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騎士と狂姫は歩く  作者: 御味 九図男
第4章:金級冒険者
110/226

110.なんでこの人


【【5番!アマシアぁァァぁ!!お得意の戦術は騎士様に通用するのかぁぁぁぁ!?!?】】




 コロシアムの中心に露出の多い服装の女性が入場した。


 自身の身長より長い大杖を装備した姿はなにやら妖艶な雰囲気を醸し出している。



【【8番!リコォォォォォォ!!さっきの試合はアッサリ終ってしまったが今回はどうなるんだぁぁぁぁぁ!?!?】】



 俺の番だ。


 コロシアムに入場する、客席を見渡すとやはり物凄く大勢の客が居る。


 先程より一層歓声が大きくなる、これは俺が騎士だからだろう。



「よろしくね」



 アマシアが片手を出してくる。



「こちらこそ」



 俺はその手を握り返し、握手する。



「大きな手ね、流石騎士様だわ」



 アマシアは関心したように俺の手を握る。


 実際手甲は大きく分厚いのでこちらとしてはあまり他人の手を握っている感覚が無い。



「貴女は手が綺麗ですね」


「肌の手入れは欠かさないのよ」



 俺らは手を離してお互いに距離を取る。


 そして抜剣し、盾を構えて試合開始の合図を待つ。



【【試合開始ィぃぃぃ!!!】】



 試合開始の合図と同時に鋭い水流の槍が飛来する。



 ギュギギギギギ



 槍が俺の盾に命中するとまるで別の何かが当たったのではないかと錯覚するような凄まじい音が鳴る。


 もし俺の盾がもう少しやわな素材でできていれば穴が開いていたかもしれない。


 このまま槍を耐え続けても仕方ない、アマシアの元まで槍を押し返して進もう。



「この魔術を押し返すなんて流石騎士様だわッ…!でもそんな事騎士様を相手にする時点で想定済なのよ!!」



 突如水の圧が消え、今度は俺の足元に水が溜まり始める。


 何とも不思議な光景だ、水が俺のひざ上まで溜まっている…


 それだけなら特に不思議ではないのだが…この溜まった水はまるで透明の壁に囲われているように俺の回りにだけ存在しているのだ。



「ハハ」



 思わず笑ってしまった。


 魔術なのだから何があってもおかしくないのは分かるがなんかこう…個人的にはおもしろい光景だ。



「…?まぁいいわ、そのまま溺れてもらうわよ」



 アマシアはさらに続けて水の魔術を行使し続けている。


 ここからアマシアはどう出るだろうか?溺れさせるだけだろうか、それとも圧縮とかしてくるのだろうか?いや…そのまま氷漬け…とかもやってきそうだな。


 そうこうしている内に俺は全身水に包まれる、実は重装鎧に泳ぐ機能はついていないのでどうにかしないと溺れるのだ。



「…」



 幸い鎧の重さのおかげか俺の足はまだ地についている。


 このまま歩いて這出てもいいがどうせ死ぬことの無いぬるい闘技なのだから観客を楽しませてやりたい。


 さて…どうしようか。



「コポポ…!」



 いい事を思いついた、アマシアは俺にまとわりつく水から細い水の線を通じて繋がっている事が分かる。


 正直水の中からは本当に繋がっているのか視認が難しいのだがそこから魔力の流れを感じるから多分つながっているのだろう。


 そもそもこれだけの魔術の行使を遠隔で長時間するのは非常に疲れるはずだ、きっとアマシアは俺がここから抜け出す事を想定して魔力の温存がしたいのだろう。


 だが忘れてはいけない、騎士とは…戦闘は勿論その他たいていの事を完璧にこなせる、またはすぐに上達するセンスがあって初めて騎士になれるのだ。


 そんな騎士が魔術を行使できないわけがない。



「……!!」



 水中で放電の魔術を行使する。



「ゴボボボ」



 全身を激しい痛みと痙攣が襲う、だがそれは勿論俺だけでは無い。


 激しい電流は水を伝いアマシアを襲う。



「ばあっ!?あばばばバっばばばババばばばばばバばば」



ぱしゃん



 俺を包み込んでいた魔術による水溜まりは効力を失い地面に流れた。


 


「はぁ……フゥー…」



 息を整えてアマシアを見る。



「ぐうぅ…貴方ねぇ…!まだ肌がピリピリするわよ…!」



 流石に気絶しないか、もう少し威力を上げたほうが良かったようだ。


 だが殺してしまうのは不味いので気を付けなくてはならないな。



「流石騎士様ね、でもこれでも私は銀級冒険者なんだから!!」



 アマシアがそう叫ぶのを聞いてとっさに盾を構える。


 …が魔術は飛んでこない、アマシアが行使した魔術は攻撃魔術ではなく飛翔魔術だったようだ。


 アマシアはどんどん上昇して行く。



「さぁ!いくわよ!!」



 流石にこれは少し困ったことになった…重装騎士は対空性能があまりないのだ。



「ハァア!!」



 上空に大量の半透明の鋭い針のような物が出現し、それらが一斉に俺めがけて発射される。



「…」



 半透明の針が盾に当たるとぱしゃんと音をたてて液体になる。


 どうやら針の正体は水だったようだ。


 となるとやはり水浸しになったところに別の魔術で追い打ちでもするつもりなのだろうか?銀級冒険者は侮れないな…



「(なんでこの人全身に毒を浴びてるのに平気なのよ!?!?)」



//////////////////////////////////////////



「はぁ…はぁ…もう降参でいいわ…魔力がもうほとんど無いわ…」



「良い魔術でした」



 俺はアマシアに近寄り握手を求める。



「い、いや…ごめんなさいね。私には握手する権利は無いわ…」



 握手は断られてしまった…残念だ。



「そうですか…残念です」



【【勝者!!8番!リコォぉぉぉぉぉぉおお!!!】】



 特に難なく勝利出来た、だがこれは当たり前だろう。



「あー…これあげるわ。体にイイわ…毒とかじゃないから安心して飲んで頂戴」



「…?ありがとうございます」



 アマシアは俺に青い液体の入った小瓶を投げ渡すとそのまま怠そうに退場してしまった。


 俺もそれに続いて退場する。



////////////////////////////////////



「はぁ…」



「流石お兄さん…いいや騎士様だねー!ついに戦う時がくるねー」



 俺の正面で男立ちしているネイラさんに話しかけられる。


 心なしかネイラさんは浮ついているように見える。



【【最終試合がまもなく始まります。出場者は準備をして下さい】】




「きた…じゃ、ネイラは先に行ってるね…!」



 ネイラさんはこちらを向いて獰猛な笑みを浮かべると鎧のこすれる音をさせながら走り去った。



「ふぅ…俺も行くか」



 先程から若干体調が悪い…風邪でもひいたのだろうか?…結構水を浴びてしまったしな…


 そういえば先程体にイイらしい小瓶を貰っていた、これを飲んでから試合に行くことにしよう…まぁ中身が毒だったとしてもどうせこの試合はわざと負けるのだから関係あるまい。



「…変な味だな」



 兜の口元を開き小瓶の中身を飲み干すと微妙にスーッとする。


 心なしか体調も良くなった気がする、あの微妙な身体の怠さが解消された。


 俺は今度アマシアに合ったらお礼をする事をこころに誓った。



「さぁ…行くか」



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