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東方剣録伝 〜幻想郷最強剣士の物語〜   作者: 黒井黒
第一章 何だかんだで怒涛の日々
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七話 二人の仕事

和也「また長い間書かなかったな」

クロ「………………」

和也「なんか言ったらどうだ?」

クロ「………………ねる」




雀がうるさく囀る中、私はいつも通りの時間に目覚めた。もはや七時に起きる事は日常化してしまっているが、今日はいつもより少し明るかった。襖の奥から差す陽の光が暖かく、このまま二度寝しようか迷っていた時、今日はいつも通りとは行かない事を思い出した。


それは昨日の男。和也といういきなり現れたそいつによって、私は今日からいつもとは違う生活を余儀なくされる。でも、それもすぐに終わるという自信が私にはあった。


自分の仕事は博麗の巫女で妖怪退治をしている。その内、人里で私の悪い噂を聞いた和也は私を恐れて何処かへ去っていくに違いない。自分から去ってくれるならこっちとしても都合がいい。博麗神社は巫女一人が住まう場所。博麗の巫女の掟でもそれは決まっている。私はそんなルールくだらないと思っているが……。とりあえず、紫が連れてきた外の世界の人を無理追い出すってのも気が引ける。まぁ、アイツが飽きるまでそれまではここで生活をさせてあげよう。


そして、考えがまとまった私はふらふらと立ち上がり、布団をいつもの押入れに畳んで入れた。眠たくてしょうがないが、襖を雑に開ける。今日いつも以上の天気がいい。そして、太陽が博麗神社を差しているが今の時期暑くてしょうがない。だから、朝は冷たいものにしようと台所でざると麺を置いた。朝ごはんはそうめん、これならすぐにお腹に溜まって消化もいいはずだろうとすぐに準備をした。作り方は簡単だからすぐに出来る。


まずお湯を沸かしその中に硬い麺を入れる。そして、その間に二人分のつゆを作る。つゆは醤油に水を入れて薄めたものだけどちょっと甘くしたかったので砂糖を少しだけ入れた。つゆを作っている内に麺がほぐれてきたのでざるに移し替えして麺を湯切った。二人分の皿を用意して、麺をそこに入れた。


「これでいいっと、後はあいつを起こせばいいかな。でも、どういうつもりかしら?居候してるくせに私より起きるのが遅いってどうゆう事よ!」


麗奈が文句を言いながら和也を泊まらせている部屋に来ると襖は開いていて、布団が畳まれていた。


「あら?もう出ていったのかしら?昨日の今日でそれはないか。じゃあ何処に……」


麗奈は昨日の事を思い出した。確か、昨日和也は神社の桜に見入っていた。ということはまたあの桜を見に行ったのかもしれない。そう思い、玄関を開け外を見た。

そこには桜の横で剣を振っている和也がいた。


「あんた、何してんのよ」


私がそう言うと、和也は気づいたのか剣を振るのをやめた。


「よぉ麗奈、昨日はぐっすり眠れたかな?」


「何なのよ、その上から目線は。まぁいいわ、それより質問に答えてくれる?なにしてんの」


「見てわからないのか?剣の稽古だよ」


「剣の稽古ねぇ。それで意味あるのかしら」


「意味なんて無いけど、なんだろう?日課みたいなやつかな」


まず、記憶喪失の彼に日課があった事に驚いたがそれ以外に驚いた点がある。


それは……剣の太刀筋。


表情には出さないが、私は少しこいつを見直す必要があるかもしれない。剣の太刀筋は心の揺れで決まる。そして、こいつには揺れが全くない。記憶が無いはずの彼の剣の振り方が妙に様になっている。


「でも何だろう?この違和感……」


和也の剣は確かにすごいが、素人感が否めない。形があっても中身がスッカラカンだ。まぁ、だけど今はそんな事どうでもいい。お腹も空いてきたし、早く和也を呼んで朝ごはんを食べなきゃ。


「朝ごはん出来てるわよ!」


そう言うとダッシュでこっちに来た。けれど和也の体や顔を見ると汗をすごくかいている。


「あんた汗だくじゃない」


「だって一時間もやったら汗もかくだろ」


「あんた一時間もやってたの?それなら先にお風呂に入って汗を流してきたら?」


そうだなと言ってそのまま玄関を通って風呂場に向かう和也。そして、私はそれをずっと見ていたがさっき和也が立っていた場所に剣が二本立てられていた。和也が忘れていったものだろう。でも和也は何故か真剣で剣を振っていたらしい。博麗神社にも木刀があると言うのに。


あまり人の武器に興味を示さない私だけど。でも、私はその剣がどうも気になって手に取ってみた。


「アイツのかしら?どこかで見たことあるような無いような」


一本目は刀。形自体は何も変わった事がないものだったが、だけどその刀は少し変わった事が一つだけある。


「この刀、妖力を纏っているわね。妖怪がこれで切られたらヒィヒィ言いそうだわ」


そう、この刀は妖怪を倒すのに特化していた。妖怪だけでは無く普通に人間を切れるんだけど、余程の匠が作ったものだろう、刀身がすごくしっかりしている。いくら打ち合ってもこれが先に折れることはないだろう。


二本目は日本刀とは違い中世の剣だろうか?刀身の左右に刃がついている。これは特に変わったことは無かった。


そして、私は剣を鞘に納めて神社の居間に戻り和也の帰りを待った。


「遅いわね。先に食べちゃおうかしら」


そう思っていると、襖が開き和也が入ってきた。


「ごめん、ごめんちょっと遅くなったな」

「大丈夫よ、そんな気にしてないから」


和也は私が彼用に貸した紅白の服を着ていたが、何時だったか香霖が私が女にも関わらずぶかぶかの男用の巫女服を作ってくれたことがあった。巫女なのに男用とはおかしいと思ったが珍しいと思って持ち帰った。それが今役に立った。


「それじゃあ食べるか」


私達は手を合わせた。


「「いただきます」」


量は少ないがそうめんを食べ始める二人。最初は無言で食べていたがその雰囲気に耐えきれなくなったのか和也が話し始めた。


「そう言えば、俺が和菓子奢るって話したけど……」


「あぁ、そんな約束したわね。なに?まさか、約束を破るわけじゃないでしょうね」


「いやそういう訳じゃないんだけど……お金が」


「まさか、無いの?」


呆れた。自分から奢ってくれると言ったくせに、まさかの文無しとは。これが呆れないわけがない。


「ということでどっか働ける場所ないかな?」


「働ける場所ねぇー。人里で聞いてみたら?」


「そうするかな。でも妖怪退治は……」


「ダメよ!」


さっきまで穏やかに話していた麗奈は突然声を荒げて言いつけた。その顔には怒りが浮かんでいる。


「何でだよ。そっちの方が麗奈の役にも立つだろ」


「どうしてもダメ。辞めてちょうだい。大体あんたが来ても足でまといなだけだし」


「ケチだな。まったく……分かったよ。ほかの仕事で稼ぐよ」


「そうして」


そう言って悪態をついてお皿を台所に片付ける和也。

私もその後に続いて片付けに行くが、和也も片付けているので小さい台所で人間二人は流石に狭い。だが、先程麗奈がかなり怒鳴ったので何かと気まずい。

そして、和也が気を遣ったのか麗奈の持ってきた皿を取った。


「俺がやっとくから麗奈はぐうたらしていていいぞ」


「ぐうたらって何よ!大体こんな簡単な事ぐらい一人で出来るわよ」


「じゃあ、このまま二人くっついたままやってたいのか?それならいいけど。それに俺居候だし、これぐらいの家事ぐらいやるのが礼儀だろ?」


和也がやると言って聞かないので、仕方ないから私はお皿を和也に渡して、博麗神社の自室に戻った。まだ寝巻きのままだったので、服をすべて脱ぎ、サラシを胸に巻き、下着をはいて、その上に巫女服を着た。巫女服のデザインは胴の部分は赤が一色、スカートの長さはくるぶしぐらいまで伸びている。腕には巫女服と別途になっている白い袖を付ける。


「さてと、仕事をしますか」


例え、和也が居たとしても博麗の巫女としての依頼は完璧にこなす。そうしなければ幻想郷が安定しないから。


「それで今度の依頼は人里付近で出た妖怪の調査か。なんだ、簡単ね」


そう言って麗奈はお札を数枚、一本の刀を取り出す。


「お母さん、行ってきます」


刀を元の場所に戻して、和也がいる居間へと向かった。そこには丁度洗い物が終わった和也が居た。


「和也〜?少し仕事してくるから、あんたも人里で仕事探してきなさい。早く稼いで罪滅ぼししなさい。それと勝手に私の部屋に入らないでね。入ったら……分かるわよね」


分かった、と頷く和也。私はそれを確認すると、玄関を出て人里へ飛んだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


麗奈が何処かへ行ってしまった後、和也は早速歩いて人里へ向かった。


時間帯的に朝早かったが、街は昨日と同じくらいの賑わいを見せていた。


「昨日、妖怪の襲撃があったとは思えないな。さてと、慧音さんがいる場所は確か寺子屋っていう場所だったな」


寺子屋がある場所は昨日戦闘があった場所から少し近い位置にある。あのまま妖怪が進んでいたら寺子屋も壊されていたと言って感謝されたものだが。

そう思っているといつの間にか、寺子屋と書いてる看板の前に着いた。


「ここか、何だがはしゃいでる声が聞こえるな。授業してんのかな?」


寺子屋の玄関を潜ると、もっと大きく子供の声が聞こえてくる。そして、子供が鬼ごっこでもしているのか、廊下を駆け回る。その子達を避けながら慧音がいるであろう部屋に入る。


「すいません。慧音さんはいらっしゃいますか?」


そう声を掛けると、一番奥の椅子から動く音がして足音が近づいてくる。そして、和也の目の前まで来ると、笑顔を浮かべた。


「誰かと思えば、和也君じゃないか。一体どうしたんだい?」


「いや、今日はちょっと相談に……」


俺は一通り事情を説明した。そしたら慧音は顔をしかめ、腕を組みながら悩んだ表情を浮かべた。


「うーん、仕事となると記憶のない和也君には限られてくるが……」


そうですか、と俺は少し下を向く。

それを見た慧音が少しためらった様子でいった。


「和也君がいいと言うならば……いい仕事があるぞ」

「何でもやります!」


俺はそう言ってしまった。



和也「今回は短かったな」

クロ「………………」

和也「おい!」

クロ「………………ねる」

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