十三話 日々の変化
更新です。
見てくれている人に感謝を...
〜博麗神社〜
「麗奈遅いな」
俺は風雨でがたがた揺れる神社の中で、日が落ちても帰ってこない麗奈の事を考えていた。でも麗奈が遅くまで帰ってこないとは別に珍しい事じゃない。
でも今回は何故か分からないが胸さわぎがする。
そして、それが的中してしまう。
玄関の方で扉が開く音がした。
「帰ってきたのか? 」
だが、そこでいつもと違う雰囲気に気づいた。俺は恐る恐る玄関の方を覗いてみると、そこには服がボロボロで身体中に傷を負った麗奈が倒れていた。
俺は慌てて駆け寄り、麗奈を肩を抱え上半身を楽なように起こす。麗奈はびしょびしょに濡れていて、どうやら雨の中帰ってきたらしい。
「麗奈!どうした、大丈夫か! 」
「なんとかね。はやく休みたいわ」
「それよりどうしたんだ! 」
「そんな事アンタに関係ないでしょ」
「関係ある!! 」
つい大声をあげてしまった。麗奈が少し怖がっている。
「ご、ごめん。でも麗奈、いきなりだけどこれだけは知っておいて欲しい。麗奈にとって俺はただの邪魔な居候かもしれない。だけど、俺は麗奈が傷つくと悲しいし、心配もしてしまう。だから、君には君を想ってくれる人がいるってことを知っておいて欲しい」
「な、何よそれ!別に私を心配してくれなんて言った覚えないわよ!」
「心配するに決まってるだろ! 俺は麗奈が好きなんだから」
「す、好きっていきなり何言ってんのよ! バカなんじゃないの!もういい!寝る!」
そういうと麗奈はさっさと自室に入ってしまった。麗奈はどうにも問題を自分に抱え込ませてしまう所がある。まだ人を頼ることに慣れてないんだ。
そして、俺が麗奈に信用されてないって事もあるだろう。
「何とかしてあげたいけど、こればかりは麗奈次第か」
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「あーもう!ムカつくわね!何なのよアイツ!」
麗奈はただでさえ外の風で軋んでいる廊下をさらに音をたて軋ませながら歩いている。麗奈が通った廊下には雨水が垂れている。
普段はそれなりに綺麗好きな麗奈はそんな事気にせずに自室からお風呂場に向かっている。
「とりあえずお風呂に入って落ち着こう」
お風呂場に入って衣服を脱ぎながら、今日あった事を改めて考える。
「妖怪に服をボロボロにされるわ、うちの居候に説教されるし最悪よ!さーて、この傷残ったらどうしてくれようか」
「そんなこと言って本当は嬉しいんじゃない? 」
その声の主は麗奈の隣に開いたスキマの中にいた。
「.....紫。何が嬉しいよ。嬉しい事なんて何一つ無いわよ」
「本当にそうかしら? 」
麗奈は早くお風呂に入りたいのか、紫と少し会話をしてお風呂場に入ろうとする。
「一つ言っていいかしら? 」
「何よ」
「下着脱ぎ忘れてるわよ」
「 ッ!? 」
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「何をそんなに動揺しているのかしら」
「うるさい! 入ってくんな! あ〜傷がしみて痛い!」
「麗奈にも可愛いとこあるのね」
「ぶっ飛ばすわよ」
麗奈は恥ずかしいのか湯船に頭まで浸かって隠れてしまう。そうして、その麗奈を紫はニコニコしながら見つめていると、麗奈の頭だけが上がってきた。
「そもそもアイツの好きは同居人としての好きであって、それ以上でもそれ以下でもないわ。うん、絶対そうよ」
「そうかしら? 」
「そうよ」
そして、お風呂場には沈黙が続く。麗奈は痺れを切らしたのか、口を開いた。
「それで本題は何よ。それとも本当にこんなくだらない話をしに来たの?」
「そうと言ったらどうする?」
「この札で風穴を開けるわ」
麗奈はどこから取り出したのか、札をひらひらと紫の前で揺らす。
「分かったわ。大人しく本題に入るとしましょう。実はこの所妖怪の行動が活発化してきているわ。それも私が抑えきれないぐらいになってきているから手のつけようがないの」
「それで紫は私に何をしてほしいわけ?」
「もちろんその妖怪達の制御よ。それと『私』じゃなくて『私達』よ」
「それどういう事よ。ちゃんと説明しなさい! 」
「ごめんね麗奈。今はしてあげられないみたい。でも、一つアドバイスすると和也君には気を付けてね?」
「はい? それってどうゆうって、ちょっと待ちなさい! 」
そうして紫はスキマの中へと入っていった。麗奈は勢いよく湯船を叩きつける。
「何よ! 何でみんな説明してくれないのよ! 」
落ち着くまで暴れ続けた麗奈は、ようやく気が収まったのか体を洗い始める。しみる傷の痛みに耐え、文句を垂れながらそそくさと洗うのを終え、寝巻きに着替えて寝所につく。
(結局紫は私に何をしてほしんだろ?制御って言っても紫が出来ない事を私がやれって言われても..... それにアイツに気をつけろってどうゆうことよ。考えても仕方ない、今は自分に出来る限りのことをやろう)
そうして、麗奈は深い眠りに入った。
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襖から明るい陽の光が漏れだし、いつもの朝がやってきた。麗奈は昨日の戦闘の傷と筋肉の痛みに耐えながら体を起こす。
「体が訛ってるわね。これぐらいで筋肉痛なんて」
自分の体の衰えに嘆くのはまだ早いが、麗奈は体の痛むところを軽くマッサージをした。
「とりあえず、朝ごはん作らなきゃ」
毎朝の朝食はいつも麗奈が作っている。作るといってもそんな大したものでも無い。
「さて、今日は卵焼きと卵がけご飯と目玉焼きにしようかしら? 」
麗奈は寝巻きのまま台所に向かう。そして、台所の襖の前につくと中から何やら音がする。麗奈は疑問に思い耳を澄ませる。中からは包丁がまな板をたたく音がしている。
「アンタ何してんのよ」
「おっ?麗奈起きたか」
「『起きたか』じゃないでしょ! 何勝手に人の仕事奪ってんのよ! 」
「いや、昨日はその...悪いなと思ってさ。麗奈は疲れてるのに気づかなくて...」
「別にアンタに気を遣われる筋合いないわよ。まぁ作りたいってなら作らせてあげてもいいけど.....でも明日からは私がやるからね」
「了解だ、麗奈は出来るまで座っていてくれ」
起きて早々仲直りした二人。麗奈は朝食を和也に任せいつも自分が座っている座布団に座った。
そうして待っていると、和也が作った朝食が運ばれてくる。
「それで何で、タマゴばっかなのよ」
「いやそれ以外無かったから。ダメだったか? 」
「いや別にダメじゃないわよ。私もその予定だったし.....」
「じゃあ、食べるか」
「そうね」
「「いただきます!」」
そうして、二人はタマゴだらけの朝食を食べ始める。麗奈は昨日あった事を和也に話そうか悩んでいた。
(昨日紫に言われたことを察すると必ずどこかでコイツが関係してくる場面が出てくるということになる。なら当事者であるコイツにも教えた方がいいのかな?)
麗奈は和也をじっと見つめながら考えていた。
「俺の顔になんかついてるか?」
「よし決めた! 言わない! 」
「おい! 言わないってなんだよ」
「別に関係ない事よ」
麗奈はあざとく笑って見せた。和也は朝食を食べ終わり片付けをしている麗奈を怪しそうに目で追っている。
(また何か隠し事してるな。でも麗奈が言わないことには俺もわからないからどうしようもない)
和也が麗奈をずっと見つめていると麗奈が台所で顔だけを振り返してきた。
「アンタ今日暇? 」
「まぁ暇っていえば暇だけど.....」
「なら今日ちょっと付き合いなさい。どうせいつも妖怪が来なくて退屈してんでしょ? 」
「.....分かった。でも、付き合うって何を? 」
「それはついてからのお・楽・し・み」
麗奈の顔を見るとうっすらと笑みがこぼれている。笑っているだけならまだ可愛いのだが今回は違う。後ろに悪魔でも見えそうなぐらい恐ろしい不気味な笑みを浮かべている。
(なんだろう。ものすごく嫌な予感がするのだが。とりあえず付き合ってみるか)
「.....じっくりとやってあげるわ」
和也は麗奈が言ったこの言葉を聞き取ることが出来なかった。
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「それで麗奈。今俺たちはどこに向かってるんだ? 」
「言ったでしょ? 着いてからのお楽しみよ」
和也・麗奈の二人は博麗神社付近の森を歩いていた。森を歩いている麗奈の足取りは軽い。
それに比べて和也は何だか気の乗らなそうな顔をしながら歩いている。
「それなら後どのくらいで着くのかだけ教えてくれ」
「その必要はないわ」
「なんで? 」
麗奈は和也の真下を指さした。
「目的地はアンタの真下よ」
「真下って別になんにもないぞ」
『どいてなさい』と麗奈は和也をシッシと腕を振り、退かせる。そして、麗奈は徐ろに和也が退いた地面を触り始めた。
「おい麗奈、そこに何があるんだ? 」
「まぁまぁ黙って見てなさい。大体この辺に.....あった! 」
麗奈はお目当てのものを見つけたのか、取手の様なものを引っ張り始めた。
そして、少しずつ何か蓋のような物が姿を現し、麗奈に引っ張られて開いていく。
ズシンっと大きな音を立てて蓋が開いた。その先には下へ続く階段があり、数段先しか見えないぐらい真っ暗闇に包まれていた。
「それじゃあ行きましょうか」
「まさか地獄への階段じゃないだろうな」
この和也の言葉はこの後本当になるのだが、今はまだ知らない。
長い長いすごーく長い階段を降っていくと、やっとの事で光が見えてきた。
「さて、着いたわよ」
「着いたってココ? 」
「えぇココよ」
そこは道場だった。道場と言っても普通の道場ではない。
まず、一般的に考える道場は人が十人ぐらい入れる道場だとしよう。そして、それを十倍してみてくれ。それで分かるか不安だが、今はとにかく広いという事を認識してくれればいい。
「麗奈、ここって何なんだ? 」
「ここは昔私がまだ博麗の巫女の見習いだった頃に使っていた道場よ。ここで朝から日が暮れるまで毎日修行していたわ.....。改めて思い出すと泣きたくなる程辛い思い出しかないわね」
麗奈の顔を見ると少しだけ目が潤っている。和也はそれを見て、何とか目にゴミが入っただけだと心の中で自分を言いくるめる。
(そんなキツい修行をしていた所に俺を連れてくるなんてもしかして、もしかしなくても.....)
「じゃあ殺るわよ」
「あ、これ僕死ぬやつですね」
「うん、そう」
その瞬間和也は今自分が持てる最高速度のスピードで階段に向かって猛ダッシュをした。
「あっ! 待ちなさい! 逃げられると思ってんの! 」
「ヤダァー!! まだ死にたくない!! 」
「諦めなさい! ここに来ている時点でアンタの運命は決まってんのよ! .....全くここまでする必要なかったけど」
博麗式移動術 『神歩」
霊力を足に溜め踏み出すと同時に放出。その勢いで相手と間合いを詰める技。余りのスピードにその場から消えるように見える。
そして、麗奈に『神歩』を使われて逃げ先の前に入られてしまった。
「すまん! 麗奈! 」
和也は近くに落ちていた竹刀を拾い上げ、麗奈を倒そうと向かっていく。
「やれやれ、よいしょっと」
麗奈も竹刀を拾い上げて、受けの姿勢を取る。
「おりゃー!!」
和也が渾身の一撃で麗奈を倒そうとする。麗奈はそれを難なくかわして逆に和也の腹に一撃をクリーンヒットさせる。
腹をやられた和也はうめき声をあげながらその場に倒れ込む。
「それじゃあ、痛みが収まったら説明してあげるからとりあえずここに座ってなさい」
麗奈も痛がっている和也の隣に座る。ようやく和也の痛みが収まったら話を始めた。
「突然だけどアンタにはサンドバッグもとい私の修行相手になってもらうわ。当然異論は認めない」
「はい? 何だよそれ、ただ俺にボコられろって言ってるようなもんじゃないか」
「まぁそんな感じだけど。でもこれはアンタの為でもあんのよ? 」
「どうゆう事? 」
「アンタはここ最近妖怪が来なくて全然実戦の経験が積めてない。だから直々にこの私がアンタに実戦を積ませてあげようと思います」
「.....確かにそうかもしれないけど。別に修行を怠ってる訳じゃないし、どっかの誰かさんみたいに」
「えぇ、そうね。どっかの誰かさんは一年前まではちゃんと修行していたのに、突然居候してきたどっかの誰かさんのせいで修行出来なかったんだけどそれはどう思うかしら? 」
「申し訳ありませんでした...」
「分かればいいのよ」
そして、麗奈は立ち上がりさっきまで和也が持っていた竹刀を持ち、和也に手渡した。
「私の修行はより実戦に近ずけるようにルールはなし、魔法も霊弾も体術も何でもありよ。でも武器はこの竹刀だけ。どちらかが戦闘不能になったら負けよ。まぁアンタが私に勝ったら何でもゆうこと聞いてあげるわよ」
「本気で? 」
「本気よ。でもアンタが私に勝つなんて一生無いだろうけど」
「もし勝って、泣いて許してくださいって言っても許さないからな」
「やれるもんならやって見なさい」
双方竹刀を構える。
まず先に動いたのは和也だ。麗奈には全力で短期決戦を挑まないと勝てないと思ったのか、最初から全力で来る。
(技術で劣る和也も考えたのね。素早く奇襲を掛ければ一撃でも当たると思ってる。でも、それを私が考えないわけないでしょ?)
そして、和也が頭から振り落とした竹刀は麗奈の横に空を切り、そのあとは麗奈のカウンターが待っていた。
さっきと同じパターンだ。
(もらった! )
麗奈の一撃が再び和也の腹に迫る。だが甲高い音とともに麗奈の一撃は止められた。
そして、逆にさっきまで空を切っていた和也の竹刀が麗奈の脇腹へと迫る。それを麗奈は間合いを取ることで回避した。
「驚いたわね。まさか腕に小手を入れてるなんて。いつ入れたの? 」
「さっき麗奈から逃げる途中でね。最初は守れなかったけど次は時間があったからな」
「まさか、アンタに一杯食わされるなんてね。なら私も少し本気でやってあげる」
麗奈の構えが少し変わった。腰を低く、竹刀を上ではなく下に構えている。
博麗式剣術一ノ型『巫舞』
そして、麗奈は驚くようなスピードで和也との間合いを一瞬にして詰めた。和也は慌てて距離を取ろうとする、下がったおかげで一撃目は避けられたが二撃、三撃目は腕と足に食らってしまう。
腕は小手をつけてるから平気だったが、足は正確に足の関節に当てられたため動きが鈍くなる。
(ヤバい。このままじゃあ麗奈にやられる。何とかしてこの状況を変えなきゃ)
和也は何を考えたか、守りを捨て、竹刀も捨て、麗奈に飛びかかる。その突拍子もない行動に麗奈も驚き、行動が遅れる。このまま麗奈を投げ飛ばせば和也は麗奈にダメージを与えられる。
和也がもう一歩踏み出す瞬間。
「あっ...」
盛大にコケた。そして、そのまま麗奈に激突した。
「痛った〜。何してんの...よ? 」
「う〜ん、何だこれ? 」
和也はその手の中にある柔らかい物を二回揉む。
「ひゃんっ! 」
「ひゃん? 俺はいったい何を...」
「この変態ッ〜!!!」
和也は麗奈に蹴られて、一回転、二回転、三回転して壁に激突して薄れる意識の中、前を見ると顔を赤らめた麗奈が胸を抱いてこっちを睨んでいた。
(.....ごちそうさま)
和也が意識を取り戻した時に麗奈が一言も口を聞いてくれなかったのは言うまでもない。
ラッキースケベを書きたかったんですよ。ちゃんと出来てるかな?