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「っっっ〜〜!!」
顔を押さえてエフィーが唸る。涙目だった。
「大丈夫? まあ、その痛みはあなたの勢いの度合いを示していると考えたらどうかしら?」
「っっっっ!! っっ!」
「落ち着きなさい…」
メルが原っぱに座り込んで木刀をくるくる回して遊んでいる。
エフィーはその後ろのちょっと離れた場所でタオルで顔を擦りながら正座しながらでその様子を見ていた。
「この時に、まあ油断していそうな時に木刀を奪ってもOKね?」
と、背中をエフィーに見せつけるようにしてから木刀を上に投げて遊んでいる。
エフィーはタオルで目が見えるくらいで顔を押さえたまま、気配を、足音を消してゆっくりとメルに近寄る。
メルは気づきもせず、木刀を投げて遊ぶ。
エフィーはギリギリ手が木刀につくくらいの距離をキープする。そしてメルが木刀を投げた瞬間だ。
「とおっ!」
と、木刀を取ろうとする。
タオルを投げ捨て、両手で。
しかしそれに気付いたメルはすぐ腕を上に伸ばし木刀を掴む。
「あっ…」
そのまま倒れてくるエフィーを避けるようにして左に身体を傾けた。
「もっ…顔は勘弁してください……っ!」
やっぱり顔から地面直撃だった。
「〜〜〜!! ぐああああ!!! ふうっ!」
なんて唸りだけ聞いていればものすごく苦戦した人っぽく見えるがただ自分のミスで顔を地面に当てただけなので、その、自爆であった。
「全く…メルが油断していると思ってたのかしら?」
メルが呆れるようにして言う。
「…おお、おもってまじだっ……」
うつ伏せになったままエフィーはそう言うのでメルは笑いながらその頭、後頭部をつついた。
「じゃあハズレね。メルが油断なんて私事でしかしないわよ。あくまで戦う時は絶対油断はしないわね」
「あい…」
後頭部を一定のテンポでつつきつつ、メルは言う。
「そもそも、さっきの木刀投げ遊びは挑発なのね。投げていたのは、メルが上に腕を伸ばしてもすぐ届くくらいの程度で投げていた…だから、来たと思えばすぐ手が届いたのね」
メルは木刀を左手に持って、エフィーから離してつんつんを続けている。
「ううう………」
エフィーはつんつんされながらずっと唸っていた。
「に、しても…そろそろ修行を終わりたいわね〜エフィー」
「そ、そうですね…」
「全く〜、この調子じゃあいつになったら帰れるのかしら〜」
「い、いつですかね…」
つんつんされながらそんな応答がしばらく続いた。
攻防が続いておよそ3日が経とうとしていた。
エフィーの目の下にはくっきりとしたクマ。あと、ちょっと鼻の先が赤い。
「さあ、頑張りなさい。それそれ」
なんて言っているメルは元気もりもりである。
「参ります!」
と、エフィーとメルの攻防は再び始まる。
「なんか、日に日に…時間が増していくごとに激しくなっていきますね」
〔そうだな。それほどあのお嬢ちゃんも進歩したってことじゃねぇか。よかったじゃねぇか〕
優花と牙櫻はそんな会話をする。意外と仲良くなっているものだった。
「牙櫻さん、狐だったんですよね」
〔ああ、大野狐様だったぜ〕
「それは嘘だと聞きましたよ」
〔け、拍依のヤツ、余計なこと言いやがって〕
「あはは」
メルはこの修行間、一切手抜きはしていない。しかし本気でもない。
普通に戦っているのだ。
というか、100%の中の30%くらいを出していてこれから40%にも20%にもするつもりはなく、この修行間では30%を維持しようと思っている。
というか、維持しないと行けない。難易度は、修行間では常に同じでなくてはならない。
その30%にエフィーは大分付いてきている。
つまり、エフィーも大分強くなったというわけである。
そろそろこの修行も終わるかしら、なんて思いながらメルは防御を続けていた。
疲れた。大分疲れた。
メル強い。知っていたことなのだが、あくまでも戦いを見ている上で断定していたものだった。
実戦は、やはり違うな、と。
強すぎるのだった。
しかし、勝たなければならない。というか、木刀を奪わなければ話にならない。
木刀を取るだけなんて冷静に考えれば、メルに勝つよりは簡単なのである。
出来ないことではない。
「絶対っっっ!! 取りまぁぁぁァッす!!」
エフィーが雄叫びのように叫んだ。
地面を蹴る。
メルはびっくりした様子でエフィーを見る。
エフィーの突進してくるスピードが今までより確実に遅かった。
遅くなっていた。
何故遅いの?
遅い遅い…何?何故、こんなに遅くなったの。
純粋な疑問がメルを襲う。
遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い―――
速くなった。
ありがとうございました。
寒いですね。皆様お身体大切になさってください(でいいのか?)




