…そうですね、承知致しました。姫様をお守りする時以外は避けるよう努めます」



 姫様はどこか不安そうな表情で歩まれる。


 そんな表情にさせてしまった事は悔やまれるがこれは譲れないのだ。


 たとえ何があろうと、それこそ俺の命が消え去ろうとも姫様を守らなくてはならないのだから。



「…そういえば、あの時防護魔術は行使できませんでしたの?」



 姫様はまたいつものお美しい無表情に戻られる。



「はい…一応被弾直前のタイミングで行使を試みたのですが…強力な魔力の本流に私の魔力がかき消されてしまいまして…」



 姫様は何かを考える素振りをなさる。



「…なるほど…強力な魔力にかき消される………防護魔術を破壊したわけではなく魔術が成立する前に魔力が霧散して…流されたのかしら…?」



 姫様は真剣に長考なさっている。


 あまり見る機会がないが俺は姫様のこういったお姿を見ているのは嫌いじゃない。


 とても絵になる…というか…なんというのだろうか?



「…何かしらに使えそうですわね…ありがとうカロン。また面白そうな案を思いつきましたわ」



「お役にたてて光栄です」



 今回の件で姫様のお役にたてたのならあの一撃を受けた甲斐があるというものだ。



「王国に帰ったら犯罪者で魔人病に掛かっている者で実験してみますわ。もし成功すれば強力な防護壁のような物を作れそうですの」



「犯罪者の……しかも魔人病患者から大量の魔力を放出させて壁を作るのですね。確かにそれならば飛来する魔術も霧散するかもしれません」



 素晴らしい…今までは魔術による物理的な壁を生成する事によって防ぐことが一般的だったがその方法を使えば犯罪者を有効活用しつつより広範囲をカバーする事が可能だろう。


 今までの防護魔術は範囲が狭い上に術者以上の魔力を持つ者の魔術によって砕かれることが少なからずあったのだ。


 だがこの方法はどうだ?そもそもの魔力を霧散させるため魔術であれば…ほぼ通さないだろう。


 …確かに魔術ではなく単純な魔力をぶつけられたり、物理的な攻撃をされたりすれば効果は薄くなるだろう、だが魔術を通さないという圧倒的長所を上手く利用すれば凄まじい優位性を得るかもしれない。



「でも行使する前ならまだしも既に行使した魔術が本当に霧散するかはまだ実験しないとわかりませんわ」


「私で良ければいつでも実験に協力致します」



 俺ならば強力な魔術を受けても耐えられるだろう。



「貴方はダメですわ」



 姫様はいつも通りの無表情でそう仰る。


 …断られてしまった。


 なぜだろう?俺は姫様のお役に立ちたいのだ。


 だが姫様がそう仰ったのだ…仕方あるまい…



「わたくしが唯一信頼している人間を実験台にするなんて…ありえませんわ」



「姫様…」



 そう…か…そういわれてしまえば俺に抵抗の余地はない。


 姫様のお役にたてないのはとても残念だが…そういって頂けるのはとても嬉しい。



「では…姫様の護衛として実験を見学…というのはよろしいでしょうか?」



 姫様はほんの少し驚いたような表情になられるが、すぐに元のお美しい無表情になられる。



「そ…それなら…良いですわ。こちらに飛んで来たら…危ないですものね」



「はい。とても危険ですので、必ず私がお守り致します」



 姫様はニッと微笑まれる。



「その時は宜しくお願い致しますわ」



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