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プロローグ
唸り声が、少しづつ大きくなってきた。アンモニアのようなきついにおいが微かに、遠くのほうから吹き付けてくる。ランタンを眼前に掲げ、俺は身構えながら暗い通路を進んでいく。こんなにもひんやりした場所なのに、さっきから額には汗が噴き出していた。だが、それをぬぐう余裕もない。ずっと開きっぱなしの口の中がからからに乾いている。俺の目は、奥にいるに違いない「それ」の姿を捉えようと、唸り声のする目の前の闇の中を懸命に凝視していた。
ガシャン!と突然鉄を打ったような音がして、全身がビクッと脈打つ。心臓が思いきり跳ね、破裂しそうに激しく動き出す。恐怖が四方から俺の体に張り付いてくる。息苦しい。酸素が上手く吸えない。だが、ここで引き返すわけにはいかない。どのみちこの先に進むしか、生きる道は残されていないのだから。
一歩、また一歩と、俺は闇の中で待つ死へと足を進めていった。