109.ケッ!これは貴重な体験になりそうだぜ…
「お!お兄さんちゃんと来てくれたんだー」
俺の対戦時間まで時間があった為、参戦者用の待合室でトレーニングをしながら暇をつぶしていると聞き覚えのある声が聞こえた。
「その声はネイラさんですか」
「そうだよーこの声はネイラの声だよー」
ネイラさんは俺の目の前までやってくると握手を求めてくる。
「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね」
ネイラさんと握手する。
…その手は華奢で本当にどこにでもいる少女の手のように感じられた。
「トーナメント表みた?ネイラたちが戦えるとしたら決勝戦だよ」
まぁ…必然的にそうなるだろう。
俺もどこぞの無名に負ける気はない。
「私は戦闘狂ではないですが、楽しみですよ」
事実俺は戦闘をあまり好まない、そうしたほうが良さそうなときは戦うが…
「ドラゴンを倒すほどの実力、いったいどれほどなのか…」
「まー楽しみにしといてよ!ネイラも楽しみにしておくからさー」
【第4回戦目がまもなく始まります。出場者は準備をして下さい】
もう四回戦…俺の番が来たのか。
「ではまた後で」
「ばいばーい」
俺は待合室を後にした。
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【【7番!ロタスゥゥ!!毎回剣を折るからなのか今回は武器を大量にひきずっての入場だァァぁァぁ!!!!】】
コロシアムの中心に大きな袋を引きずりながら入場する男が見える、俺は彼と戦うのだろう。
【【8番!リコォォ!!みんな大好きまさかの騎士様の参戦だァァぁ!!今回もロタスは剣を折られてしまいそうだぁぁぁぁ!!!!?】】
コロシアムに入場する。
「…凄まじい熱気だな」
俺が入場するとコロシアムの人々はより一層騒ぎを大きくする。
「一戦目で騎士様かよ!クソッついてねぇなぁ!!」
ロタスは袋から剣を2本取り出した、まさかその袋の中身は全て剣なのか…?
「まぁそう残念がらないでくれ、折角の機会だし楽しもうじゃないか」
俺は騎士団式の敬礼をして抜剣し、盾を出し構える。
「ケッ!これは貴重な体験になりそうだぜ…」
俺とロタスは正面から向き合いお互いに沈黙する。
そして…
【【試合開始!!】】
試合が始まる。
「ホアァァ!!」
ロタスは右手に持った剣を俺に投擲するのとほとんど同時にもう一本剣を袋から取り出してこちらへ突撃してくる。
ロタスが投擲した剣は山なりに飛来しており俺に当たるころにはロタスが攻撃してくるだろう。
飛来する剣とロタスの双剣…3方向からの同時攻撃というわけか。
恐らく避けたところでさらに何かしらの追撃を考えているのだろう。
だが…
「相手が悪いな」
「!?」
俺は避けずに全て受ける。
【【さ、流石騎士だァァぁァァ!!ロタスのトリプルアタックを全て受けても微動だにしていないィッ!!?】】
ロタスの双剣は両方"折れた"
相手が騎士でなければ良い手だっただろうが…
「げきょ」
俺は盾でロタスを殴る。
そこそこ力を入れて盾を打ち込んだ為か不気味な音を出してロタスは壁際まで吹き飛んだ。
…そしてロタスは動かなくなった。
「し…死んではいないはず…」
「…こ、こうさ…んする…」
あ、生きていたようだ。
【【しょ、勝者!8番!!リコォォォォ!!!!】】
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「はぁ…」
「お疲れーめっさはやかったねー」
待合室でロタスに後遺症とか無いか心配しているとネイラさんに話しかけられた。
「はい…少しやり過ぎたかもしれませんね」
【第5回戦目がまもなく始まります。出場者は準備をして下さい】
またもやアナウンスが聞こえる。
「思ったよりトントン拍子で進行するんですね」
「まぁね、トロトロやってるより一気にズバァァンッ!ってやった方がお客も楽しいんじゃないー?」
確かに闘技大会を観戦している人々には観光客も多いだろうから…闘技大会が終わればまた別の観光に行けるようにする為だろう。
その方が稼げそうだ。
「んじゃネイラ5回戦行ってくるねー!また後でー」
「また後で」
ネイラさんは小走りで入場口へ行ってしまった。
さて…待ち時間で軽く身体を動かしておこう。
大戦後から比べてだいぶ身体も調子を取り戻してきた。
まだ大戦から数日しか経っていないがこの傷の治りの速さは相変わらず便利だと思う。
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【【勝者!2番!!ネイラアアァァァァぁ!!!!やはりつよおおおおい!!!】】
…待合室まで増幅された大声が聞こえる、どうやらネイラさんは勝利したらしい。
「流石金級冒険者…だな」
ふと…本気で戦って勝てるかを考えてしまう。
もし俺に騎士という立場が無くなった時には本気で手合わせ願いたいところだ。
「……」
…ガチャガチャと鎧がこすれる音近づいてくる。
「はいただいまー普通に勝ってきたー」
ネイラさんかと思っていたらやはりネイラさんだった。
その微妙にサイズのあっていない鎧は大丈夫なのだろうか?
「お疲れ様です」
【第6回戦目がまもなく始まります。出場者は準備をして下さい】
「あ、お兄さんの番だねー」
「そのようですね、では勝ってきます」
待合室を後にして入場口へ向かう。
「はぁ…勝敗より姫様が心配だ…」