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「おはよう、エフィー。今日の修行、決まったわよ」
翌日。
メルがニコニコしながらエフィーを起こしにやってくる。
「おはよう…ございます」
エフィーが眠そうに目を開けた。
「今日の、いえ、今日からの修行は…ずばり模写修行、よ」
ずばり、どこかで聞いたことのある言葉だった。
朝食を思う存分済まし、あの部屋へ入る。
「ううう…またここでしばらく過ごすんだ」
優花が苦虫を噛んだような顔で言う。
「それはないのね。今回は3日間この模写修行を続けていただくけれどもきちんと睡眠等はとるのね」
〔おお、今回は普通だな〕
「ふふ、今回は、なのね」
嫌な言い方をする奴だ。
「さあ、模写修行をはじめましょう」
メルとエフィー、二人の手には木刀が。
「手始めに、メルの真似をしてみなさい」
そんなメルの言葉通りにひたすらメルの真似をするエフィー。その光景が、実に2時間続いていた。
「あ、あのっ、メルさんっ」
「なにかしら?」
「こ、この修行って…一体なんの?」
「模写修行よ?」
「いや、そうなんですけど…」
メルがなぜこの修行をさせているのか、エフィーには理解出来ていない。
エフィーはこの修行を受けることを納得していないのだ。
彼女は、修行の意味を深く理解することではじめて修行の意味があるという考えを持っているので、今のこの模写修行は全く意味が無いというふうに思っているのである。
もやもやした気持ちを持ったまま、永遠とメルの真似をするのは嫌だという気持ちが大きくなっていく。
「メルさんっ!」
「なにかしら?」
メルが振り続けているのにも関わらず、エフィーが木刀を操る手を止める。
「この修行の…意味を教えてください」
「そんなこと、自分で考えなさいな」
メルは振り続けている。
「納得できませんっ! 私は模写する意味がまっったく分かりませんっ! だから私はこの修行に意味が見いだせない! 価値無き修行なんて意味がないじゃないですか!」
「………」
メルが振り続けている。
「…こうしてメルの真似をしていない間にあなたは今どれだけの時間を無駄にしているのかしらね」
その発言にエフィーは腹が立つ。
「そんなことくらい分かってます!! だから、だからこそ教えてくださいよって私は言っているんです! 無駄にしてるくらい今こうして分かってますよ…!」
「だったら無駄に過ごさないでほしいのね」
エフィーの全身にどんどん伝わっていく怒りの気持ち。
ぶわっ、とこみ上げてくるその気持ちは紛れもない怒り。
言葉に出来ない怒りが彼女を襲っているのだ。
木刀の柄を思わず握り潰してしまう程に。
木刀は粉々に砕けて木屑になってしまう。
木の破片が少し刺さったのか、手から微かに血が滴る。
〔おいおい、冷たいじゃねえの?〕
牙櫻が口を挟む。
メルは呆れ息をついた。
「そんなに怒らないでほしいのね…」
メルがエフィーに近寄って、かろうじて使える木刀を取る。
「ここで終わりにしましょう。次の開始は、エフィーが意味を捉えられるまで」
「え…」
優花が思わず声に出す。
〔まァた、無駄な時間つくってんのかよ〕
「仕方ないじゃない。意味が分からないのなら意味が無いのでしょう? それは無駄な時間…。どうせした所で無駄。そんな無駄な時間を過ごすなら、考える方に費やした方がいいのでは?」
一理ある発言だった。
「なにか、ヒントは…?」
優花が恐る恐る聞く。
メルは「そうねぇ」なんて言って首をかしげた。
「メルはこの修行に意味は持たせていないのね。正直、受ける側が意味を考えないと意味が無いとメルは思うのね。まあだから…あなたなりに答えを考えればいいと思う。答えなんてないし」
そう言ってメルはその部屋から出て行った。
ありがとうございました。
エフィーってば、握力強いべ!




