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東方剣録伝 〜幻想郷最強剣士の物語〜   作者: 黒井黒
第二章 小さな異変と恋心
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十六話 紅白の巫女の憂鬱



〜紅魔館二日目〜


ジリジリと目覚まし時計の音が覚め切ってない頭に響く。神社ではできない体験だ。俺は眠たい目をこすって身体を起こす。


「久しぶりによく寝たな。神社の布団だと硬いからあまり疲れが取れなかったけど、ベットだと全然違うな」


俺は大きな欠伸をする。そして、改めて自分の部屋になっている場所を確認する。俺の布団の中に二つの大きな山ができていた。


「...何だ? 」


俺は布団を少し上げて中に入っている物を確認する。暗くて少し見えにくい。何かあるのは分かるんだけど...

手探りで確認する。


「何かぷにぷにするな? 」


確認のために何度も手を開いたり閉じたりする。それでも感覚はぷにぷにだ。


何なんだこれは...。


「もう布団を全部とるか」


俺は確認できない何かに妙な緊張感に苛まれながらも、意を決して


「そら! 」


布団が宙を舞う。俺は即座に異物を確認する。


「...おい、ここで何をしている。フラン、レミリア」


俺の横で寝ていたのはここのかわいい、かわいい天使様たちだった。布団を取られたせいか、『うぅー』と唸っている。天使様の一人、フランが裸なのは触れなくていいんだろうか。いや、触れない方がいい。触れたら俺にとってもまずいことが起こりそうだ。

とりあえず、近くにあったタオルをフランにかけて見ないようにする。絶対に見ないようにする。絶対に絶対に見ないようにする。絶対に絶対に絶対に見ないようにする。


「和也、何見ているの? 」

「バカな! フランが起きているだ...と...!? 」

「正直に言えば、和也が私の胸を...」


フランが何かすごいことを暴露しそうになったので俺は麗奈を越えそうな速さでフランの口を塞いだ。


「よーし、フラン後で遊んであげるから黙ってような? 特にレミリアには...」

「私がどうしたのかしら? 」

「バカな! レミリアが起きているだ...と...!? 」

「正直に言えば、和也が私の胸ってフランが言った所から起きているわよ。で、和也言いたいことある? 」

「貴女の妹様の胸を触ってしまって申し訳ございませんでした」

「そう、フランの胸を触ったのね」

「何で確認してるんだ? 分かってるんだろ?」

「知っているのはアナタがフランの胸に何かをしたということだけよ? 言ったでしょ? フランがセリフを言った時に起きたって」

「まさか!? 」

「そう、私はアナタがフランに何をしたかまでは分からない。でも、アナタが今教えてくれたから。ね? 分かるでしょ? 」

「いや〜何のことか全くわかりません」

「和也はおバカさんね。こんな事を分からないなんて〜」


レミリアの手にはすでにスピアが握られている。俺の武器はテーブルの上にあった。ベットからテーブルまで約五メートルの距離。


「あ、俺死ぬ?」

「大丈夫、痛くしないようにするから」

「それ絶対痛いヤツ! というより死ぬ! 」

「.....そんなに怯えられると私も悲しいんだけど。幾ら何でもそんな事で殺したりしないわよ。私をなんだと思ってるの」

「紅茶が大好きなシスコンのお姉様」

「私のフランへの思いをシスコンで片付けないで。フランは至高! 神が私にくれた運命のヴィーナスなのよ! 」

「...うわぁ」

「お姉様、キモい」

「キモい!? いえ、そんな事ないわ。フランだって本当は私の事大好きなくせに」

「いえ、全く」


レミリアはテーブルの下に入り泣きじゃくってるが、まぁ気にせずに俺とフラン(装備タオル1枚)は少し廊下を歩いていた。

まぁ俺は朝風呂に入るために浴室に向かっていたが、フランが着いてくるもんでなかなか向かえないでいた。


「フラン、自分の部屋でとりあえず服着てきて? 」

「何で? 」

「いや、まず服着てないとソフィアさんにこの状況を見られたらまずい事に」

「和也、それフラグっていうんだよ」

「え? 」


フランが何度も見てきたかのような呆れた顔で俺の後ろに指をさしている。俺が振り返るとソフィアさんがいた。


「.............」

「.............」


俺とソフィアさんは数秒間見つめ合った。そして、ソフィアさんは、はぁーとため息ついた。


「事情は分かりました。とりあえずフランは服を着て、私の部屋まできなさい」

「どうゆうことですか?」

「お母様は『記憶を読みとれる程度の能力』を持ってるの。だから和也と私の今までの記憶を読み取って、私にお説教しようとしてるの」

「お説教ってあの...」

「そう、あのお説教....」


フランの顔がみるみる暗くなっていくのが分かる。どんだけあのお説教怖いんだよ。


「じゃあフラン、ちゃんと来てね。来ないと....分かってるわよね」

「はい....お母様」


寂しい背中を俺は見送った。これから起こることが分かっているだけあって俺も恐ろしい。


「それでは私も行きますね? 」

「少し待ってください。ソフィアさんの能力は過去も見れるんですか? 」

「何故そのような事を聞くのですか? 」

「それは.....」


俺はソフィアさんに記憶がないという事を話した。ソフィアさんは少し考える仕草をしていが、答えが出たのか俺に向き直った。


「残念ですが見れるは見れるのですが、失くした記憶は見れないんですよ。それも、見れるのは行動だけでその時心に思ってる事などは見えません。お力になれなくてすいません」

「いえ、こちらこそすいません」


それでは、そう言ってフランにお説教を食らわせるために自室にソフィアさんは戻っていった。


「さて、俺も風呂に入るか」


俺はフランの説教が少ないダメージで済むように祈りながら、浴槽へ向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜博麗神社〜


「あー、暇ー」


私は博麗神社でいつもと変わりなく暇な一日を過ごしている。和也が居ないこともあって色々と楽に生活が出来ている。昔に戻っている気分だ。


(そういえば和也が来たのって一年前よね? もっと長くいるつもりだったわ)


アイツがいる生活が当たり前になってきている。最初はめんどくさい居候だったけど、今は少しなんというかマシになってきている。めんどくさい居候からただの居候にランクアップしただけだ。ほかの気持ちなんて何にもない。


「何を思いつめてるの? 」

「何でアンタが居んのよ。ルーミア、ここはアンタが来ていいところじゃないわよ」

「ツンケンしないでよ。私達の仲でしょ? 」

「別にアンタと仲良くなったつもりは無い」


ルーミア 二つ名『宵闇の妖怪』


能力が『闇を操る程度の能力』で人食い妖怪。だが、本人は人の血が嫌いなため人を食わない。人食い妖怪なのに、人を食わないというのはどこか矛盾してるが、私としてはそっちの方が楽でいい。だが、本気で戦えば紫と五分五分だろう。妖怪という部類では四本の指に入る実力の持ち主だ。

ルーミアとは異変の解決を手伝ってもらった関係で、時々神社に顔を見せに来るが元々妖怪退治を生業とする博麗の巫女に会いにくるというのもおかしな話なのでいつもまともに相手をしていない。


「なんの用よ」

「用がなかったら来たらダメなの? 」

「紫みたいな事言うわね」

「そう? 」

「そうよ。そして、大体そういう事言う時は用事があるのよ」

「まぁ、そうね。言ってしまえば、用事はあるわ」

「分かったわ。立ち話もなんだからここに座ってなさい。お茶出してあげるから」


私はルーミアの為にお茶をいれる。一応用事があるという事はこいつを依頼人として扱わなければいけなくなる。


そして、お茶の入った湯呑みをルーミアの前に置く。


「ありがとう」

「それで話って? 」


ルーミアはお茶をひと口飲んで咽せる。どうやら熱かったらしい。


「アンタバカなの? 」

「そんな事言わないでよ! たまたまよ! 」


(何がたまたまなのか分からないけど...)


「早く要件を言わないと退治するわよ! 」

「分かったから落ち着いてよ。今から話すから」

「じゃあ話して」


そして、ルーミアは立ち上がり何故か自信満々に言った。


「和也くんが居なくなってすごく寂しくなっている麗奈に提案する、麗奈と和也くんの仲を深めると共に麗奈&和也の特別修行企画! 名付けて『麗奈と和也の異変模擬戦』を開催します! 」

「.............は? 」


一回ルーミアが何を言っているのか整理しよう。最初に言ったことは無視するとして異変模擬戦って何? 異変に模擬戦ってある?


「バカなの? 」

「ひどいッ!? 」


やばっ、口に出てた。


「大体アンタ、妖怪が巫女に提案って何よ。それと異変に模擬なんて無いでしょ」

「詳しい話は今からするから。まぁ、とりあえず聞いて」


私は興味無さそうに頬ずえをしながら聞いている。


「私、最近の麗奈を見て思ったの。このままじゃダメだって」

「余計なお世話よ」

「だって麗奈。最近大きな異変が無いせいで闘いの勘が鈍ってきてるでしょ? この前だって酒呑童子や天魔にやられてじゃない」

「見てたの!? 何で助けに来ないのよ! 」

「私が来てどうにかなる問題でもなかったし、それに麗奈の闘いを見てみたかったし...」

「それでも助けにぐらい来なさい! 」

「まぁまぁ怒らず、話の続き」


私は助けに来なかったのを許したつもりじゃないが今喚き散らしても意味がないと思い、ルーミアの話を聞く。


「見ててわかったけど、麗奈は今すごく弱くなってる。原因は二つ。一つ目は麗奈が大活躍するような異変がここ最近不気味なぐらいない。二つ目はここに来た青年和也」

「何でそこでアイツが出てくるのよ」

「麗奈は和也くんが来たことによって少しずつ変わっていった。前まで死ぬほどしていた修行をしなくなった。料理を少しずつだけど出来るようになった」

「で、何が言いたいの」


私がそう言うと、ルーミアは少し溜めて言った。


「麗奈、和也くんのこと『好き』なんでしょ? 」

「ッ!? 」


麗奈は飲んでいたお茶を勢いよく吹き出す。でも、私はこの時、全身を電気が走ったかのような感覚に見舞われた。胸がドクンドクン跳ねるのが分かる。


「な、なわけないでしょ! 私がアイツを好きなんてありえないわ」

「本当にそう? 私にはそうは見えない。麗奈は一年前からだいぶ変わった。そう、それは和也くんと出会ったことで変わり始めた」

「私は私よ! 変わった事なんてないわ! 」

「麗奈、気づいてるんでしょ? 本当は和也くんのことが...」

「アンタそれ以上言ったらぶっ倒すわよ」


さっきから頭が痛い。和也のことなんてなんと思っていない。思っていないはずなのに。ルーミアは私を心底憐れんだ目で見てくる。何? 私は何を間違えているの?


「麗奈、可哀想だね。麗奈は人を知らない。知らないから自分自身のことにも気づけない。それに気づかなければ麗奈は本当の意味で変わることができない」

「どういう意味よ! 」

「今の麗奈に必要なのは自分自身を知ること。そうすればおのずと見えてくる」


さっきから頭も胸をすごく痛い。出来ればもうこれ以上話したくない。でも私の本能が聞かなきゃいけないってルーミアの言葉が離れない。


「自分を知る? 私はこれ以上ないってくらい自分自身を知ってるわよ! 勝手なこと言うな! 」

「麗奈は知らない。自分自身の事をなんにも知らない。知らないから勘違いする。だから、自分は一人で生きてくるなんて事を」

「一人で生きて何が悪いの? 私はずっと一人で生きてきた! だから今までどうり一人で生きていく! 」

「何でそんなに孤独を欲しがるの? 孤独なんて寂しいだけだよ? 」


ルーミアは同情の目を向けてくる。ルーミアの話を聞いているとどんどん苦しくなる。逃げ出したくなる...。


「孤独を欲しがるなんてそんなの嘘。自分に嘘をついたらダメだよ」

「何で私が説教みたいなことされなきゃいけないのよ! 自分自身のことは私が一番知ってる! だからいらぬ説教よ!」

「今の麗奈は昔の独りっきりだった麗奈とは違う。それは麗奈も分かってるよね」

「うるさいわよ。孤独ならアンタも同じでしょ。私と境遇が同じなだけで知ったかぶらないでよ」

「うん。そうかもね、私は麗奈を自分自身と重ねてる。だからこそ正そうとする。気づいてもらおうとする」

「...かさねてる...ですって? そんな自己満足に付き合ってるほど私は暇じゃないのよ」

「でも、麗奈の心は悲鳴を上げてるんじゃない? 今まで嘘で固めてきた分が今になって崩壊しそう何じゃないの? 」


こいつも私と同じ人種だ。人食い妖怪。ルーミアは人間を見ると捕食衝動に駆られる。自分自身の欲求に逆らいながらこいつは今まで生きていた。

こいつこそ今までの人生嘘だらけじゃないか...。


「...確かに私は自分自身に言い聞かせこともある。...でも私の場合は...もう遅いの。遅すぎる。でも、恋は違う。恋だけは特別。人間ではどうしようもできない純粋で衝動的になってしまうものだから。自己満足ってだけじゃ答えは変わらないよ」


「結局.....アンタは何を言いたいの」


もう死にそうなぐらい頭が痛い。早くこの話を終わらせたい。そして、布団で寝たい。そうすればこの頭痛もいつの間にか治ってるはず.....


「.....麗奈、もう和也くんのこと愛しちゃってるんでしょ?」


「!?」


その瞬間、頭痛の痛みが引いていた。そして、この一年の和也との思い出が蘇ってきた。


「人を愛するのはすごく大切なことよ。今まで麗奈は愛したり、愛されたりした事がなかった。そして、麗奈も自分自身を愛せなかったからこそ、他人を好きになれない。だからこそ、自分を愛して、他人を愛しなさい。和也くんだけで良いから。今まで一人だった分、自分を知って、自分を語って、愛して。.....他でもない貴女の為に...」


「余計な.....お世話よ...。もう帰りなさい...」


「分かったわ。じゃあまた今度ね」


アイツと出会って一年。心のどこかで入っていたヒビが音を立てて崩れ落ちるのを私は心地よく感じていた。

私はルーミアを逃げるように帰らせた。



ルーミアの言ってること分かったかな?

心配だ

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