3
!、?などの後の空白を付け足しました。2016/10/27
「無理だよ」
そんな鈴の後ろにはトラックが。
「あ……にいちゃ」
痛い。
全身が痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い!
俺、死ぬかも、ていうか死ぬ―
「おおう、ほら、やっぱり、かろうじてこの子は生きてた。ね? 私の言った通りでしょ」
声が聞こえた。
鈴の腕がなにかに触れた。
「っっっっ!!?」
とんでもない痛みが全身を駆け巡った。
しかし動けない。いや、動くと余計痛いからとりあえず我慢するしかない。
「あはは…ごめんなさい。わざとじゃないんだよ」
声の質からして声の主は幼い少女とみた。
「目、開けれます?」
聞かれた。
ゆっくりと目を開ける。
視界が真っ白になる。
だんだん形が見えてきた。
覗き込んでいる少女は―
「…………きゅう…ね…ちゃん」
九嶺恵翔だった。
鈴を覗き込んでいる恵翔。完全に無傷の幼い少女が、鈴の視界に在った。
「おはようございます、吟さんのお兄さん」
恵翔はにこやかに言った。
「……大丈夫なのか?きゅうねちゃん…」
「心配無用。私は見ての通りなぁーんにも傷がございません」
「………頭とか打ってない?」
「大丈夫ですよ?」
「……というか…もしかして……トラックに突っ込まれてない?」
「いえいえ、トラックが後ろからずどんとやってきましたよ」
「……だったらそんなに無事でいられるのが疑問だけど……」
「まあー、私は人外なものですから大丈夫なのです。それより、吟さんのお兄さん、コンニャク持っていませんか?私、コンニャクが大好物なの…あ、なのです」
「……なんて呑気な女の子だ」
恵翔は元気ハツラツだ。とても事故った人間……生物とは思えない。
「ああそうだ、今の現状を伝えておきますね」
恵翔は寝転がっている、否、倒れている鈴の横にちょこんと体操座りをした。
「まあ、まずは簡潔に。私達は事故にあいました」
そんなことは知っているでしょうが、と続ける。
「大型トラックの運転手はどうやら睡眠不足気味でしたようで、とても気持ちよく寝ていて。今日の私達みたいに秋子遊園地に行く予定であったたくさんのご家族達の車が渋滞しているこの場に、アクセル踏みっぱなしで突っ込んできました、というわけです。ちなみに、運転手さんはお亡くなりになられましたがね。イチコロ☆です。ちなみに、すっごい大損害をもたらした事故です。これ。ハイ。大事故に巻き込まれた選ばれたもの達だよ、私達、なんて言うのは冗談で。あ、今生きているのはあなた、吟さんのお兄さん&私ですよ。みんな見事に死んでしまいました。ああ、さらには」
「ちょっと待て」
「?」
話が遮られて恵翔少し不機嫌気味になった。
「……俺ときゅうねちゃん以外死んだ…?」
あっさりと、さり気なく告げられた事実を、受け止めれない。
「はい。死にました。あと、えんちゃんでいいですよ?」
「……吟も? 父さんも母さんも?」
「はい」
「朧も葵もおじさんもおばさんも?」
「はい」
「渋滞にあっていた人達も? ……トラックの運転手も?」
「はい。みーんな。さっき言ったのが事実ですよ」
「………」
ははは、と。
力のない笑いが、鈴から溢れた。
「…生きようとしたのを諦めた俺が生きて必死に逃げようとした奴らが死んだってか……」
ははは、と。
やはり、力のない笑いが溢れた。
コンクリートの道についた生々しい血や、体の部位などが、その真実を物語っている。
涙は溢れなかった。
「あ」
恵翔はあたりをキョロキョロを探し、何かを見つけたかと思うとそれを取りに行った。
傷だらけの画面になった鈴のスマホだった。
電源をつける。ついた。
『Rin様!
ご無事で何よりです!』
一切の感情がない音声がそう発した。
『これで緊急速報を終わります』
彼女のスイッチが切り替わった。
「失礼。そこのものも生きていまして、計3人ですか。いや、2人と1台? うーん……難しい」
恵翔は考え込むがすぐ考えるのをやめた。
「ま、そんな事実はどうだって良くてですね」
『Rin様
ただいまの時刻はAM.10:21です。
予定着時刻まで先の長い事ですね』
ハルはそんな状況も知らずハルの中の事実を伝える。
「……ちょっと黙って欲しいや」
恵翔はスマホの電源を落とした。
きったのではなく。落とした。
「…ふう。で、
このまま楽になって死んでしまうか、すこーし病院通いになって痛いの治してもらって生きるか、どっちがいい?」
「…………」
すぐには答えれなかった。
「早くしてほしいです。あなたはあと10分、いや5分足らずで死んでしまうので」
そしたら私の仕事が……と続きはボソボソしていて聞こえなかった。
「ちなみに、死んだらまあ死んで。生きたら不思議な能力に目覚めますよ」
「何その究極の二択……」
「まあ死んだらご家族に会えますかね、あ、生きても会えます」
「……」
恵翔は悩んでいる鈴をじっと見た。
「ああ、生きてみなさんに会ったら合わせる顔がないとでも思ってますか」
図星だった。
「まあ、死にたくはないと思うけどなぁ…」
恵翔は言う。
「……生きる」
鈴は言った。
「そう? 生きる?」
「…ああ……生きるさ」
「とんでもないことに巻き込まれても?」
「…この事故の痛みに比べたらマシだろう」
「それはどうだろうなぁ…まあいいや」
恵翔は立ち上がった。
「とりあえずじゃあまずは自己紹介だ」
口調が、なんか少し偉そうになった。
「私の名前は閻魔。あの閻魔大王だよ。一応。別にごっついおっさんじゃなくてがっかりだろうけど、見た目は完全にロリっ子なんだけどモノホン閻魔様だよ」
恵翔、いや閻魔はそう名乗った。
「…閻魔様って…こんなに可愛いんだな、というか、普通の子供だな」
しかし、今まで触れていなかったがツインテールの左側には上品そうな『THE☆和』というような感じの髪飾りがあった。
「そうでしょうそうでしょう。でもこれがホントの姿でね」
「……でもそんな地獄のおエライさんが現世に来ていいのか」
「はっはぁ。別に私は地獄の管理人じゃあないよ。ただ生前の罪を裁くだけの10人の中の有名な1人って訳でこんなになったのさ」
「へえ」
「ちなみに今は死霊達を保護するパトロールに出ていたところです」
「……遊園地で遊ぼうとしてなかったか?」
「いやいや、パトロールの一つであり……」
「最近戻ってこられないと思ったら……まさかお遊びしてたんじゃないでしょうね?」
鈴と閻魔以外の声が聞こえた。
閻魔はその声にびびった。
「閻魔大王様」
閻魔の後方を覗くと細い線の鬼の男がいた。
「鬼…」
鈴は生まれて初めてリアルで鬼に会った。
鬼いたんだな。
と思った。
「いやあはは……戻ってなかったかな? ごめんなさい…でもその分死霊はたっくさん保護いたしましたがな?」
「赤緋様がお怒りでしたよ」
「ひッぎゃぁぁぁぁぁ!!」
閻魔のみっともない姿を見てしまった。
……見ないふりをしておこう。
「…佐介鈴」
閻魔に名を呼ばれた。
「……なんだ」
「お前は今からいろいろと異様な目にあうものになる。だが逃げるな。恐れから逃げてはならんよ」
と。
儀式のようなことを言われた。
「は、はぁ…」
「返事は一回ッ」
「はいッ!?」
閻魔先生かよ。
閻魔はふう、と息を吐くと、鈴のおでこに指を当てた。
鈴は少しの痛みに顔をしかめた。
閻魔はぶつぶつと何かを呟いている。
顔はやっぱり可愛いなぁ。
ぶつぶつ、ぶつぶつと。
「どうか、どうかお願いします」
閻魔のその言葉と同時に再び視界が真っ白……そして真っ黒になった。
ありがとうございました。
僕は自転車通学なのですが、下校中に顔面に蝙蝠が飛んで来ました。命中しました。ヒット!
べちっと言ったらしいです。
ちなみに、去年も似たようなことがありました。
去年は羽が口にダイブしました。
今年は口元に正面衝突してきて腕の間を飛び回って逃げました。
来年はどうなるんでしょうか。楽しみです。(泣)