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死霊CONTRACT  作者: 椎名むに
失う悲しみとは、なんて
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「お疲れ様でございます。天照大御神」




「儂はまだ疲れておらんわ、のう、光」


 光天器が光出したと思うと再び、人間の形に戻る。

 冷静に考えると、天照大御神の契霊、つまりは光と幸もレイマの契霊であるラウラとレイレと同じく、ちびキャラの姿では無かった。


「ある程度力を持っていたらこれくらいはできるのですよ」


 幸がそう言っていた。


「さて、儂としたことが時間を食うてしもうたわ。ふうむ。まあ、本題に入るか」

 再び天照大御神はエフィーの前に立つ。


「本当に死んでしまったのじゃな。虎緒…いや、鶴彦(つるひこ)


 天照大御神は虎緒の生前時の名前を呟く。


 鶴彦、と。


「エフィー、離れておきなさい。貴女、いつまでぐずるつもりなのね?」

 メルが動こうとしないエフィーに対して投げかける。

 しかしエフィーは黙り込んだままだった。

 メルはふう、とため息をついた。

「儂は早う帰りたいのじゃが…二徹は勘弁じゃし」

  天照大御神にも徹夜はあるようだ。

「そんな、こないだ発売したばっかの薔薇本読みまくったせいだからでしょう」

「ふへへ…」

 おい天照。

「まあ良いじゃろ、そんなもん。おい佐介」

 適当にして天照大御神は鈴を呼んだ。

「は、はい」

「エフィーをちょっと抱きしめてやらんかの」

「あ、はい。抱きしめっ―へぇ!?」

 変な声が出てしまう。

「ちょいと後ろからぎゅっしてもらったら少しはエフィーも心が落ち着くじゃろうて」

「落ち着くわけないだろ! 逆にキモがられることしか想像出来ないし!」

 そんなことしたら虎緒とレイマに殺される。

「ふうむ、どうしたものか。じゃあ抱きしめんでも良いぞ。とりあえずエフィーをあの場から離してくれんかのう」

「最初からそう言ってくれ…」

 とは言ったもののどうしたものか、である。

 絶望しすぎている彼女をどうにかして少しでも正気に戻させるにはどうしろと言うのだろうか。

 餌で釣るなんて出来るわけもないし。

 肩に手を置いて「仕方ないさ。とりあえず帰ろう?」なんて声もかけれないし。

 鈴にはエフィーに何が出来るのだろうか。

 それに、さっき鈴は彼女を傷つけた。



 本当に死んでるんだから…下手クソもないだろうが……!



 その言葉でエフィーはどれだけ絶望におちたのだろうか。

 おとしてしまった張本人である彼が、彼女に何が出来ると言うのだろう。



「まあ、出来るわけもないじゃろうがな」


 天照大御神はそう言った。

「…………………………………すいません」

 ただただ謝るしかなかった。

「ふん、まあとりあえず、鶴彦を昇らせる。それが儂の仕事じゃし。早うせんと、妖怪になってしまうわ。鶴彦が、虎緒が妖怪になったらとても敵わんじゃろうて」

 そう言うと、天照大御神は笑みを浮かべた。



「…鶴彦とエフィーか。懐かしいのう、ミカエル。後で、思い出話でも語らんか」



「却下だ。仕事があるだろう」

「ケチ臭いやつじゃ。意地でも語るぞ」


 ミカエルも少しだけ笑うと、仕方ない、というふうに息を吐く。



幸衣(こうごろも)、我が身に纏え―」


 そう言うと、幸は光り始める。


 瞬く間に、天照大御神には神々しい1枚の衣が纏われていた。


光天器(こうてんき)、我が手に忍べ―」


 そして天照大御神は光を呼ぶ。


 手に光天器が収まった。


「鶴彦、汝の清き魂、我が神なる天照大御神により、沈めよう。神の器の幸衣を纏い、光天器を掴み、舞い踊ろう」


 ゆっくりと天照大御神は舞い始める。


「虎緒、我はそなたを讃えよう」


 その舞いは、神々しく、美しく。


 ゆっくりと、虎緒から矢が抜かれていく。


 そして、虎緒は光り輝く。


 同時にその身体から光と共に人間サイズの虎緒の姿が現れた。


 誇り高き童が現れる。


 うないを揺らして。



「虎緒!」



 エフィーが呼ぶ。


 虎緒は振り返る。


「虎緒…とらおぉ!」


 懸命にエフィーは虎緒を呼ぶ。


 しかし虎緒は何も喋らない。





「虎緒…行かないで……」







 エフィーがそう言うと虎緒は微笑んだ。

 清々しく微笑んだ。

 涙を流して清々しく虎緒は微笑む。


「とらお…」









「ありがとう」






ありがとうございました。



最後の「ありがとう」。

誰が言ったのでしょうね…

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