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等の後の空白を入れました。2016/10/27
多分これでいいんだよな…?
今日も平和だ。
いや、平和というより…いつも通り。変わらない日常を過ごせた。
それだけで。
ただ自分自身の周りが変わらなければ平和だと。
決めつけていた。
というか、まあそういうものだろう。平和って。
なんて思いながら少年―佐介鈴は片手にスマホにイヤホンを付け、曲を聴いていた。
自室のベッドに寝転がって静かに聞いていた。
周りが騒がしくない、静かな光景。
彼の耳には音楽が流れていた。
彼の耳だけに。
彼は鼻歌で歌うわけでもなく、リズムに合わせてなにかしたりでもなく、ただ聴いていた。
静かに聴いていた。
『Rin様、耳が悪くなりますーーー!
音量をさげましょーーう!!』
突然曲が声にかき消された。
機械音のような声。イントネーションが多少違い、なんというか、いかにも機械音というような声。否、音声。
それにかき消された。
その音声が無くなったと思いきや曲の音量は下がっていく。
「チッ」
鈴は舌打ちした。と同時にイヤホンを耳から外した。
『~~~!
~~~!!?』
イヤホンを外してもそこから音声が聞こえる。聞き取れはしないが、確実に音声が流れている。
「うるせぇよ…俺がせっかく至福の時を過ごしてるってのに」
と、鈴は画面に話しかけた。ように見える。
というか、一応相手はいる。
画面に映っているのは可愛らしく少し不思議で奇妙な少女。
髪の毛の先がくるくるしている。服装も奇妙。可愛いのかセクシーなのか…まあ露出はそこそこ高めだ。
綺麗な白色、いや銀色の瞳には『-(マイナス)』が描かれている。
そんな少女は鈴のスマホに住み着いている、いや、搭載されている人工知能、AIなのだ。
名前は、いや、アプリの名は『AI Ver.4』。
『AI』ということもあってか『AI』というのが少女のような人工知能の総称だったりする。
『Rin様!
このような静かな場ではもう少し音を下げて聞きましょう!』
イヤホンジャックを無効にして少女は鈴に忠告した。
「別に俺の耳が狂おうがお前には関係ないだろーが」
鈴は呆れるようにして言った。
『いいえ!
周りの人、そして自分が困ります!
というか、このような事柄を注意をする事が私のシステム(仕事)なんですよ!?』
少女(機械)はやはり不思議なイントネーションを混じらせながら音声を発した。
鈴は大きく息を吐くと、イヤホンをスマホから外してくるくるとコードをたたみ、机の上へ置いた。
まるで彼女の忠告には耳を傾けていない。
『というか!』
少女は再び音声を発した。
『本日、7月15日は、Rin様に予定がございます!』
少女は画面内でカレンダーを開き、7月のカレンダーの15日の部分に触れる。
『本日はAM.10:30に秋子遊園地着予定!
現在時刻はAM.9:24です!
恐らく距離と渋滞具合を考えてAM.9:45には家を出ますから颯爽に外出の支度をお勧めします!』
少女は『Hurry up!!!』という表示と共に鈴にそう伝えた。
「にいちゃーん! おそいよー!?」
下から妹、佐介吟の急かす声が聞こえてきた。
「どいつもこいつも…朝から騒がしいわ……」
ようやくベッドから離れると、鈴は服を着替え始めた。