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鈴、エフィー、レイマ、拍依以外は一般の人間には見えないわけで(牙櫻はただの変な顔のあるスーパーの袋)、無事、全員が電車に乗ることができ、そんな訳で連中は明知にやって来たのである。
「ほんとに小さい町だな」
レイマが辺りを見回して、感想を言う。
「町というか、村だよね〜」
ラウラがそう言うと、なにかに目を向ける。
「どうしたの?ラウラ」
レイレもその方を見た。
「ね、レイマ。私ね〜あれ欲しいな〜」
ラウラがレイマに言う。
その先には小さなドーナツ屋。美味しそうなドーナツ屋が沢山ある。
「ん?分かった、あれを取ってくればいいんだな、何個?」
「10くらい」
「わかった、行ってくるよ、仕方ないな」
「いやちょっと待て!」
窃盗をしかけているレイマを慌てて鈴が止める。
「盗るな盗るな…あれは買うものだ、盗るなんてよい子はしちゃいけません!」
「えー、でも欲しいなー、な〜リンリ〜ン?」
その後、ラウラの不思議な誘惑に負けて鈴は仕方なく10個のドーナツ、幸いにもバラエティパックがあったのでそれを625円で買ってくるハメになった。
意外と安い。
買ってくるとラウラは目を輝かせてありがとうリンリン!と言い、それらを美味しく嬉しそうに幸せそうに食べていた。
『ナビを開始しますが、よろしいですか?』
ハルが言ってくる。
「そうだな、この道から明知にある全学校を回るルートを頼む」
『かしこまりました!
それでは開始します!
計4件の学校を目的地とするルートを開始します』
ピピン♪という軽やかな音ともに『この先500m先、左折です』と流れる。
何だかんだで、とりあえず学校を回ることにしたのだ。
「凄いねぇ〜、賢いね、ハルるん」
ラウラが歩きながら言った。
「まあ、今の技術はすげーもんだからな」
前もこんなことを言った気がするが…。まあいいや。
そうするとピピン♪とまた音が流れ、『まもなく、左方向です』とアナウンスが入る。
曲がるともう目の前には学校があった。
「わお」
ちょっとびっくりしたぜ…と言いながら門の前に来る。
しかし、生徒はどこにも見当たらない。
やはり、夏休みなのだろうか。
「あの、何か本校に御用でしょうか?」
と、この校の教員であろう少し老いた、教師ベテランというような感じを漂わせる男性に声をかけられた。
そして、明らかに異質を漂わせるエフィーとレイマ。エフィーは吟の服を、レイマは小さくなって鈴が着れなくなった服を着ているのだがやはり髪色や顔立ちからか、ちらちらと気にしているようだ。
「えっと、私たちは怪しくないです…」
その目線を気にしたのかエフィーは焦りながら言う。
いやその発言逆に怪しいから…。
「あ、えっとですね…人探しをしていて…」
鈴がそんなエフィーを見て戸惑う男性にさらに焦った様子で咄嗟に口を出す。
「はあ、人探しですか?本校の生徒でしょうか?」
「え、いや…その、分からないんですけど…」
「分からない?それまた不思議なことで…?」
「ああ、いや、その………」
そうだ、名前も容姿もわからない。
そんな相手を探しているだなんて、不自然すぎる。
しかしここまで言ってしまうと「すみません、なんでもないです」なんて言えない。言ったところでさらに怪しまれるだけ。下手すれば通報とか?不審者で…それだけは避けたい。
「あー、んと…その……」
鈴は考えに考えまくった末、
「何だか普段の行動が変わった生徒さん…と言いますか…」
男性の表情が強ばった。
しまった、まずい発言をしてしまった。
そう思い、「すみません」と慌てて謝る。
「………とにかく、本校に用がないなら早く帰って頂けますか。本校は明日が終業式ですので、どうしても生徒を探したいというのなら明日の午前にでもいらしていただければ、それなりの対応はできると思いますので」
「は、はい………」
すみません、ともう一度謝る。しかし男性はそんなこと聞きもせず、颯爽にどこかへ去って行った。
〔け、けけけ、このガッコーにはあんまし近寄らねぇ方がいいんじゃねえのか?ちょっくら警戒心が高まりやがった〕
「はは、ほんとそうだ。悪いな」
仮に探し相手がこの学校だったらかなりやばいような気もするが、そうであってほしくないと願いながら、再びハルの指示のもと、次の学校へと向かうことにした。
「にしても、せめて名前が分かればいいんだがなぁ」
容姿が分かってでもいいのだが、やはり名前が一番特定できるものだし。
「エルに聞いたらどう?そろそろ、そこら辺の情報は掴んでいるかもしれないし」
レイマが言った。
エル、という呼び方から、レイマとミカエルはそれなりに親密な関係なんだろうか。
確かに、と、それに従い鈴は『TALK』を開き、通話を始める。
『もしもし、ミカエルだよん』
切りたくなった。
それから少しして
『ああ、すまない。今のは私ではない。私の契霊がふざけてしただけだ。本当にすまない』
と、少し早口で訂正された。
「ああよかった、仮に今のがミカエル様だったら俺は今後あなたと電話をしないと誓うところでした」
『は、それは困るな』
それでどうした?と。
「いやいや、そのですね。あのー、禁法の事です。レイマが、そろそろ名前くらい特定してるんじゃないかーって」
『レイマ?ああ、その場には今レイマがいるのか』
「そうですね、変わりましょうか?」
『いや、いい。それより名前のことだが』
もう少しで特定できそうだと。
ミカエルは伝える。
『というより、その辺りに私の一番の契霊を派遣させたのだが、来てはいないか?』
「え?」
もしかして、拍依のことだろうか、と思い拍依を見やる。目が合う。
一瞬、舌打ちが聞こえた気がしたが気のせいということにした。
『メル、という名の桃色の髪をした少女なのだが』
そんな奴はここにはいない。
「来てませんね」
『そうか』
結局、その場では名前が分からないまま、通話時間制限を超えてしまい、自動的にミカエルとの通話は切れてしまった。ケチなアプリである。
「それにしても、どうするかな」
一旦帰る、という選択もあるのだがそれだと相手が見つかるまで電車を利用しないといけないので鈴の残金が危なくなる。
野宿という手もあるがレイマと拍依が嫌そうな顔をしたのでやめておいた。ここで無理に野宿にしたら、2人からとんでもない攻撃が来そうだったからだ。
泊まることや帰りの電車賃も考えてそれなりの金額を持ってきてはいるのだが、ドーナツを買うという予想外な展開があったので今後先このような展開があるかもしれないと考えると、無闇に施設は使いたくない。
小さな村のくせに意外と宿泊施設は高かった。
「寝ずに探すか?」
しかし相手は学生。ゲーマーとかネット好きでもない限りは夜ふかしはしないだろうし。
それになにより、
「お前らは家、帰らなくていいのか」
お前らとは、当然、拍依と牙櫻である。
牙櫻は残ってもいいとは思うがもしもの時に拍依がいないといけないだろうし。
まあ、最初からワンセットみたいなもんだし。
〔け、俺様達は大丈夫だぜ?家に帰らないことはしょっちゅうだしな〕
凄い問題なことを聞いた気がするが触れないでおいた。
「じゃあ…とりあえず、寝ずに捜索を続けるってことでいいか」
という訳で、結局寝ずに探すことになった。
ありがとうございました。
書くネタがないので(笑)誤字脱字あれば報告お願いしますm(_ _)m




