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あれから無事平日は終え、土日と祝日の3連休となった。
特にすることがない鈴は自室でごろごろしながらスマホにようやく昨日、つまり金曜日に折正みすじに返されたイヤホンをつけて曲を聴いていた。
ハルに大きな声を出されないよう、静かに聴いていた。
「リン!」
「うわっ、びっくりした…」
エフィーが勢いよくドアを開ける。驚いた鈴はその反動でベッドに転がった。左耳のイヤホンが外れた。
片方だけじゃ気に入らないのでとりあえず両方外して電源を切った。
よく見ると本日のエフィーの格好は最初に出会った時のあのファンタジーっぽい格好である。(もうなんと説明すればいいのか分からない)それは、やはりエフィー専用だなぁ、という感じ。やっぱり可愛い。女神どこぞのかよ!
「なになに、どうした」
鈴が問う。
「レチルプラムを探しにパトロール行こう!」
「………」
え。
「最初に優花を探しに行った時はリンてば残念だったけど、今は優花も時雨もいるじゃない、もう怖くないよ!」
いつの間に呼び捨てに!?凄いなエフィー。フレンドリィッ。
「だから、よく現れる普通の妖怪達も倒しながらレチルプラムを探しに行くのよ」
「レチプラで略せばいいじゃねぇかよ…」
「あっ、ほんとだ。そうね」
以下、レチプラ。
「で、いやまあいいけど」
スマホも充電はそこそこあるし。
いざという時のハルとの会話は意外とよい。うん。
「じゃ、行きますか」
部屋着だったため、エフィーをとりあえず部屋の外に追い出してからそれなりの服を着て、ポケットにスマホを忍び込ませて部屋を出る。
エフィーが廊下で待っていてくれた。
一緒に生活をするのも慣れてきた。エフィーは優しいということが分かった。
下に一緒に降りると優花、時雨、虎緒がいた。
「鈴さん、エフィーに何か変なことしてませんか」
「してねぇよ」
相変わらずの虎緒。
「用意は大丈夫みたいね。じゃあ行きましょう!」
「来い!白菊!陰陽日月!」
複数の妖怪相手に鈴は2つを呼ぶ。
眩い光とともに鈴の手に2つはあった。
「おう」
白菊を陰陽日月の刀、つまり陰月を持つ右手で陰月と一緒に持ち、左手には手裏剣、陽日を構える。
「見た目は凄いかっこいいよ、リン」
エフィーが言う。
「どうせなら戦う姿がかっこいいって言ってほしかったなー」
鈴が複数の妖怪に対して陽日を投げる。
鎖がジャラジャラと伸びると同時に妖怪もズタズタと斬られていく。
「ほーっ、流石だぜ、陽日」
鎖を撫でた。
『りんきゅっ!?くすぐったいよぉ』
ムカつくけど可愛い。
鈴と同い歳だけど可愛い。
「にしても陰陽日月ってずるいよな、双子でもないのに陰月と陽日があるんだぜ」
『優れているからなんですよ!』
白菊からそう声が聞こえる。
「その分クセも強いけどな、ははっ」
なんて笑っている間に陽日が戻ってくる。
パシッとそれを左手で受け止めた。
「これにも慣れてきたぜ」
まだ使ったの2回目だけどね。
まだうようよしている妖怪に対して今度は一気に近づき、陰月で斬っていく。
斬っていく度にハラハラと、黒いものが散っていく。それに密かに罪悪感を持ちながらも鈴は最後の一体の目の前に。
「さてと…ラストワンは―」
白菊ッ!と。
白菊でトドメを刺した。
黒いもの散っていく。
「うん、俺結構かっこいいんじゃないのかな」
『ゲームのキャラクターのような振る舞いでしたね!
何かのゲームのコスプレですか?』
ハルが聞いてきてくれた。
なにかの衝撃で揺れたと同時にポケットの中のどこかに当たってが電源が付いたらしい。
「コスプレじゃない……リアルさ」
『すみません!
よく分かりません…』
「クッ…」
たまにおかしなイントネーションが入るハルにそう言われるのはなかなか辛い。
「リン!なんだか歴戦の猛者みたいだったよ」
エフィーが絶句丸を手に鈴の近くに来て言う。
「はは、ありがとう。俺、それなりに強くなったと思うぜ」
「短期間なのにね、凄いと思う」
『最初が酷かったんでしょう。鬼ごっこ』
絶句丸はいらんことをよく言う。全く!
「ウワアアアアッ!!」
と。
悲鳴が聞こえた。
鈴もエフィーも聞こえた方を探す。
「あっ…あそこ」
エフィーが言う。
「へっ、のんびりしている暇はないってか」
鈴は吐き捨てるように言う。
少しカッコつけたかもしれない。
2人から見えるものはやっぱり大きな妖怪が死霊であろう幼い少年を掴んでいる様子。
今にでも食いそう。
「行こうリン!」
エフィーは跳躍。
鈴はそんなこと出来るわけないので陸から走って行く。
ふと鈴は思う。
あの死霊、どうなるんだろう。と。
俺かエフィーと契むのだろうか。でもそれ即ち会う死霊全員と契むという事だからキリがない作業。
それとも、妖怪に食われるのか。
そもそも、保護ってどうするんだろう、と。
そんなことを1人で考えているうちに妖怪の前に来た。
エフィーは既に絶句丸で切り刻んでいた。
「あらぁ…早いこと」
鈴が苦笑しながらも、陰陽日月の陽日で支援を始める。
まあ少しして、エフィーがトドメを刺して。
妖怪は散りゆく。
同時に落ちてくる死霊の幼い少年を
「リンッ!!」
「えっ俺!?」
『前回の検索から
お姫様抱っこはいかかでしょうか?』
「いやもうそれはいいや!!」
鈴が受け止めた。
ふぇっふぇっ、と少年は泣いていた。
「ふう…」
「あ、ありがとう」
落ち着いた少年はお礼を言う。
「いえいえ」
エフィーは少年に視線を合わせて笑顔で返す。
「なあ、エフィー」
「ん?」
「こいつ、この後どうするんだ?」
「どうするって?」
「いや、契霊とかにするのか?」
「え?しないよ」
「じゃあ、どうやって転生…というか保護させるんだ」
「それはね」
本当はパトロールを待っていたいところだけれど、と。
エフィーはポケットみたいな所から小さな笛を出す。
「それ何?」
「これはね、『呼笛』って言うの。これを吹いて、神使様を呼ぶのよ」
そう言って。
ヒィィィィィ――――――
と。
音を鳴らす。
「この笛の音は妖怪は嫌がり、寄ってこないのです」
いつの間にか絶句丸から戻っていた虎緒が説明。
ヒィィィィィ――――――
息をして再び息を入れる。
心地よい音だった。
「ハイハイ、ありがとね」
そんな声と、パサパサという擬音が聞こえた。
その方を見ると、小さな妖精のような―
「…烏?」
妖精ではなかった。烏だった。
「これはこれは、熊野三山のところの」
虎緒が言う。
エフィーが虎緒に何か言うと、虎緒の体が光に包まれ、出てきたのは
「あ?え?」
絶句丸ではない。
人間。
服装や髪型は虎緒だ。
「誰?」
「やれやれ」
虎緒です。と。
「まじかよ」
幼い少年より少し背の高い少年の姿の虎緒。
「一時的に、元の姿にしているのよ」
エフィーが言う。
「契霊ではない時の姿」
虎緒が言う。
人間型、というか少年の虎緒をはじめて見る。
虎緒だなあと思わせるところも多々あるのだが、やはりチビ虎緒で慣れているので、新鮮である。
「おお、虎緒殿、久しいね」
神使の烏はパタパタと羽ばたかせながら言う。
「はい、お久しぶりです」
虎緒はお辞儀をした。
「うんうん、で、その子を連れていけばいいのかね」
「はい」
「うん、わかったよ」
烏が幼い少年の肩に触れた。
刹那、少年は光の球体に包まれた。
「ありがとね、虎緒殿」
「こちらこそ、大変有難い」
「うんうん、いいの、これが私の仕事さ」
烏はじゃね、と言うとパタパタと空へ飛んでいく。
同時に、光の球体も連れていかれる。中から少年が何かを言いながら手を振ってくれた。
エフィーも手を振る。虎緒は頭を下げ、そのままだった。
烏と球体は見えなくなった。
「よし、虎緒、ありがとう」
「なんのなんの」
再び虎緒の体は光に包まれて、気がつけばチビ虎緒に戻っていた。
「………何だったんだ?あれ」
鈴が聞いた。
「死霊を保護したのよ」
「ああ」
すとん、と納得した。
一緒に連れていくんだなぁ、と。
「じゃあ、妖怪パトロール再開ね」
ありがとうございました。
レチプラ。。




