一話 最初に出会った人達は?
紫の手引きによって、虚空に落とされた和也の視界に映りだされたのは雲のない清々しい程の青空だった。普通なら美しいと思える絶景も今の和也にとってはどうでもいい事だ。
「オワタ」
(ふざけてる場合じゃない……!このままだと確実に……)
空を飛んでいる鳥のような、極めて味わったことのない特別な体験に心を踊らせる余裕はない。自分は今、空から落ちているのだ。そして、その緊急事態を解決出来るような知識も道具もない。
「もうこれは………運に任せよう。これで死んだら、あいつを死ぬまで呪ってやる!」
和也の恨み辛みも空の一部となって消えてゆく。誰もいない、何も聞こえない空の中で確実に地面に向かって落ちる。
「あぁーッ!地面が」
地面がまじかに迫っている。だが、風圧によって下がどうなっているかは分からない。そうして和也は半分諦めて目をつぶる。仮にも、助けて貰った命もここで終わるのかと思ったら涙が出てくる。
だが、生涯を諦めた和也のせめてもの救いは落ちた時の衝撃で推測するに、ここは地面ではなく水面だったということだ。
........落ちてから何秒経過しただろう?いや、何分の方が正しいのだろうか。冷たい水の感覚が体に浸透し、脳の思考を停止させる。
「だい.....ぶ.....」
どこから、人の声が聞こえてくる。けれど、水の檻の中にいる和也には微かにしかその声を聞き取ることが出来なかった。だが、僅かなでも分かる悲痛に満ちた声音は和也が意識を取り戻すのに十分だった。
(俺のことを心配してくれているのか……?)
意識を取り戻した和也に待っていたのは、一瞬で地獄と思える程の苦しさだった。
それもそうだ。
人間は一定の酸素を取り込まないと生きてはいられない。それは、意識がなく、感覚が鈍くなろうとその根本は変わらないのだ。
(このままだとやばい......!)
和也は水面から漏れる、微かな光を頼りに泳ぐ。泳いで、泳いで泳ぎ続けて、永遠のように感じられる様な水中を泳ぎ続けた。
水面の光が徐々に明るくなっていく。既に、限界の和也は見える大きな石に縋り付くように手を掛け、一気に自分の体を引き上げる。
「はぁ……はぁ……!」
「大丈夫ですかッ!?」
飲み込んでしまった水を吐き出す和也。それに、慌てて駆け寄ってくるのは白髪の腰に刀を差した女の子だった。まだ幼そうな少女に俺は手を貸してもらい池の中から這い出した。
「助かったよ……」
「何か池に落ちたと思ったら人なんですから! びっくりしましたよ!」
その女の子は胸を撫で下ろしように息を吐き、タオルを俺に渡してくれた。池の水をたっぷり染み込んだ服や髪をそのタオルで入念に拭き取る。
死ななかったとはいえ、一度は死にかけた自分の体は水の冷たさか死の恐怖かは分からないが死人のように冷たくなっていた。
震える体を抱きしめながら、白髪の女の子に話しかける。
「ここどこなんだ?」
「ここは、死霊が住まう白玉楼です」
「...どこ?」
「簡単にいえば、地上で死んでしまった人達の魂が集まる場所です」
「ん?それだと、俺が死んでることになるんじゃ……?」
みるみる青ざめる和也を、白髪の女の子は呆れ顔で見つめる。
「何を言っているんですか?……さっき、人が落ちてきたと言いましたよね?私が説明するようにここは『死者の魂』が来るところです。だから、まだ実体があるあなたは死んでませんよ」
「そうなんだ!ならよかった」
それならそうと先に言ってほしい。紛らわしい説明をするから本当に死んだのかと思った。
「それで、貴方は一体?」
彼女は不思議そうというより懐疑的に和也を見つめている。
まぁ、この質問が飛んでくるところは予想はついていた。空から飛んできて池に落ちる男なんて怪しさの塊でしかない。彼女の視線の意味も普通の人なら当たり前だ。
「俺は……いうならば異世界人ってのが一番正しいのかな?」
依然として記憶がない和也の情報は『こことは違う場所から来たということ』、そして『記憶が無いという』情報だけだ。自分のことをどう表現しようか迷った結果、異世界人という酷く怪しさ漂う回答をしてしまった。
それが原因なのか、女の子が俺に向けてくる不信感がより一層高まった気がする。
「そんなことよりも、あなたを私の主の元へ連れていきますので付いてきてください」
「あ、主?」
和也は困惑気味に呟くが、白髪の子からは訝しげな視線が飛んでくるだけで返事はない。どうやら、自分は大歓迎という訳では無いようだ。だけど、ここから離れたところで何かある訳でも無いので、取り敢えず着いていくことにした。
この子から貰ったタオルで体を拭きながら長い廊下を進み、一つの大きい部屋に入った。綺麗に彫刻された木造の箪笥が並び、自分から真っ直ぐ見える一段上がった床はさながら時代劇で見る殿様が腰を据えている場所に似ている。
「ここに着替えが置いてあるので、着替えたら教えてください。荷物もここに置いといたので…」
「分かった。じゃあ着替えたら呼ぶよ」
その言葉を聞いて彼女は襖を閉める。
彼女が言っていた着替えというのは、部屋の中央に畳まれたこの浴衣のことだろうか。
なんだかすごく用意周到だな。まるで、俺がここに来るのが分かっていたような手際の良さだ。
「とりあえず着替えるか」
別段、今の俺には他にここで出来ることもなかったので少し怪しさは感じつつも指示通りに着替えることにした。
ここに来た時、あまり気にしないようにしていたが浴衣の入っている箱やこの部屋の周りにある金を施された箪笥や自分には価値が分からないが絶対どこかの偉い人が書いた掛け軸などを見ると、改めて自分のいる屋敷は相当な金持ちだということが分かる。
和也はある不安を覚えつつも、箱から丁寧に浴衣を取り出す。
「……まじか」
桜があしらわれた桃色の浴衣……。
今和也が着ているのは、池の水を大量に含んだゲームでいえば初期装備だ。当然、この屋敷の格式には相応しくない。そんな自分が、ここの格式に合ったものを着るとどうなるか。
貧乏人がいきなり富裕層の服を着たら、一瞬でばれるように行動と服の品位が一致せずに服に着られる状態になるのだ。
「すげぇ、恥ずかしいんだけど!?」
だが、そんなこと言ってもほかに着るものもない。嫌だからといってこの服のままだと逆に失礼にあたる。
和也は、自分の羞恥と他人の信用を天秤にかけ、百パーセント信用に傾いた。
その後の和也は、失礼がないように急いで浴衣を着た。
「おーい!着替えたぞ!」
和也が大声で廊下に向かって叫ぶと、その瞬間に襖が開いた。
「ずっと待機してたの……?」
「それが役目なので……」
「独り言……聞いてた?」
「…………」
これが無言の肯定というやつか。和也は、恥ずかしさで顔から火が吹き上がりそうになる。
「主の所へ連れていきますので、私についてきてください」
白髪の女の子は冷淡極まりない声音で足早に廊下を歩いていってしまう。相変わらず、不信感を露わにする少女。
「とりあえず、なにか言われるよりはマシか」
和也は心を落ち着かせながら、少女について行く。
さっきの事もあってか、特別な会話を交わすことなく和風建築な館の一番奥の部屋の前で彼女が止まった。
そして、彼女は物々しく膝をつき、丁寧に襖を開ける。
まず最初に感じたのは、香ばしく落ち着く茶葉の匂い。
そして、その匂いに惹き付けられた和也は部屋の中を覗く。中には、扇子を片手に自分を扇ぎながらお茶を飲んでる人がいた。どうも、幻想郷の女性は扇を扇ぎたがるらしい。
どこかで見たことがある光景が脳裏を過った。でも、その時の物凄い胡散臭さとは違い、雰囲気の良い華奢で美しい女性だった。
「よく来たわね。そこに座りなさい。妖夢、この人にお茶を」
「わかりました」
(この白髪の子は、妖夢って言うのか。一応助けてくれたんだし、覚えておこう。それにしても、この前に座ってる人すごく綺麗だな……。なんだか緊張するな)
綺麗な人の前だと緊張するというのは男としての性なのだろうか。正座をしている足が強ばるのが分かる。傍から見れば俺は、落ち着きなくそわそわしている変な男に見えるだろう。
桃髪がよく見合う彼女は、和也と一切目を合わせないままお茶を啜っている。和也は気まずい雰囲気を感じ取りながら何も言えずに、ただ彼女を見つめた。
そして、ようやく飲み終えたのか手に持っていた湯呑みを台の上に置いた。
「あなた」
「はい!?」
急に話しかけられた和也は素っ頓狂な声をあげて返事をする。話しかけた女性はそんな和也を見てくすくすと笑いだし、その優しそう瞳で和也を見つめる。
初めて目が合った訳だが、和也は恥ずかしそうに顔を下げた。
「そんなに固くならないでいいわよ?」
「はい……」
優しいそうな女性から発せられる優しい声掛けによって、今すぐにでも羞恥で悶え苦しみそうな自分の感情を押さえつけた。
和也がそんなくだらない事を考えてる間に、彼女は淡々と話を続ける。
「君がなんでここに来たのか分かる?」
「ここのどこかも、この世界がなんなのかも全然理解してません」
「あれ?紫、何も説明しなかったのかしら? 」
彼女は訝しげな表情を浮かべながら、首を傾げている。そして、何かを考え始めたかと思うとその大人びた雰囲気からはあまり想像できない、腕組みをしながら体をゆらゆらと揺らし始めた。
それを可愛いと思ってしまった和也を誰が責められるだろう?
彼女はしばらくの間考え込んでいたが、ようやくまとまったのか再び湯呑みを持って、入っていた残りのお茶を一気に飲み干した。
「あなたがここに来た理由はね。この冥界が貴方にとって幻想郷で一番安全だからなのと……私がそれなりに事情を知った紫の友人だからよ。貴方もいきなり妖怪が沢山いる所に落とされたくはないでしょ?」
「まぁ、そうですね……」
(一応配慮してくれた事には感謝するがだとしても、あんな高いところから落とす必要があったのかが疑問に思う。いや疑問とかそういう問題じゃない。まず、落とさなくていいよな?次会ったらぶっ飛ばしたい)
「しょうがないのよ。あの人悪戯好きだから」
彼女は呆れたような笑顔を見せるとそう言った。俺も、乾いた笑いを返す。それにしても、どうして俺の考えていることがばれていたたのか不思議だ。
そう、困惑していると.....。
「物凄く顔に出てるからよ」
そう言って彼女はクスッと笑った。
「そう……ですか?」
俺は恥ずかしくなって顔を背けた。二度もこんなに綺麗な人に失態を見られてしまった。そんな後悔の念を抱いていると.....。
「お茶が入りました」
「ありがとう妖夢。あなたも座って」
ハイと言いながら座る妖夢。
「全員自己紹介がまだだったわね?私は一応ここ冥界の管理をしている西行寺幽々子。そして、そこに座ってるのがここの庭師の……」
「魂魄妖夢です。よろしくお願いします」
「よろしく」
この桃髪の人が幽々子で白髪が妖夢。それにしてもこんなにも幼いのに庭師だなんて妖夢すごいな。枝にちゃんと届くのかな?俺が心配そうに妖夢の方を見ていると、視線に気づいたのか妖夢が首を傾げる。
「どうかしたんですか?」
「いいや、なんでもないよ?」
「.....そうですか。一応言っときますけど私はこれでも長く生きてますので、庭の手入れはちゃんと出来ます」
俺の考えている事はバレバレだったらしい。どうやら俺は、感情が表に出やすいタイプの人間らしい。
「それで貴方の名前は?」
「僕は和也……でいいのかな?」
曖昧だけど最後あの隙間から落ちる時そう呼ばれた気がして、それが俺の名前なんだろうと思った。だから、記憶がない俺は返事があやふやになってしまった。
「どうしたの?」
俺は今までの経緯と紫から話されたこと。記憶喪失ということを話した。
「それは残念ねぇー」
「はい……だから前のことはよくわからなくって」
「だとしても、あなたは緊張し過ぎよ。もっと体をほぐしなさい?それに、敬語じゃなくて全然構わないわ」
そう言って幽々子は緊張している俺を気遣ってくれた。俺も堅苦しいのはなんだか落ち着かなくて嫌いだからその言葉は正直有難かった。
「わかった。 ありがとう」
「どういたしまして....うふふ」
「どうしたの?」
「あなたが反応が面白いからよ」
「面白い?」
俺は今までのことを振り返って何が面白いのか考えてみる。空から落ちてくる。返事がおかしい、敬語がおかしい。そして、記憶喪失。あと、多分だけど俺はここ以外の別の世界からきた人間。
やばい……面白いところだらけだな、おい。
「あなたこの世界の仕組みは知ってる?」
唐突に幽々子はそう質問してきた。俺は突然訳の分からない質問に眉をひそめる。
そういえば自分はこの世界の事何も知らなかった。まぁ、それはそうか。この世界に来て何分経ったか分からないけど、時間はすごく浅い。唯一、知ってる事といえばこの世界が紫が最初に言っていた【幻想郷】と言われていることぐらいしか知らないな。あと、紫が説明不足なのが大半の要因を占めているといっても過言ではない。てゆうか、ほとんどあいつのせい!
「この世界は人間と妖怪が暮らしていて、一応共存しているって事になっている。だけれど、この世界にはルールという概念が具体的に存在しない。しない故に、みんなが自由に自分のしたい事をして生きているわ」
今の幽々子の言葉が本当なら、疑問に思うことがある。
「人間と妖怪が共存?そんなの……」
「出来るわけがない…かしら?」
俺はコクリと頷いた。記憶がなくなったと言っても最低限、皆が承知のことはある程度分かっているつもりだ。妖怪は圧倒的な力で人間を食い、自分の糧にする。力で劣る人間は妖怪を恐れ、知恵と勇気で対抗する。おとぎ話の内容やその他の歴史でもそれが主軸の物語が多い。多分それが、妖怪と人間との大きな溝なんだろう。
「妖怪は本来人間の恐怖心、憎悪、負の感情で生まれる。そして、一部の妖怪はその人間の恐怖心を煽り、自身の快楽の為に利用している者もいる。そして人間も、それらに対抗するために妖怪を殺しさえする。……本当に生きている者は皆醜いわ」
「ん?待てよ?その発言からすると幽々子はもう死んでるのか?だとしたら何で肉体があるんだ?」
「それは私が幽霊ではなくて、亡霊だからよ」
「幽々子様!?」
「何が違うんだ?」
「えーと、それわね?」
言いかけたその時、妖夢が急に立ち上がり、幽々子の口を押さえにかかる。口元を押さえられた幽々子はもごもごと何か喋っているが、何を言っているのか分からない。妖夢は幽々子の息が続く限り、口を押さえ続けた。
流石に苦しくなったのか、幽々子が妖夢をタップするとようやく妖夢はその手を離した。
「何するのよ?」
「幽々子様がベラベラとお話なさるからじゃないですか!?」
「もしかしたら、聞いたらダメな話だったか?」
「いいえ、ここからは少し個人的な話なのであまり人に話していいものではないのです。それをこの主は……」
妖夢はその容姿からは想像出来ない眼光で、幽々子を睨みつける。幽々子はそれを聞いて口元を扇で隠して落ち込んでいる素振りを見せる。
「あの、二人って主人とその庭師って関係でしょ?何でそんなに仲がいいの?」
俺が知る限り主従関係というのはそんなに甘くなかったはずなんだけど。俺の認識違いに幽々子と妖夢はお互い顔を合わせ、クスッと笑った。
「そりゃあ、付き合っている年数が違うもの。当たり前よ」
「何年一緒にいるの?」
「それはノーコメントよ?それよりもさっきの話からだいぶ逸れちゃったわね。話しを戻すわよ」
そして、幽々子は扇子を持って顔を扇ぎながら先程までの真剣な表情に戻った。
「さっき話を聞いて、今の幻想郷。ここ最近は比較的平和な状態が続いているのよ?外の世界に比べたら何十倍もね……。そして、この世界を作った私の友人八雲紫は凄い人と思わない?」
そう自慢げに言ってきた。あんな奴がか?とは一瞬思ったけど嘘をついているようには見えないし、嘘をつく理由がないので質問しなかった。
それでも……。
「それが本当だとしたら凄いと思うよ。世界丸ごと作るなんて俺には考えられない。それと、思ったんだけどここって外の世界と少し作りが違うような感じがするんだけど?記憶無いから確かじゃないんだけど.....」
「勘が鋭いわね……。それはどっちも紫の能力が関係しているんだけどね…」
「能力?」
紫との会話でも出た単語だ。【能力】それは後で話すと話を置いた幽々子に対して、俺はうずうずするくらい気になった。何故かと言うと、先程紫に一回見せてもらったからだ。あんなのがこの世界にはあるのかと思うと早くそれを知りたくもなる。だけど、また話してくれると言ったのでこれ以上気にしないことにした。
そして、幽々子は話を続けた。
「そしてね?紫以外にも幻想郷創立に立ち会った人が居るのよ。……...それが博麗の巫女」
「博麗の巫女?」
「そう、初代博麗の巫女が紫と一緒に妖怪や人間達をここまで連れてきたの。そして、その功績が認められて今の幻想郷における紫の管理者と同等の役職なっていると言ってもいいわ。そして、唯一人間で素手で妖怪に対抗できる血筋を持っている一族よ。現代の博麗の巫女は人間からも妖怪からも【鬼】と呼ばれて恐れられているわ。強い妖怪をバッタバッタと切り倒す。妖怪よりも強い数少ない人間よ」
「…………」
「長く話しちゃったわね?ごめんなさい」
「いや、ありがとう!よくここの事が分かったよ」
俺は博麗の巫女に興味が湧いてきたと同時に、少し恐怖を覚えた。非力な人間がどうやって妖怪を退治するのか。人間なのにどうしてそこまでの力を持っているのかなど気になることは沢山ある。
すると、幽々子が妖夢になにか指示を出した。
「何を言ったの?」
「あなたの持ち物を取りに行かせたのよ」
駆け足で俺の荷物というのを取りに行った……と思ったらすぐに帰ってきた。
「はい、これがあなたの持ち物ですよ。結構重いんですね〜」
妖夢が重たそうに持ってきてくれた妖刀と自分の愛刀。紫が言っていた二つの剣を受け取る。でもあれ?これそんなに重かったっけ?なんとも思わなかったな。むしろ少し軽いくらいだ。
それを見た幽々子は何か思いついたように言った。
「そうだ。 あなた達少し試合をしてみない?」
「し、試合?」
幽々子が言う試合とは力比べのようなものだったが、俺はここに来て間も無く、外の世界で戦闘経験があるかないかも分からなかったから無理だと思った。
「幽々子様...それは流石に……」
そうだ。妖夢なんとかしてくれ、と妖夢にすがるように見つめる。妖夢と目が会いそれを察してくれたのか幽々子を説得しはじめた。
だけどすぐに……。
「あら〜、妖夢?負けるのが怖いのかしら?」
「そんなわけないじゃないですか!」
「なら、やってみたらどうかしら?」
「わかりました! やってやりましょう!本気で行かせてもらいますよ!!」
妖夢の目は闘争心に燃えるライオンの様な目に早変わりした。
(おーい、妖夢さん〜!お前までなんでヤル気になってんだよ!
おかしいだろ!!幽々子なんでお前は.....って!何にやけてるんだ!)
「はやくやりますよ!早く早く!」
「はいはい。やればいいんでしょ、やれば」
俺は自分の愛刀だけを持って、中庭に向かった。