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僕はもう、僕の魂で君を呼ぶことしかできない。

作者: 瞳

君が僕の隣から居なくなってから、4ヶ月が経った。


家族や友達には悪いけど、全てを失った今、僕が求めているのは君だけだ。君さえ居てくれればよかったのに。


僕は今まで、別れたりよりを戻したりを繰り返す友達のことをバカだと思っていた。そんな関係で、本当に大切にできてるって言えるのかよって。

でも君を失って、初めて知ったんだ。彼らは別れる度に相手の大切さに気付いてた。その度にお互いの存在の大きさを確認してたんだ。大切なものが見えなくなってしまう度に手放して、また気付き取り戻す。そんな彼らの方が人間らしくて、人として真っ直ぐな生き方をしているのかもしれないと思った。二度と会えなくなるまで君の尊さに気付けなかった、僕の方がよっぽど愚かだ。僕はずっと君の想いに甘えていただけだった。



僕はもう、僕の魂で君を呼ぶことしかできない。



僕が居なくなった部屋で、君は毎日どんな朝を迎えているんだろう。君はしっかり者だから、僕が居なくても今まで通り早い時間に起きて、洗濯を干して朝食を食べて仕事へ出掛けるんだろう。

 もしかしたらもう、僕じゃない誰かと一緒に居るのかもしれないね。



 僕はもう、僕の魂で君を呼ぶことしかできない。





******************************





 あなたが私の隣から居なくなって、4ヶ月が経った。


 カーテンの隙間から差し込む日の光で目が覚める。朝、というか昼かもしれない。太陽はもう高くまで上がっているらしい。

 一人ぼっちの布団。あなたが隣に居ないことがまだ信じられない。


 私は棚から青いファイルを取り出し、ペラペラとページをめくる。最後の方に挟んだ新聞記事。


ーー20代男性、トラックにはねられ死亡。ーー


 あぁ。本当にあなたはもう居ないんだ。涙がぼろぼろと落ちる。これが私の毎朝の日課。4ヶ月経っても、何度朝が来ても、あなたがもうどこにも居ないことが信じられない。

 洗面所には洗濯物が山になって溜まっている。部屋には空になったお酒の瓶や缶が転がっている。あなたが死んでから、仕事には行かなくなった。会社からの連絡にも応えられずにいたら、もう電話もメールも来なくなった。


 私はあなたが居ないと、本当に何もできないんだ。


 こんなことになるなら、あなたのこともっと大切にしておけばよかった。もっとあなたに大好きだよって伝えればよかった。





******************************





 人間は死んだら星になって空から大切な人を見守ってる、なんていうのは嘘だ。僕にはもう目がないから君を見つけることができない。耳もないから君の声も聞こえない。君と繋いだ手も、君のもとへ駆け寄るための足も、君の名前を呼ぶための口もない。

 僕はもう真っ白だ。自分がどこに居るのかも分からない。



 僕はもう、僕の魂で君を呼ぶことしかできない。



 ねぇ、どこにいるの。誰といるの。ごめんね、もっと早く君の大切さに気付けなくて。ごめんね、甘えてばかりで。


 ごめんね、ちゃんと伝えられなくて。




 ねぇ。ねぇ。


 君が大好きだよ。


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