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死霊CONTRACT  作者: 椎名むに
失う悲しみとは、なんて
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 死んだ。

 虎緒は死んだ。


「嫌…またどうせわざとなんでしょ……フリなんでしょ…」

 エフィーはそれを受け止めれない。

「早く起きてよ…もうハロウィンとかエイプリルフールとか過ぎてるんだから……そんな下手すぎる嘘やめて……」

 虎緒に触れようとする。しかし途中で手を止める。

「レスっ…」

 レイマが呼ぼうとして、呼ばない。

「下手すぎだって虎緒…現代ではそんなの、伝わんないってば……」

「エフィ」

「もうそんな下手な死に方、いいから…早く起きてよ…早く戦わないとねぇ…?」

「エフィ」

「ねえ、ねえ虎緒っ…起きてよ、下手すぎ」

「エフィ、下手すぎて当たり前だから…っ」

 レイマがかがみ込んでいるエフィーの肩に手を置く。

 その手をエフィーが払いのけた。

「レイマは、虎緒ジョークを知らないから言えるんだよ、そんなとぼけたこと…」

 ポツリと呟いた。

 レイマは何も言わない。

 ただ、彼女の左手の甲に目を落とす。


 風が吹く。

 手の甲を隠していた布切れが風になびいて。見えてくる左手の甲には、何も無い。エフィーの白い肌があるだけで。少し血管が見える。

 何も無い。

 さっきまであった契みの欠片も。


「エフィー…」

 鈴が呼んだ。


「リンまで…ジョーク通じないの? まあそうだよね……いくら何でも下手すぎるもんね……」

「エフィー…聞いてくれよ」

「下手すぎてほんと、笑いが出ちゃう…?はは……」



「本当に死んでるんだから…下手クソもないだろうが……!」




 最もの事を鈴は言った。

 エフィーは固まる。

 レイマは、左手の甲から目を背けた。

「…うう」


 わあああ。


 弱い泣き声が響き渡る。しかしその泣き声は、心に響く。


 エフィーの、心からの悲しみだった。



 ただただエフィーは泣き続けた。


「………ツインファング」

 レイマが密かに呼ぶ。

 ラウラとレイレは瞬く間に輝くと、レイマの手に剣として収まった。


「許さない。お前を殺す」


 レイマは初華に向かってラウラを投げつけた。

『レイマ! 何をしている、落ち着け!』

 レイレがレイマの行動を見て、感じて叫ぶ。

『早くラウラを呼び戻せ!』

「………」

 レイマは何も言わない。

「は。血迷ったかい。斗喩、おいで」

 初華の言葉とともに斗喩も光り、初華の右手には近未来型の銃が収まる。

「ごめんね藍彌。ちょっと待って」

『わかりました』

 藍彌は少しだけ、悲しい声色をしていた。

 初華は藍彌をゆっくりとその場に置く。

 そして、斗喩を構える。

「やめろ…! ラウラを戻せ! レイマ!」

 鈴がレイマに掴みかかる。

 カシャッとレイレが落ちた。

「レイマ…?」

 鈴の手を弱々しく握るレイマ。


「……ぼく…レスっち守れてないのが悔しい」


 銃声が遠くから響いて来たと思うと、レイマが鈴にもたれかかるようにして倒れ込んだ。

「ラウラ……レイレ…!」

「レイマ…!」

 どろりと、血が。

 レイマが撃たれたのだった。

 幸い、レイマはラウラとレイレを名で呼んだ故、二人は武器の姿から解放され、ラウラとレイレは隣同士でレイマのそばに立っている。

 初華は迫ってくるラウラを殺そうなど思っていなかった。

 虎緒を殺した次に、レイマを殺す、と決めていたのだ。それは斗喩を呼んだ時から。

「次、斗喩おやすみ」

 斗喩をゆっくり置くと今度は藍彌を再び構えた。

「流石に兄貴を殺すなんて嫌だろう。だから藍彌では死霊を殺すからね」

『…ありがとう、ございます……』

 初華は弓矢、藍彌を構える。


 時雨を狙って。


「次はあいつだ」

 初華がウィンクをした。

「! 時雨逃げろ!」

「っ!」

 走り出す時雨。

「は、は、小さい遅い! そんなので逃がすわけない!」


 初華が手を離そうとした刹那―



「鬱陶しいのよ、お前」



 長い鉄の棒が藍彌を吹っ飛ばす。

 矢は衝撃で飛んでいく。

 しかし、現れた少女、メルの鉄の棒の所有者によって、素手で(手袋はしていた)止められる。

 そしてその矢は握りつぶされた。メルの握力恐るべし。

「メルりん…」

 レイマが微かに声を出す。

「全く、レイマ。なんて弱くなってしまったのね。後でミカエル様の元で集中治療なのよ、いい?」

「はは…怒らないでくれ…メルりん…」

 レイマは静かに目を閉じた。

「レイマ!」

「安心するのね、サスケリン。レイマは眠っているだけなのね。死んでなんかいないのね」

 メルは慌てる鈴に言った。

「さてと…。遅れてすみませんなのね。メルはどうやらここに来るまでになかなか迷ってしまって、溜場(たまりば)に突っ込んでしまったのね。それで、ちょっと片すのに時間を要しすぎたのね。反省なのね。だからすみませんなのね」

 メルが深々と頭を下げる。

「いやいや、メルりんが方向音痴なことくらい知ってたしさ」

 ラウラがにこにこしながら言った。

「ともかく、久しぶりですメルさん」

 レイレは構わず挨拶。

「そうね、久しぶり。ラウラレイレ」

 メルがラウラとレイレを見て少しだけ微笑むと、エフィーを見やる。

「…虎緒殿だったのね」

 早くも虎緒の死を察したメル。

 早足でエフィーの隣へ寄る。

「エフィレス…と言ったら怒るのかしら」

 メルがそうしてエフィーに話しかけた。

 エフィーはゆっくりと顔を上げてメルを見る。

「怒ります…今の私は何も出来ないけれど」

「それは失礼。エフィー」

 メルの小さな手はエフィーの頭に乗せられる。

「今は、落ち着いて。何も出来ないと自覚があるのならいいのね。戦いの妨げにならない所に自ら行きなさい。もうすぐあまてんが来るだろうし…」

 再び銃声が響く。

「あっ、メルりん!」

 ラウラのその言葉と同時に斗喩によっての弾丸はメルの人差し指と中指の間に挟まっていた。

 弾丸を受け止めたのだ。

「流石メルさん…」

 レイレが思わず声を上げる。

 斗喩も藍彌も無意味だと知った初華は驚愕する。

「ようやく分かったかしら。貴方の弱さ」

 メルはエフィーの頭から手を離すと大きな大きな鉄の棒を片手で持ちながら、初華に向かってそう言う。


「何者…?」


「メルは、貴方みたいなちょっと特殊だから強いとか思いこんじゃってる馬鹿が大嫌いなのよ。目障りなのよ。うざい、鬱陶しいのよ」

「は、は?」

「まあ、メルは気持ちがよくわかるゆえに言うけれど、貴方、契霊達との縁をすべて切りなさいな。今すぐ。さあ早く切りなさい、瞬殺してやるから」

「は、何言ってるの…私はまだ本気を50%も出していないよ」

「メルはまだ5%も本気を出していないのよ」

「っ!」

 実力の差はよく分かる。


「伊達に10年死霊として、2000年ミカエルの契霊としているわけじゃないのよ」


 メルが長い鉄の棒を持ったまま初華の目の前に瞬時に移動したかと思うと、その鉄の棒で初華を思いっきり叩いた。


「っが!」


 初華は吹っ飛んで行く。


「気絶程度の攻撃なのね。3%の本気だから」


 初華は吹っ飛んでいった。

 そして強く地面に叩きつけられる。

「う、うあ…」


 初華は静かに目を閉じた。


 迷路を創り上げた契霊達はいつの間にか、それがとけていた。

 つまり、風景は、いた場所は公園に戻っているわけだ。

 鈴達はブランコの周りに。そこから遠く離れた先に初華が倒れていて。斗喩も藍彌もいつの間にか元の姿に戻っていて。

 初華の周りには、2匹ずつの犬猫達が集まっていた。

ありがとうございました。


呆気なく、忍初華。散ったのか。的な(え?)

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