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ヒューマンドラマ

指定席

作者: 山目 広介

 年度が変わって数か月。

 人の動きもそろそろ安定してきた。

 電車での通勤、通学。

 それはもはや指定席の様相を呈していた。


 私はいつも早めの電車に乗っている。

 一本遅らしてもそれは急行で普段よりも早く到着するから、余裕がある。

 私がいつも乗るのは普通、もしくは鈍行とも呼ばれているものだ。

 ただし、途中の駅で急行に変わる。

 だから急行が止まる駅なのに鈍行だから座ることも出来て楽だからこそ、この時間の電車に乗っている。

 一本遅れのはずっと立っていなくちゃいけなくて嫌なんだよね。

 学生時代、満員電車で吐き気がしてトイレに駆け込むとか辛かったから。


 そして今日も電車に乗り込む。

 だが今日はいつも座っている指定席に先客がいた。

 スーツ姿のおじさんだ。

 普段は向かいに座っているのに、何故?

 おじさんと視線が合う。

 視線を向かいに逸らされる。

 私もその視線を辿ると、旅行者?

 キャリーバッグに帽子を被った若者がいた。

 なるほど。だからか。先に指定席を奪われたから、こっちにいたのか。


 ドアを挟んだ座席にも人がもういるため、その通路の向かいの空いた場所へ向かう。

 いつも座っている高校生さん、ごめん。

 と心の中で謝りつつ、そこへと腰を掛ける。


 電車が出発して次の駅に止まる。

 乗客が乗り降り、って鈍行しか止まらない朝のホームへ降りる人は、いなかった。

 つまりは乗り込む人だけ。

 そしていつもこの席に座っている高校生さんが私の前で立ち止まり、周りを見渡して、空いてる座席へ移動する。

 玉つきのようなことが繰り広げられる。連鎖してる。「あいすすとーむ」ぐらいしてる?

 その次の駅でも。あっ、あれで「ばよえ~ん」だ。

 座席が埋まってるから、この立っている誰かがこの椅子取りゲームから弾けられたんだろう。


 大きめの駅に着く。

 ここから急行になるが、停車時間が長い。

 スーツ姿の女性が入ってくる。

 いつも私の前に立っている人だ。

 あ、なんか後退ってる。驚いたように周りを見渡している。

 今日は人の配置が違うからね。


 私と視線が合う。

 そして向かいにやってきて、私の前で立ち止まる。

 ちょっと目礼するので、ぺこっと頭だけで礼をする。


 この人私に気があるのかな、とちょっと自意識過剰に思ってしまう。


 ◇◆◇


 その人を見かけたのは偶然だった。

 背が高く、短髪で眼鏡で。私が乗り込む次の駅で降りるところだった。


 その次の日。

 停車中の電車に乗り込むと、いつも通り座席は埋まっていた。

 朝から満員電車に立ちっぱなしで疲れてしまう。

 空いた席は無いんだろうか……


 しかし、その中で昨日の人を発見!

 もしかしてとその人の前に陣取る。


 そして電車が出発し、次の駅へ。


 前の男性が立ち上がりホームへと降りていく。

 ()かさず、席に座り込む。


 ついに見つけた私の指定席。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 素朴な雰囲気のタイトル、本文が馴染みやすいですね! [気になる点] ないです! [一言] こんにちは、私の小説にも感想ありがとうございます!これからも頑張ってください!
[良い点] これツボにはまりました 電車ものもともと嫌いじゃないのですけど ってこれまじあるあるでちょっっと笑ってしまった めっさわかる。分かります。 自意識過剰私もなったことある。 [気になる点]…
2018/07/03 01:29 退会済み
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