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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第4章:金級冒険者
114/226

114.良い筋肉ですね

更新が減り申し訳ございません。

ブクマや評価のおかげでモチベはありますので完結は必ずさせます。

ご安心下さい。




「カロンが魔族だとでも仰りたいの?」



 サリンは無表情でラルスを見る。



「…っ…いえ…そういう話を聞いたことがあるだけです」



 ラルスはサリンに見つめられて怯む。


 たとえ無表情だとしても一国の姫に若干責めるような口調で話されると大抵こうなるだろう。



「姫様…今のところ問題は無いと思いますが…もし私が正気を失ったときはお見捨て下さい」



「嫌ですわ。そんな事よりなにか身に覚えはありませんの?小さなことから解決につながるかもしれませんわ」



 サリンは問答無用で断る。


 そして断られたはずのカロンは自分を見捨てようとしないその強い意志を嬉しく感じた。



「…………ええと…身に覚えはいくつもありますが…そうですね…むむ…」



 カロンはサリンの気持ちを裏切らない為に何とか記憶の中の原因を探る。


 ……それらしい原因は…いくつもある。


 昔から前線で魔術を受け続けた事…ヘルエス様の一撃を受けたこと………心臓を食った事。



「…ご存知だと思いますが生き物の心臓を食らうと身体が丈夫になる…という話がありますよね」



 ラルスは大きく頷く。



「ああ。俺も小さなころに戦死した兄貴の心臓を食ったことがある…そのおかげで今は…この身体だ」



 ラルスは筋肉を見せびらかす。


 …心臓を食うという行為はあまり一般的ではないが亡き者の意思を受け継ぐという意味の儀式で食べる事はある。


 実際魔力の源である心臓を食えば様々な効果があり、街によっては魔力不足時に薬として扱う場合もある。



「良い筋肉ですね。それで心臓の件なのですが…私は魔族の心臓を食ったことがあります」



「……魔族の…心臓…」



 ラルスは言葉を失う。


 確かに魔力の源である心臓はほぼ全ての生き物に有るものだ…まず魔族の心臓を食らう意味が分からないのだが…それ以上にそんな実例は聞いた事が無い。



「わたくしも魔族を食べたことがあるけれど心臓は食べた事ありませんわ」



 サリンはカロンが孤立しないように自身の話しをする。


 自分も魔族を食べたといえば一方的に異端認定されることはひとまず避けれると考えたからだ。



「サリン様も食べたんですか!?…俺はどうこう言いませんが…」



「当然です。姫様に文句を言うのならその者が異端者なのですから」



 カロンはサリンの気遣いを察して話に乗る。


 ちなみに…魔族なんかよりもっと良いものを食べてほしいと思っていたりする。



「それで…カロンはこの先どうなりますの?」



 沈黙が訪れる。


 だがそれは仕方がない、魔族の心臓を食べた者の前例なんて無いのだから。



「すいません…俺には分かりません。騎士様は現状で身体に異常あるのか?」



「…………問題ありません。何があろうと姫様だけは王国まで無事に送り届けますのでご安心下さい」



 カロンの身体は初めこそ魔力の本流を受けて身体を蝕まれていたが、今となっては針を刺すような痛みや異物感はない。


 焼けた皮膚の痛みは戦闘中から少しづつ減って行き、今では全く痛くないのだ。


 むしろ皮膚はもう完治しているのではないかと思うほどだ。


 その回復力自体は異常ではないのか?…と思うがカロンからすれば都合が良いので問題ないのだった。



「…」



「……そんな顔をなさらないで下さい姫様、これは自業自得なのですから」



 ラルスはどう見ても変わっていないサリンの表情を見て不思議に思うのだった。



////////////////////////////////////



「結局解決方法が分からなくて申し訳ない。ただの魔力過多だったならば治せたのだが…」



 ラルスは残念そうに頭を下げる。



「いえ、お気になさらず」



 こればかりは仕方がなかった。


 あの大戦で生き残るには…ああするよりはなかった。



「カロン、本当に歩いて大丈夫ですの?」



「問題ありません」



 もともと傷の治りが早いカロンは今の身体になってからその特徴が以前より強く出ている。


 血に魔力がどれくらい影響しているかをチェックするために指を少し傷つけたところ、ものの数十秒程で傷口が塞がった。



「まぁ…なにか他に手伝えることはありますか?」



 ラルスは微妙な表情でサリンに話しかける。



「ではカロンの優勝賞金を明日受け取りに変えて下さらないかしら?わたくし達は明日にはこの街をでますの」



 ラルスは欠けた白い歯をニッコリと見せて強く頷く。



「お任せくださいィ!」



「ええ、任せましたわ。ではそろそろ行きますわ」



 ラルスは姫様の役に立てる事を一国民としてとても光栄に感じた。


 それはもう街で英雄と称えられる事の何倍もだ。


 まぁ…不敬だがせっかくならアトロさまが良かったとは思っていた。



「お気を付けてー!」



 大きな騎士の背中を見て亡き兄貴を思い出す。


 兄貴は王国の為に戦って死んだ。


 だが…ラルスはそんな兄貴を誇りに思っていた。

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