7
「鈴さんは、静かに契むことができないんですかなり全く」
「はあっ…うるせーや、今俺疲れてるから……ちょっと呼吸整えさせてや」
荒い息を吸い吐きしながら鈴は言う。
「ははっ、時楽木がちっさくなってるし」
鈴が笑う。
見ると、あらせは、いや時雨が小さくなっていた。
当たり前なんだけどねー。
「よかった、契めて」
鈴が自分の右鎖骨より少し下を見る。
篆書体ではないようだが、何やらやけにかっこいい『時』の字が契まれていた。
「よろしく、しぐれん」
早速あだ名呼び。
「…鈴君。僕に何をしたの?」
時雨が問うた。
「お前に俺の名を契んだだけだぜ」
「……ちょっと分からない」
「はっ、まあいいさ。こまけーことはエフィーとかが説明してくれる」
「自らが説明する、という考えはないのですなぁ」
「俺が説明出来るわけねーじゃん、まだ俺この世界になって2日しか経ってないわけだし」
まあ、いいや。と、鈴は体制を整えた。
「とりあえず、そこらの妖怪倒そーぜ」
鈴がなんか妙にキモカッコイイポーズをとる。
虎緒は呆れるようにして、スマホを置いた。
『懐中電灯アプリを閉じます!』
ハルのその言葉と同時に眩しい光は消えていった。
「あと数秒で妖怪達は動き出しますぞ。今のうちに倒せるだけ倒しておしまいなさい」
「りょーうかいっ」
鈴が息を大きく吸う。
「武器に成れ!」
今度は覚えていたよ。台詞。
小さな時雨の体が光に包まれる。
そして、鈴の手に
なんかやたら大きなシルエット。
「おもたっ」
せっかくのキモカッコイイポーズの腕は重さに耐え切れず、地面に着いた。
「いやぁ、重いわこれ」
時雨の成った武器は三日月に似た形の刀と円形の絵に描いた太陽のように刃物が周りについている大きい手裏剣が鎖で繋がっている。
「ほう、この鎖、伸びるんだな」
鈴がいろいろ試す。
『や…ちょっとくすぐったい』
…………。
よし、なんか時雨にむかついた時には鎖をいじってやろう。
「ま、要するにあれだな。この丸い刃物だらけの手裏剣で遠距離、刀で近距離ってわけか。ふうん。便利じゃん。やるなぁ、しぐらん」
『そんなスズランみたいな…』
「間違えた、しぐれん」
というか、いつから時雨はこんなに平常心に戻ったのだろうか。
と、同時に、何体かの妖怪がもぞりと動きだした。
「お?そろそろねぇ」
鈴が時雨を構える。
「あ、お前なんか太陽と月みたいな形だから『陰陽日月』って名前にするな」
「花の名前じゃないのですねぇ」
「なんか、そんな感じじゃね?」
『……クサイ』
「なにが!!?」
またもぞもぞと動き始めた。
「おおっと脱線……今度こそ、行くぜ!」
時雨改めて陰陽日月を構える。
「…俺さ、無双ゲームとかしてて、こういう鎖で伸びまくる武器とか扱いたかったんだー夢、叶うわ」
鈴がニコニコしながら言った。
「だから、ゲームのキャラを真似してお前を扱ってやるぜ。所謂『模写修行』ってやつだ!」
陰陽日月の手裏剣を、前方へ回転させながら投げる。
鎖がジャラジャラと音を立てながら伸びてゆく。
近くの妖怪が手裏剣でどんどん斬られていく。
「ひょおー!楽しい!」
鈴は叫びながら手裏剣を目で追う。
『手裏剣返るよ、鈴君』
と同時に手裏剣が鈴の方向へ向かってきた。
「持ち手の所を俺の正面にしてくれな?」
『うん』
鈴が左手を前に出す。
周りながらの手裏剣は見事、左手に収まった。
「うおーう。かっくいー」
鈴はまたもアゲアゲになって言う。
「凄いぜ時雨!お前結構強いじゃん」
『へへ…』
「ま、あと少しで十分休憩も終わるし、ちゃっちゃと片付けさせてもらおうや!!」
手裏剣で遠くの妖怪を倒し、近くや後ろに来た妖怪は刀で倒す。
その繰り返しだった。
虎緒曰く、特別に強い妖怪はいないらしく、雑魚ばかりだと言うのでそこまで苦にならずに倒せる。
「あと1匹ぃ!」
最後の1体になった。
鈴は陰陽日月の手裏剣と刀を両手に持ち、腕をクロスにさせて構えた。
「必殺……――――」
鈴は呟くと妖怪へと走り出す。
「―――の名前はまだ未定ッッ!!!!」
クロスされた腕を妖怪の目の前で空気諸共斬るようにして攻撃。
なんかかっこいい。
必殺の名前はまだ未定でなかったらもっと。
「必殺を言うなら決めて言えばいいはずなのですがな」
虎緒は呆れて言った。
妖怪はただの1体すらいなくなる。
「はは、片したな」
鈴は辺りを見る。
あれだけ暴れたのに、周囲は傷一つなかった。
不思議だ、と思いつつも陰陽日月を見る。
「『時』」
そう呼ぶと、陰陽日月は光りに包まれ、時雨が出てくる。
「お疲れ、しぐれん」
「それ、もう公式なんだね」
「可愛いじゃん、しぐれんって」
「いやまあそうだけれども」
時雨は苦笑いをしながら言う。
「で、時雨。お前、恨みとかあんの?」
時雨は首を振る。
「いいよ。結構あっさり受け止めれた。僕は馬鹿だったね」
窓から見える外を眺める。
「新世さんに…僕の妹に傷なんてつけれないもの」
「そら、よかったな」
「うん」
時雨の笑みが、輝いて見えた。
キーンコーンカーンコーン―
「げ、チャイム…」
「遅刻だね」
「叱られますな」
『授業ですね!
電源を落としますね!』
「ウワアー!」
スマホをポケットにしまい、虎緒と時雨もポケットにしまい、急いで教室に向かった。
ありがとうございました。




