第一話:早朝の襲撃①
早朝だというのに西地区の街は、驚きと悲鳴で喧々たるものだった。
「おい、いったいなんの騒ぎだ。何があった」
俺は、通りの隅で肩を抱き合って怯えている老夫婦に話しかけた。
「お、親分さん! 助けてくだせぇ。」
老夫婦は、それだけ言うと涙を流した。この町に来て二年。俺のことを親分と言う奴は多い。何しろ悪華組を壊滅させ、この町を裏で牛耳っていると思われているのだから。俺は牛耳っているつもりはない。あくまでも生業として不動産や酒場に投資をしているだけだ。
老夫婦の隣に立っている男が俺に軽く会釈をする。
こいつは自警団の団長は、ルッカスという男だったはず。ミオンが殺された時に取り調べ室にもいたやつだ。
「いま戻ったところだ。こんな朝からこの騒ぎはなんだ」
「ええと、悪魔爪組のやつらが、夜中に街に火をつけてまわったんです…… 。何人か死人が出たのですが、その中に自警団の団長も奴らにやられたんです」
団長ともなると戦闘能力も高い。そんな団長を倒したやつが悪魔爪組にいたことに俺は驚いた。
所詮、東地区で徒党を組み、ヒモやチンピラから金を上納させたり、娼婦からみかじめ料を集めているだけの集団だと俺は高を括っていたが、団長殺しまでするとは。
なぜ奴らは突然西地区側を襲撃したのか身に覚えがない。
小さな小競り合いをすることはあったが、チンピラ同士のケンカ程度で火を放ったり人を殺したりするようなことは、俺がこの街に来てから一度もなかった。
何か知っているかと男に聞いてみたが、首を振り知らないと言った。
俺は、怯えている老夫婦に俺がなんとかしてやる、大丈夫だと声をかけてやると、少し落ち着いたのか、黙って頷くと逃げるように家の中に戻っていった。
ルッカスという男から聞いた話だけでは、何もわからなかった。
被害の状況も見ておきたい。とりあえず現場に行ってみることにする。
何があったのかこの目で確かめたい。
ナミはきっと今ごろ情報収集しているはずだ。
この喧騒の中、まさか寝ているということはないはずだが……。
ナミは寝起きが悪く、起きてくるまでに時間がかかる。
女の朝はすることが多いんだから、遅刻して何が悪いんだと開き直るのを今まで何度となく聞いてきた。
だが、街の様子ではすでに行動をとっている可能性は高い。
「あのー、セイヤさん?」
声をかけて来たのは、武器職人のサリーの仕事を手伝っているララだった。
資材の買い出しをしていたのか、エプロンをつけていた。
「お前たちは大丈夫だったのか?」
「はい、私たちに被害はないので大丈夫です。火をつけられたのは、少し離れた場所でしたから。この辺りは、大変なことに……」
不安げな表情をして、逃げ惑う人たちや消火のために水を持って走る自警団たちの姿を見て言った。
「時間があるか? ちょっとその場所まで案内してくれ」
俺は、ララに被害が大きかった場所へ案内させることにした。
買い出しは既に終わっているようだったので、その前にサリーの店に寄ることにした。
今いる場所から、サリーの店はそれほど離れていない。
サリーの武器屋は、防具も扱っているが主に武器作りに力を入れていた。
看板には両手剣と片手剣をクロスさせた模様の下にサリーの名がつけられていた。
開業してひと月ほどだが、冒険者からの評判も良くなってきている。
丁寧な仕事と、女性らしい飾り彫りされていて可愛いと評判となり、女冒険者からの注文が多いそうだ。
店に入ると、サリーが店のカウンターの裏から顔を出す。
ララと俺が一緒に入ってきたため、うれしさを隠しもせず満面の笑みで迎えてくれた。
ドワーフ族だが人間の女性に近い。ただ全体的に筋肉質で髪は緑色をしている。
短めの髪型だが、とても似合っている。しかも、女性の象徴である胸の大きさは申し分ない。
「わー、セイヤだ! こんな朝早くからどうしてここへ?」
サリーは、駆け寄ってくると俺の腕にしがみついて、胸を押し付けてきた。
弾力のある瑞々しくハリのある胸だ。エプロンの上からでもはっきりと感触がわかる。
「どうやら他の奴らに火をつけられたらしくてな、これから調べに行くところだ。」
それとなく、サリーの体を俺の腕から引き剥がすと、ララを少しばかり借りて行く言った。
「それはいいけど……どこに行くの、まさか二人で!」
サリーは、俺とララの顔を交互に見て、何やらいやらしい想像をしているのかニヤついている。
「ちょっと、サリーさん、変な想像はやめてください! 今朝のことでセイヤさんに案内を頼まれたんです」
ララは耳まで真っ赤にして否定している。
サリーは、赤面してうろたえているララを見て、からかい甲斐があると思ったのかムキになって否定するところが怪しいと、ララをからかう。
仲がいいのは良いのだが、のんびりじゃれあっている場合ではない。
「俺はちょうど出かけていたから、今朝の騒ぎのことはあまり知らないんだ。だからララに案内してくれと頼んだだけだ」
「そうですよ、サリーさん勘違いしないでくださいよー。そりゃ、セイヤさんと二人でお出かけなんて初めてだから、期待してるのもあるけど……」
ララはモジモジと体をくねらせて恥ずかしがっている。
「ちょっ、ララってば、マジでセイヤさんとエッチなことを想像してたりしてる?」
サリーは、ララの胸をツンツンと突っついてからかう。
ララも、ああん、と体をよじって反応する。どこまでこの漫才が続くのか。
「そのへんでやめておけ。時間が惜しい。女同士のおしゃべりは後でやってくれ」
「ゴメンね。よし、あたいも一緒に行くよ。セイヤさん、いいよね?」
両手を合わせ、上目遣いでサリーが言う。
いつからこんな甘え上手になったのだと感心した。
一人より二人で話を聞けば何か見えてくるかもしれないと、俺は了承した。
「それでかまわないが、遊びに行くわけじゃないんだ」
念のために、釘を刺しておく。
「わかってるって。それに朝はお客さんも来ないから少しくらい閉めてても大丈夫だよ」
サリーは大きな胸に拳をドンと打ち付け、ふんぞり返る。
頼もしさはないが、何かの役に立つだろう。
火を放たれた場所と亡くなった人のところに行って状況を把握しておきたい。
さっそく放火された場所まで二人に案内してもらった。
<登場人物>
セイヤ・・・・西地区の青年実業家。西地区の住民に親分と呼ばれている。
ララ・・・・・サリーの武器屋で住込みで手伝いをしている。銀髪の少女。
サリー・・・・武器職人の女。筋肉質だが巨乳。セイヤになついている
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