2
藍彌は吟だった。
「お前、契霊になったのかよ…!」
「よかったよおお、にいちゃああん!」
小さな身体で抱きついてきた。
小さくて、弱いのにどこか強い。
「無事で、無事でよかったよ、にいちゃあん」
泣いているのだろう。顔は見えないけれど。
周りは、初華までもが、何も口を出さなかった。
密かに感じ取れたのは『今のうちに話しておけよ』という、初華のおもい。
「ご、ごめんな。吟…いや、藍彌」
「今は吟でいいよ、というかそう呼んで、にいちゃん」
「うん、吟…」
「それで、なんで謝るの?」
「いや、その…」
言いにくいこと、というわけではないのだが。
どちらかというと言いたくないこと、である。
しかし、吟はなになに?と聞いてくる。
鈴は力強く、ぎゅ、と目をつむる。
「ご、ごめんな…あの時、お前は生きようとしてた、逃げようとしてたじゃん。でも俺って、無理とか言ってさ、諦めてた。生きることを、逃げることを」
誰も何も喋らない。
「そ、それなのに、俺が生きて、お前が死んで」
怖かった。
言い切った。
ゆっくりと、目を開ける。
「はは、そうだろうと思ってたし」
吟が笑い飛ばした。
「にいちゃん、『俺が生きてお前が死んで、きっと恨んでるんじゃあないのかッ』とか思ってると思ってたけど」
鈴のおもいが演劇ぽく、凄く感情が込められていたように聞こえる。
「別にそんなこと、思ってないよ、ばーか。勘違い、はっずかし〜ぃ」
う、うぜぇ。
小さな指をくねくねと鈴に向けて回しながら、吟はニヤニヤしながらぷぷぷーなんて笑っている。
「まあ、生きてよ。にいちゃん。せっかく生き残ったんだし。思う存分楽しめや」
吟が、小さな足で鈴の頭を蹴る。
ぽこり。全く痛くない。むしろ心地いいというか。マゾヒズムな意味は一切ない。
「ありがとう、吟」
鈴は静かに言った。
「ぁ?なんてぇ?なんか文句あんのかァおどれェ?ぁ?」
「………」
いつからそんな口になったんだおどれェ。あ?に迫力が全くないぞおどれェ。
「何でもねぇよ」
「あーっそ。まあいいや」
その後2人は少しして吹き出しあって笑いあった。
「はいはい、感動の再開は終わったかい」
初華の声が聞こえ始める。
全く、いいのか悪いのかわからないタイミングだ。まあ、今みたいな時間が永遠に続くわけがないのだから、ある意味終わらせてくれて、そんなにおもいに長いこと浸からせてくれなくて良かったのかもしれない。
「じゃあ、悪いけど藍彌は死霊側お願いしていいかな?」
藍彌は頷く。鈴も別に嫌だとは思わなかった。寂しいが。初華の判断が公平だと感じたからである。
仮に藍彌が初華にとって嫌なことを、兄の前で漏らしてしまうかもしれないから、であろう。
「じゃあ、斗喩、藍彌、よろしく。ルール違反したのものは、君達がぶち殺し★だよ。は、は、は」
怖ぇ…。
「じゃあ、迷路を思う存分、楽しんでね。迷い込み大歓迎なんだから。は、は、は、は、は、は、は、は。は、は、は、は、は!!!」
迷路がスタートした。
マゾヒズム、に不快を持ってしまった方がおられたら申し訳ありません。
ありがとうございました。
昨日のこの場面でフラグが立ってたんでしょうね。誰が、誰が長くなるなんて言ったんだ?いつから僕にそんなフラグ持たせたんだ?w




