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死霊CONTRACT  作者: 椎名むに
修行をするのね
52/72

 幸により案内された場所は簡単に言うとお城みたいなところだった。



〔へぇ、天界っつーもんは、高尚なとこだな〕


 天界組は、天界のとある施設のとある部屋にいた。


「きっちりバスルームとか寝室とか食事処とかありますね…! お城みたいで、嬉しいです」


 優花はわくわく感丸出しでそう言った。

「三階建だしなかなか広い所なのね」

 メルも辺りを見回す。


「稽古場もきちんとあるみたい」


 エフィーは二階を見る。

 二階の一部が一階、つまりエフィー達のいる位置から見えるのだが、高尚なドアがいくつも並んでいる中一つだけ雰囲気の違うドアがあった。

 そこは恐らく、稽古場だろう。


「とりあえず、覗いて見ましょうかしら」


 メルに全員は続いて階段をゆっくり上がって行った。



「まっしろ!」


 優花が思わず叫ぶ。

 稽古場であろう場は、殺風景すぎる場だった。

 壁も床も全て白に統一されていて窓もない。

 物が置かれていないのだった。

〔好きに使っていいっつーことなんだろうな。けけけっ〕

 牙櫻のその言葉にメルは頷く。

「ここはあくまで天界…つまりは……」

 メルはそうぽそりと呟くと、


「天気は快晴の空。いい感じの外の風景にして頂戴」


 そう言うと真っ白な床と壁は瞬時にいろんな色へ切り替わっていく。


「わ、わわ」


 優花が辺りを見回した時にはもう既に、空は快晴り

 エフィーやメルの地面の下は野原が踏まれていた。


「さあ、修行を始めるのね」

「あ、はいっ」

 メルが辺りを見回し、両手を上にあげる。


「木刀」


 そう言うと両手ずつに木刀が手に収まる。

 対するエフィーは優花を見つめる。

「『白菊(シラギク)』!」




 何も起きない。




「あ、あれ…?」

「違うのね。とりあえずはまだ白菊は使わないのね」

 そういうとメルは優花を手の上にちょっこり乗せると、牙櫻の上に優花を置く形で座らせた。

「メルもメルの武器は使わないわ。とりあえずは木刀を使うのね」

 メルがそう言って勢いよく両木刀を振り下ろす。風を切る音がする。

「えっと、じゃあ…」

 そう言ってエフィーはメルの左手からメルの木刀を貰おうとする。

 と、メルは後ろに下がった。


「………???」


「呆けた顔をするんじゃないのね。全く…」

 メルは少しだけ口角が緩んだ。


「この部屋に入った時からもう修行は始まっているのね」

「…は、はい……」

「メルのこの左手にある木刀を奪えることが出来ない限り、あなたは何も出来ないのね? 分かったならその時点で開始なのね。ちなみに、武器を使うのは無し。メルもあなたに攻撃をしない。ただ避けるだけなのね」

 右手の木刀を床に置く。

 メルは左手の木刀をエフィーに見せつけるようにして前に出す。


「ほーら。早くとってくれないかなぁーメルの左手ちゃんが疲れちゃうのねー」


 実に苛つく態度である。



「い、いただきます!」



 そう言うとエフィーもすぐ様メルへと直進。

「うんうん、修行への意欲は大マルなのね」



 メルはギリギリまでエフィーを近づかせるとすぐに避ける。

 何度か取りそうになるのだが、やはりメルの方が考えての瞬発力や速さが一回り上だ。小柄故に、なかなかすばしっこい相手だとエフィーは考えた。


 一進一退の攻防が続く中、メルは1つエフィーに言う。

「戦う上で、メルが思う事を1つ教えるのね。まあこれはあくまでメル自身の見解だから、正解ではないのね。けどまあ、教えるのね」

「はい、なんでしょうか」

「戦う上で、強いと思うのは2つ。1つは無心になって戦う。もう1つはありとあらゆる先を考えて戦う、なのね」

 そう言うとメルはぴたりと動きを止める。

 それが説明兼休憩という事だと察したエフィーもすぐその場を止まった。二人の間は少しだけ間があった。

 メルが拍手をする。

「まあ、無心になって戦うというのは、やけくそに武器を振り回したらいいのね。正直先が読みづらくなる。だからこそ強い。けれど、考えて戦うと、相手の行動を先読み出来ることがある…または、相手の行動の法則性など、勝ちのヒントが見つかることもあるわね。どちらもなかなか捨てがたい戦法じゃないかしら」

 エフィーが小さく頷いた。

「どちらが強いなんてない。結局戦いは個人の能力だし。まあ、向き不向きはあると思うわ。例えばサスケリンとレイレで行きましょうか」

 メルが首をかしげて、いいかしら?と言う。やはりエフィーは頷いた。


「まずはサスケリン。彼は正直馬鹿よね。どっちの戦法が合うと思う?」

 …。

 至極簡単なことであった。

「………無心になることですね」

 逆に鈴があれこれ考えて戦えるわけがないし、仮にそう戦ったら、思考中の間に殺られるだろう。

「そうね。じゃあレイレの戦法を見てみましょう」

 メルは大マルを両腕で作っていた。

「レイレに関してはメル、凄く彼女を尊敬するのね。彼女程鋭く、勝算を抜き出せる者などいないわ。いるとしても、メルくらいね」

 少しの沈黙があったあと、エフィーはゆっくり頷いた。

 そう、レイレは実は単身でもなかなか凄腕の騎士である。

 正直、死霊にしておくには惜しい存在なのだ。

 まあ、なってしまったものは仕方がないのだが。

「まあ、戦法なんて人それぞれだと思うのね。ちなみにメルはどっちだと思う?」

 メルが聞いてきた。目が少しキラキラしていた。

 エフィーは考える。

 相当な策略家で、常に先を計算して戦っているようにも見えるが、何も考えていなくて完全に目の前の敵を倒す、みたいな考えを持っているかもしれないしで。


「分かりません」


 と言った。


「そうね。答えはどちらも、なのね」


 メルはドヤ顔でそう言った。



「―と、言いますと?」

「ふふ、その場に応じて、なのね」

「は、はい…?」

 ふうっ、とメルは息を吐く。

「考える時は考える、考えない時は考えないでメルは戦っているのね。だからメルは強い」

 そう言うとメルは再び動き出した。


「まずはよく考えなさい。冷静に考え、策を練るか、無心で奪うか。これはその修行なのだから」

 と。攻防はまだ続く。


 優花はエフィーがいい感じに取りそうになると「おおっ!」と言い、失敗に終わり、「うう…」と落胆する。

 たまに小さな足をパタパタとさせるのだがその時に牙櫻の上に乗っているが故カサカサと音がする。


〔けけ、こりゃあ、いつまで続くんだよォ?〕

「木刀が奪われるまで、なのね。1つの修行が終われば1日休憩を与える。そして再び終わるまで永遠と修行。この部屋から出さない。それがメルのやり方なのね」


 エフィーの体力もそろそろ限界のようで息を切らす。

 パタリパタリと、汗が偽物の原っぱに落ちる。

 その様子を見てメルは急かす事はしない。

 ただエフィーが止まったら止まる。

 エフィーが動き出したら、防御するのだ。


「下手に無理されて倒れられても困るものだしね」


 と、メルはあくびをした。



 かれこれおよそ2日くらい、飲まず食わず寝ずで攻防を繰り広げている。

 メルは平気そう(たまにあくびやくしゃみ等の生理現象が発生する)にしているが、エフィーは途中でフラついたり倒れたり等なかなかの疲労が溜まっているようだ。


「…メルさん、手加減なしですね」

〔あたりめーだろ。修行で手加減なんてしちゃあ終わりだぜ〕

「そうですね…確かに」

〔加減なんざ、修行の意味がなくなるって〕

「はい…」

 優花と牙櫻も飲まず食わずの寝ずで、彼女達の稽古を見守っていたのだった。



 考えろ、考えろ!

 メルはどんな動きをしている?

 もしかしたら勝てるかもしれない。今までかなりの回数取りかけた事がある。そしてその頻度はやるにつれ多くなっている。

 つまり、接近だ。接近戦に弱いんだ。それならば―!


 エフィーが一度止まる。

 目には闘士を燃やして。

 それを確認したメルは止まる。

 きちんと次に備えて。

 休憩ではないと。エフィーには作戦があるのだと、思った。


 と。



 エフィーが高速でメルに近寄る。


「わあ」


 なんて呆けた声を出したメルは後ろ向きに倒れそうになる。


「今だッ!」


 エフィーが手を勢いよく伸ばした。


 するとメルは木刀を自分の後ろに投げ飛ばした。


 エフィーには何が起きたのか分からない。

 そんなときでも木刀はくるくる、メルの背後で回りながら飛び続ける。



「今の作戦、いいと思うのね。でも、メルだって歴戦の猛者…それくらい、毎回のように受けてるわ」



 メルが倒れかけの姿勢で地面を勢いよく蹴った。

 そしてあっという間に木刀のところへたどり着き、木刀を握りしめる。

 エフィーはそれを、現実をようやく理解したがその時にはもう遅く――


「ひゃっ!」


 と、顔から原っぱに突っ込んで行った。



ありがとうございました。


とうとう書きたかった修行編!いぇいいぇいです。よろしくお願いします\(^^)/

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