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「転校生の名前はこうだ」
黒板には縦で『時楽木新世』と書かれる。
「ナニコレ?」「なんて読むん?」「読めねぇし」「ハーフ?」「それは違うしょ!」などとみんな口々に言う。
へへっ、俺は読めるぜ。なんて鈴は得意気に思っていた。
「じゃー、入ってもらおうか。今来たばっかりらし―」
「遅れてすみませんっ!」
同時に、見覚えのない生徒が教室に入ってきた。
「いやっ、ほんと!ごめんなさい!ふわあああ初日遅刻なんて!」
その生徒は肩くらいまで伸びている焦げ茶の髪の毛。くりくりとした目。
そして何より、スカート。
スカート…?
「ああえっと、せ、席はどこですかねぇっ」
いつから性別転換したのか分からない。いや、そもそも鈴の知っている時楽木なのか分からないが時楽木は空いている席を見つけて座った。
「彼女が、時楽木新世さんだ」
彼女。
しぐらぎあらよ。
先生はそう言った。
やはり違う。鈴が知っている時楽木は『あらせ』だ。
つまり、別人。
名前似すぎだろ!
そう思っていた。
「鈴さん。危ないです」
虎緒が話しかけてくる。
「は?危ないってなんだ?」
咄嗟に声が出た。
周りの視線が刺さる。
「……ごめんなさい」
鈴は俯く。虎緒話しかけんなよぉ…。
なんて呑気に考えている場合ではないようだ。
「私の話をよくお聞きなさい。ああ、『はい』なら一回、『いいえ』なら二回、机を指で叩いてください」
鈴は虎緒が真剣な表情で言うのを見て何かヤバイ、と察し、トン、と一回机を指で叩く。
「よろしい。それでは。まず、あの時楽木新世。彼は死霊です」
……。
「時楽木新世は生きています。ここまでは理解しました?」
トン。
「よろしい。では、次に時楽木新世と時楽木新世、この方々の関係についてです。男はあらせ、女はあらよで区別します」
トン。
「あらせは実は数十年前にこの学校に転校するはずだった日に死んでいるのです。事故で」
…トン。
「時楽木家の長男であったあらせは死んでからはずっと迷っているのです。この町を」
……。
「そして、昨日あなたに会えました。いえ、話しかけられました。それにより『認識』をしました。自分は生きている。と。本来死霊ではそんな事許されません。自分が生きていると誤っての認識はいけないことです」
…。
「あなたは誤って認識させたのです。全く、嫌な人ですな。はっはっはー。まあ、そんなことはどうでもいいのです。あなたは彼を成仏させてあげなければなりません。というか、まあ倒すんです。死霊を倒して、委員会に保護してもらえば、ね」
トン。
「あなたには、これが彼との話し合ってわかりあえるような事柄だと思いますか」
…トン。
「ははは、全く。自分と全く同名の人が本物の転校生で、自分は人間には見られていないのですよ?認識されなくて。自分も彼女の名前なのに。読みが違うだけ…彼女は彼はこう思っているはずです」
……。
「『僕の名前、とりやがって』なんてね」
「それでも。彼と話し合えると思います?」
………………………トントン。
「よろしい。では、戦いなさい。戦うべきなのですから」
「よろしくお願いします」
転校生の紹介が終わった。
「時楽木!時楽木はどこだ!」
十分休憩のときに学校中を探し回る。当然、『あらせ』の方を。
名前をとられてる、は間違い。彼の親は名前を失っているのだろうから。
それを伝えてやると。
その意志の元、彼は時楽木を探す。
後ろ姿を発見した。
「しっ、時楽木!」
あらせは微笑みながらの方を振り向いた。
「やあ。鈴君」
「探したぞ…時楽木。悪かった―」
「ウ ソ ツ キ」
ありがとうございました。
みすじや広谷蛾や天神さんはそのうちバシバシ出てきます(予定)




