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本日、7月16日(月)。
朝、エフィーと虎緒と優花を家に残して鈴は1人で学校に、スマホにイヤホンをさして曲を聴きながら向かっていた、
ら。
「やーあ」
と、後ろから声をかけられた。
無視した。
「無視するなんて酷いなぁ、佐介くん」
と。
後ろから腕を腰に巻かれる。
背中には2つの大きく柔らかいものが優しく当たっている。
「…うぜえ」
鈴は後ろの女子生徒を振り払う。
「ははっ、ひどーい」
うるせえ。
俺の優雅な時間を邪魔するな。
と思い、再び歩き始める。
「相変わらず。変わってないな、佐介くん」
今度は前にやって来る。
「ねーえ、お話しましょうってばさ」
黒髪ボブに眼鏡をかけた女子生徒―折正みすじ、が鈴のイヤホンをとった。
とっさに鈴は舌打ちをする。
「うぜーって!調子乗んな」
「ははは、かっかかっかしないの、佐介くん。カルシウム不足なのかな?牛乳飲んでる?」
折正が笑う。
見た目はつり目美人、できるオフィスレデイと言ったところなのだが、こいつと来たらうるさい。
そして微笑みは魔女。
いや悪魔!
悪魔が微笑んだぜ。
「怒らないでよぉ、佐介くん。私はあくまで委員長としてのお仕事してるまでなのさ」
このイヤホンは学校には必要ありませんよーっと。
デビルスマイルをかましながら言ってくる。
「ほんとうぜえ、消えろ」
「もーお、そんなこと言わないの」
鈴は折正と嫌な思い出があるのだ。だから関わりたくない。
「学級委員の言うこと、ちゃんと聞きなさい!」
「うぜえってば。不良委員長うぜえ」
そう、折正は不良。
服装はすごーくきっちりしているが基本不登校なのだ。
実はまだ夏休み前の一学期、折正は一学期の出席日数はテストを除いてわずか4日目である。むちゃくちゃだ。
そのくせ頭がめちゃくちゃいい。テストでは絶対学年トップだ。
そんな理由で鈴のクラス、3-2の学級委員に選ばれたというわけで。
「もう!名前で呼んでよ!みすじちゃんってさ!」
私、佐介くんのこと大好きなんだから!と、平然と言ってくる。
「うぜえ、うぜえうぜえうぜえうぜえうぜえうぜえうぜえうぜえうぜえぇぇぇー」
鈴は走り始める。
足に自信はあるんだぜ。
ちょっと鞄邪魔だけど。
「あーっ待ってよ!イヤホンいらないの!?」
折正は右肩にかけていた鞄をかけ直して、後を追っていく。
ああーもう。
付いてくんじゃねえよクソ委員!!!
なんとか教室、3-2に着いた。
「はは、顔めっちゃ疲れてる、佐介まじうけるわ」
席につくと自分の席の後ろの男子生徒、広谷峨修樹が鈴を見て笑いながらそう言う。
「うるせーわ」
それから数分後に折正が来る。
「いんちょお!久しぶり〜!」
クラス1の天然少女こと春颯代咲が折正を見て叫ぶ。
「久しぶりー」
デビルスマイルをしながらも返す折正。
全く顔も見たくねぇぜ。
そう思い、席から離れて教室から出た。
ちゃっかり着いたのはトイレで、何となくそこに入る。
「あーあ…学校ってほんと、なんも変わんねぇわな」
一人で呟き、ポケットに手を突っ込む。
「いたいっ」
声がした。
まさかー、と思いポケットをのぞき込む。
そこには
「痛いですなぁ」
「トラォォォォォォォォ!!?」
お前かァァァァァァァァ!!!!
優花じゃないのかァァァァァァァァ!!!
トラォォォォォォォォ!!!
「全く。契霊無しで外に出るなんて、自らしに進むようなものですぞ?」
「いやッッでも普通に考えてお前じゃなくて優花じゃないか!?」
「性別の都合上、と言いますか」
「そっかお前男かあああああああ!」
こいつはショタだったぜ…。
昨日、あの後虎緒により性別で寝室を分けよう、という話になった。
鈴的に自身は一人で寝れる!と、思っていたら虎緒と一緒になることになって。
結局男組の鈴と虎緒は鈴の部屋で、女組のエフィーと優花が元吟の部屋(エフィーの部屋になるであろう場)で寝ることになったのだ。
「でも…俺はお前とは契んでないんだぜ?仮に妖怪とか襲ってきても戦えねえぞ?」
「そうですね」
「えっまじで!?洒落で言ったつもりだったぜ?俺でも『絶叫丸ッ』て言えば実は剣になって使えるのかと思ってたんだけど」
「まあ、絶叫丸は絶対使えやしないでしょうけどね!」
「絶句丸だったな!すまん!」
「はいはい」
と、会話は終わる。
少しして、鈴が口を開く。
「…で?妖怪とか出たらどうするんだ」
「……考えておりませぬ」
「クソガキ!やっぱり優花が来るべきだったろ!?」
あはははー終わったぜ。
やべー死ぬかもしれない。
あ、でももしかしたら通りすがりの閻魔様が助けてくれるかもしれないし。
襲われたらで考えよう。
「とりあえず、静かにしてろよ?」
虎緒にきつく言う。
「しときますけど、私の姿や声は、普通の人には見えないし聞こえないしですよ?」
「い、ち、お、う、だ!」
「わかりましたよ…」
ただでさえ、ハルと会話しているだけなのに笑われるのだ。
今度は見えないやつと会話してるーなんてなったら死ぬ。
ため息をついて、トイレから出た。
「ふふふふふー、やっぱりここねぇ」
「うがっ」
折正が、まさかの男子トイレの前で待ち伏せしていた。
ほんとうざいなこいつ…!
「ねえねえ、さっきトイレの中から声が佐介くんの声がしたの。もしかして電話?」
くそっ!聞こえていたなんて!
なんとか誤魔化そうと理由を考える。
「あー………そう、電話」
それしかないよなぁ……。
「そうなの〜すごい怒鳴ってたけど、大変なんだねぇ」
「ガアアアアアアアアアアッッッ」
聞こえていたのか!(2回目)
クソォォォ!
完全に
一人喋りキモww
じゃねえか!!!
ぎゃああああああああああ!朝からもうやだ!!帰りたい!!!
「で、ねえ、誰との会話なの?誰誰?」
「お前には関係ねぇだろ」
「えー?委員長として気になるなぁ〜?ま、さ、か、カノジョさん?」
「それはない」
断言しよう。
いろんな意味で断言できる。
それはないぜ、クソ折正。
「えー?じゃ誰ぇ〜?妹ちゃん?」
妹ねぇ。
「違うな」
あっさり否定できる。
絶対にできるのだ。
「ええ?だれ〜?」
しつこい。
「…お前の知らない人」
「ふうん」
と、会話が終わった雰囲気、というか終わったので早足にその場から去る。
と、手を掴まれる。
「くっそ、お前ほんとうざいってば」
「なんか嫌なことあった顔してるよ、佐介くん」
「ッ…」
こいつほんとこういう感は凄い。
あっさり答えたはずなのに。
不良のクセに。
さすが委員長、と言うべきだろうか。
「…何でもねーよ」
握られた手を振り払う。
今度は普通に歩いて、教室に戻る。
「佐介くん…」
折正は、その場で鈴の後ろ姿を見ながら呟いた。
ありがとうございました、
書き溜めって、なんて便利なんだ!って思います。




