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白菊、陽日の柄で、鈴はひたすらプラムに反撃していた。
「っ、うっ、んうっ、あうっ!」
プラムが途中途中、堪えきれない声を上げる。
そして時折、もう殺して。
なんて目で鈴を見てくる。
嘘かもしれないけれど。鈴には殺すなんてできなかった。
殺人なんて。
だからずっと柄ばかりで攻撃。プラム相手ではいつまでも続くのだ。
「うっ……あっ!」
「いい加減ッ!倒れてくれや!」
「むっ…無駄ですわ…!」
「ハァ!?」
プラムがニヤニヤしながら言うのだ。
「私を…っ殺さない限りは」
殺す。
どんな事かなんて分からないけど。
妖怪だってあんな死に方。人間は…どんな死に方。
ついこないだ見たじゃないか。
父さん母さん吟。朧に葵。おじさんおばさん。
みんな目の前で死んでいたんだ。
死とこないだ向き合ったばかりじゃないか。
分かる。分からないけれど分かる。
「…俺には無理だ……」
「甘い」
いつの間にか鈴は攻撃をやめていた。それを狙って再びプラムの反撃開始。
でも鈴は抵抗しない。
ただただ滅多打ち。
また傷だらけに。
三叉槍の刃で、腕や足の皮膚が少しずつ切れていく。
そこから血が少しずつ。
『鈴様!』『鈴君!』
二人のそんな声も聞こえない。
『激しい衝撃です!
地震ですか?
避難をしてください!
避難場所のルートを案内しましょうか?』
ハルの、場違いな言動も聞こえない。
殺られ殺られ。
さっきまで自分はこんなことをしていたんだ、なんて考えて。
申し訳ない。
そんな気分になって。
死ぬのは嫌だ、死なれるのは嫌だ。
じゃあどうしたら。
ぼろぼろになった鈴は地面に叩きつけられる。
「リン!」
エフィーがぼろぼろの鈴に駆け寄る。
レイマがそれを、鈴を見て舌打ち。
「リン…リンッ」
エフィーが頭を揺すりながらひたすら呼びかける。
『鈴様、鈴様…!』
白菊からの声。
彼の耳には何も聞こえない。
血呪が発動したわけでもないが、しかし。
彼は何も聞こえていなかった。
「俺には無理」
と。
そして少ししてから鈴がエフィーの確認をする。
「なあ、エフィー」
「!、なに…?」
「えんちゃんは…殺人許してくれないよなぁ」
鈴は空を見つめて言った。
「リン…」
「くだらない」
レイマが口を挟む。
「お前は敵を殺すのに罪悪感をおぼえているのか?だったらそんなもの捨ててしまえ。必要ない。ぼく達には、そういう事が課せられているのだから」
あと、レスっちにそんなことされ続けてほんとまじムカつくし。
と、レイマは鈴を睨みながら吐き捨てる様に言ったのだ。
「…お前誰だよ……」
「お前みたいな弱っちいクズに教える程ぼくの名前は汚れてない」
レイマがツインファング、そう言うと黒髪と金髪の少女達が光始めて、どちらも同じ長さで同じモデル、色が少し違う剣になる。
その剣は、パーにしたレイマの両手におさまる。
「ふん。ぼくが倒してやる」
レイマが立ち上がり、双剣を構える。
「おい!ぼくが相手だ!」
ぼろぼろのプラムに向かってそう叫ぶ。
「まあ、選手交代ですか」
プラムはニヤニヤしたまま、レイマを見てため息をついた。
「ああそうだ。でもぼくはあんな弱っちいクズじゃない」
ぼくは強い、と。
跳躍。
一瞬にしてプラムの背後に回る。
「瞬殺してやるよ」
双剣をプラムの背中から貫いた。
悲鳴、いや声も出さずプラムは倒れていく。
「ね、瞬殺」
『有言実行』
『厳守ぅ~』
口々に言った。
「プラムッ……!」
「に、いさま…」
レチルが走ってきたかと思えば無様なプラムを見つけ、駆け寄った。
「プラム、プラム!」
レチルがプラムを抱きしめる。
「に…さま………わたくし…」
レチルはプラムのその弱々しい声を聞きたくないかのように更にきつく抱きしめた。
ぎゅっと。
「…ね、プラム。ガブリエル様の言ってたこと、しよう。ね?だから、頑張って」
「で、でも…そんな、こと…にいさまが…」
「いい、僕は大丈夫だから」
プラムは小さく頷くと、近くにあった三叉槍を掴む。
レイマはそれを見ると、三叉槍目がけて走り出す。
が、
「来るな」
レチルがプラムの前を立ちはだかる。
「…邪魔だ、よわむしのがき」
「うるさいっ」
レイマも言うて中学生くらいだ。ガキである。
「ぼくの邪魔をするな!」
レイマが跳躍。
「今だ!プラムッッッッ!!」
その叫びと共に。
レチルの胸からは、プラムの三叉槍の刃先が、血とともに見えた。
「あ、あああ、あああああアアアアアアアア!!!!!ニイサマァァァ…!」
三叉槍と共にレチルは倒れる。
瞬殺。
即死。
死。
「しまった」
レイマの酷く冷静で困惑した声。
そう、気付いてしまった。もう遅いけれども。
レチルは死んだ。
レチルという人間は死んだ。
あくまでレチルは人間だ。
それが死んだ。
つまりそれは。
「死霊になるってこと……!」
エフィーが口元を抑えて驚いた顔。
その顔を見てプラムはニヤリとした。
「ガブリエル様から教えてもらった究極技…これで私達は永遠に結ばれる…!」
プラムの傷が治っていく。
「兄様を傷つけたものなんていりませんわ」
プラムが自分の三叉槍、契霊を見て吐き捨てるように言う。
「まずは…あなたからですわ」
三叉槍を睨んでそう言う。
そしてプラムは、死んでしまいいつのまにか死霊になったレチルを見つける。
「ああっ、兄様!」
「プラム…!成功だね」
死霊になったレチルはプラムを抱きしめた。
「兄様…ああ、兄様…ごめんなさい…」
プラムは涙を流しながら抱きしめている力を強くした。
「プラム。僕はもう怖くない」
「分かりましたわ、兄様」
プラムがレチルから離れると、花マークを宙に描く。
そしてそれをレチルの頬につけた。
静かに、契約が行われた。
「これで、私達は契みあっていますわ…」
プラムは再びレチルに抱きついた。
そして。
「兄様…武器に、成れ」
ありがとうございました。




