表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

第四章二節

深夜ということもあり、王城内は静寂に包まれ、物音一つしていない。

(・・・静かだな。さて)

ディーンは周りの様子を窺いつつ、道を進んで行く。

少し進むと三方向の道へと繋がる広間に出る。

真っ直ぐ進めば国王がいる【謁見の間】並びに寝室に繋がる。

常に近衛騎士団が守護しており、安全は保証されている。

とはいえ、今のところ用はない。

左に進めば聖騎士団の詰所があるが。

(寄るわけにはいかないな・・・)

少し悲しそうな表情をしたが、すぐに切り替え、右を向いた。

右の道に討つべき対象である、ガルバルドがいるのである。

だが、簡単にことは成さないだろう。

ここには神官騎士団の詰所があり、その先にガルバルドの部屋は存在する。

つまり、ガルバルドのもとに辿り着くには、配下の神官騎士団を突破しなければならないのだ。

(話し合いでどうにかなるわけないな。武力行使、か)

穏便に行きたいところだが、まあ無理だろう。

こちらとしてはガルバルドだけが狙いだが、向こうはそのガルバルドを守ってくる。傷付けたくはないが難しいだろう。

(いざという時は覚悟しよう)

そう決心し、ディーンは道を進んで行った。



【神官騎士団詰所前】

ディーンは神官騎士団の詰所近くまでやってくると、物陰に身を隠し、詰所の入口の様子を窺った。

見張りが二人立っており、中からも人の気配がしている。

おそらく十数名はいるだろう。

(傷付けないとか、甘いことは言ってられないな)

ディーンが詰所の入口へと進んで行く。

見張りがディーンに気づき、槍をディーンへと向ける。

「誰だ、ここは神官騎士団の詰所。何の用か?」

「夜更けにすまない、我が名はディーン。ガルバルド司祭長に火急の報せがあり、こちらを訪れた。司祭長に取り次ぎ出来ないだろうか?」

そう言ったディーンに、見張りが槍を構える。

「そんな見た目の怪しい奴を通すわけがないだろうが。さっさと立ち去れ、さもなくば痛い目にあってもらうことになる」

「どうしても無理か?」

「しつこいぞ!無理なものは無理だ!たく、何でこんな奴を城内に通したんだ。見張りの聖騎士は何をしてたんだ」

悪態をつく神官騎士をしり目に、ディーンは鞘へと手を掛ける。

もう一人の見張りがそれに気づき、声を出す。

「やめておけ、中には18人の神官騎士がいるんだ、いくら腕が立とうと到底勝ち目は無いぞ。潔く引き返せ」

そう言って槍を下げた見張りをチラリと見ると、ディーンは後ろに少し下がった。

「そうだ、それでいい。そのまま帰・・・」

そう言いかけた見張りへとディーンが突っ込んでいく。

剣を抜き放ち、槍の先を切り飛ばす。

そのまま武器を失った見張りを、返す剣でなぎ払った。

鎧ごと体が上下に別れる。

勢いそのままに、血に濡れた剣で、もう一人の神官騎士の首を切り払った。

ヒュッ、と音をたて、首が放物線を描きながら飛んでいく。

一瞬にして詰所入口は血に染まることとなった。

「どうした!?」「なんだなんだ?」「なんの音だ?」

中から神官騎士達が騒ぎを聞きつけ、次々と出てくる。

血だまりが出来たその光景を見て、神官騎士達がことばを失う中、ディーンが彼らに警告をする。

「死にたくないならそこを通してもらいたい。用があるのは奥にいるガルバルドだけだからな」

そう言ったディーンに神官騎士達は一瞬怯んだが、直ぐに武器を構え、向き合った。

「仲間を切っておいてふざけるな!生かして帰すな!」

神官騎士達はディーンへと向かって行く。

一人はメイスで殴りかかり、一人は剣で斬りかかった。

ディーンはそれをかわそうとせず、向かってくる神官騎士二人を、腰を落として剣で横なぎに切り払った。

先ほどの見張りと同じように両断され、彼らは物言わぬ骸へと成り果てた。

「こ、こいつ、か、囲め!包囲して仕留めろ!」

身なりの良い神官騎士が叫ぶと、剣を構えた四人の神官騎士がディーンを取り囲んだ。

「殺せ!!」のことばと共に、一斉にディーンへと斬りかかる。

(逃げ場がないなら!)

ディーンは前方の神官騎士に突っ込んで行く。

神官騎士もディーンと同じく全身鎧であり、動きが鈍く遅い。

だが、ディーンの全身鎧はマジックアーマーであり、その動きは軽く速い。

その差は圧倒的であった。

瞬時に包囲を突破し、目の前の神官騎士を、構えられた剣ごと切り捨てた。

そして振り向くと同時に、投げナイフを投擲する。

ナイフは吸い込まれるように、後ろにいた神官騎士の喉元へと突き刺さる。

血を吹きながら倒れるそれを横目に、ディーンが残りの神官騎士を煽っていく。

「どうした?天下の神官騎士とはこの程度か?弱すぎるな!」

「き、きさま、馬鹿にしやがって!ええい、10人で奴にかかれ!残りは詠唱だ、覚悟しろ!!」

身なりの良い神官騎士が命令を下すと、一部を残して神官騎士達がこちらに向かってくる。

(時間稼ぎをして、魔術で仕留める気か)

「詠唱完了まで持つと思っているのか?甘いなあ!」

そう言って向かってくる神官騎士達を一刀のもと、斬り捨てていく。

一人目は横なぎ、二人目は袈裟斬り、三人目は縦に両断された。

続く四人目も首を飛ばされ、骸の仲間入りとなった。

20秒もしないうちに、神官騎士10人は皆等しく、骸へと成り果てた。

休むことなく、詠唱中の神官騎士へと向かって行く。

向かってくるディーンに、彼らは恐怖の表情を浮かべている。

当然だろう、詠唱中は身動き出来ず、隙だらけであり、接近されれること、それ即ち死なのである。

神官騎士が使用する魔術は、聖魔術と呼ばれる魔術であり、30秒程度の詠唱時間を要するが、軒並み威力が高いため、直撃すればマジックアーマーを身に付けているディーンとはいえ、ただでは済まないだろう。

とはいえ、詠唱が終わるまで待つほど馬鹿ではない。

最初の神官騎士を斬り捨て、次の神官騎士を両断すると、残りの投げナイフを身なりの良い神官騎士に投擲した。

「リーファの名のもとに、裁きをくださん!」

寸前のところで詠唱が終わったようだ。そして迫りくるナイフを・・・

近くにいた神官騎士を引き寄せ、盾にした。

ナイフは盾になった神官騎士に突き刺さる。

「げぶ・・・ひどいぜ、副団・・・」

行き絶えた神官騎士のことばにディーンは気づく。

(ああ、よくみたら神官騎士団の副団長か。いつも嫌みばかり言っていたな。あれで聖職者だからな、世も末だとよく思ったものだ)

そんなディーンに、副団長がメイスを向けて叫ぶ。

「神の裁きを受けるがいい!ホーリーボルト!!」

ディーンに向かって、白い光の玉が飛んでいく。

【ホーリーボルト】聖魔術の中でも威力の高い魔術であり、魔力だけでなく、聖神への信仰心も関わってくるといわれている。

光の玉が飛んで行き、対象を神の光で焼き尽くす魔術である。

ホーリーボルトはディーンに直撃した。

白い光に包まれ、白く燃え上がっている。

「どうだ!これならば骨すら残るまい、黒い鎧の異端者が思い知ったか!」

勝った、副団長はそう思った。だが、

「・・・この程度か?」

ディーンの声が部屋に響きわたる。

「ば、ばかな、なぜ生きている?直撃したはずだ!」

驚く副団長をしり目に、纏っていたマントを靡かせる。

まとわりついていた白い炎が掻き消され、四散霧散した。

「聖神への信仰心が低いからかもな?神官が聞いてあきれるよな、ははは」煽りながら副団長に近づいていく。

「ぬうう、馬鹿にしやがって!」

「それしか言えないのか?悪いが馬鹿に付き合っている暇はない。じゃあな」

「な・・・」

何か言おうとしたのだろうが、ことばを紡ぐことは出来なかった。

紡ごうとした時には既に首と体はお別れをしていたからだ。

「20人か、まあこんな奴等殺したところで問題ないな」

そう言ったディーンの目に妖しい光が宿っていた。

そして血を吸った魔剣も同じように妖しく煌めくのであった。

「さあ、ガルバルドの部屋は直ぐそこだ。奴を斬れば終わる、全てがな」

ディーンは歩いていく、ガルバルドのもとへ。

そして破滅へと踏み出したのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ