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3.

 ―よかった…。

 やっぱり心配になって、二人の様子を見に来てしまった。だが、それも余計だったようだ。二人は楽しそうに、昔通り話をしていた。

 こんな作戦で成功するのか不安であったが、上手くいったようで安心した。

 走ってようやく着いたおかげで、息がまだ上がっていた。呼吸を整えながら、西村は塀から覗いて、彼らを見ていた。

「よう、西村」

「ふぇあ!?」

 突然、肩を叩かれて変な声が出る。急いで振り向くと、そこには見慣れた三人の顔があった。

「中田君!?…なんで玲奈と美帆がいるの?」

 美帆がいるのはまだ理解できる。だが、どうしてこの二人がこの場にいるのかが不思議に思えた。

 南口と美帆は、微笑みながらこちらに手を振っていた。

「んあ?知らねぇのか?こいつら、従姉妹いとこどうしだぜ?」

「…えぇーーー!?」

 当然のように中田が言う。衝撃の事実に、思わず西村は叫んでしまった。それと同時に、ハッとして口を咄嗟に抑える。

「あれ?美帆。陽子に言ってなかったの?」

 不思議そうに南口が、隣に立つ美帆に問う。

「あはは、ごめんねぇ。ちょっと楽しくなっちゃってさ。どのくらいバレないでいられるかって、ずっと内緒にしちゃってた」

「もう、美帆ったら。昔から変わらないね」

 楽しそうに二人が話す。言われてみれば、口元や目元が若干、似ていなくもないかもしれない。それに二人とも、『可愛い』より『美しい』が似合う女性だ。

「酷いよ美帆ぉ!どうして言ってくれなかったの!?」

「だって、聞かれなかったから」

「知らないんだもん、聞くも何もないよぉ!」

「あ、そうだね」

 美帆が肩を震わせて笑った。

「もお…中田君は、美帆の事知ってたの?」

「ああ?知ってたぜ。といっても、この間知り合ったばっかりだけどな」

「そっか…。ん、それっていつ!?」

 思い出した西村は、中田に顔を近づけて問うた。

「あ!?ええっと…先月のバレンタイン前くらい…かな?」

「…美帆ぉ!」

 それを聞いた途端、すぐさま美帆に詰め寄る。彼女は、何が何だか分からないようで、口を開いてこちらを見ていた。

「それを知ってたら、私はわざわざあんな奴と一緒に中田君の連絡先調べる必要なかったのに!すっごく苦労したんだよ!?時間もかかったし、肩とか腰も痛くなっちゃったし!」

「え、え、えぇ?ちょっと待って、何の話?それは私分からないよっ!」

「中田君の連絡先を探した話だよぉ!」

「ああ、あの時のか。そういや、言われてみればそうなるな」

「…美帆?」

 中田、南口も続いて薄い目をして彼女を見た。流石の彼女は観念したようで、俯いてしまった。そういえば、こうして悲しむ彼女を見るのは初めてだ。

「うぅ…ごめんなさい。あんまり遊び過ぎはよくないよね」

 バツが悪そうに、彼女は謝った。普段から人に悪くすることがほとんどないせいか、彼女は既に泣きそうだった。

「ちょっと…?そ、そんなに泣くまでしなくても。そこまで怒っては無いよ?一応、結果的に中田君とは会えたし」

「あ、そう?よかったぁ」

 パァッと表情を明るくさせると、いつもの調子で美帆が言った。

 ―こいつ…やりおる。

 西村は心底彼女を呪った。

「…それで?どうして三人がここにいるの?」

 話の方向性のズレを修正する。元々は、一番それが知りたかったのだ。

「んー?いや、陽子のことだから、きっと様子を見に来てるんだろうなぁって思って。どうせだし、二人も心配してるだろうなぁって思って、呼んできちゃった」

「呼ばれましたぁ」

 美帆に続けて中田が言う。

 ―新婚夫婦か、あなたたちは。

「ふぅん。そう。…っていうか!二人は!?」

 思い出したかのように西村は塀の奥を覗いた。そこには、もぬけの殻となっていた公園の景色が、ただただ広がっていた。

「…行っちゃったじゃん!心配だったから、ある程度まで追いかけようと思ってたのに!」

「え、陽子。流石にそこまでしなくてもいいんじゃない?」

 苦笑いを浮かべながら、南口が言った。

「だって、心配なんだもん」

「はは、よっぽどなんだなお前。裕人の事が好きで、親友の心奈が心配。いいことじゃんか」

「な、中田君!?怒るよ!?」

「おぉ、もう怒ってるじゃんよ…」

 身を引きながら中田が言う。

「まぁまぁ。とりあえず、あの二人はもう大丈夫だよ。現親友の私が言うんだから、間違いない!うん!」

 美帆が胸を張っていった。

「…美帆、その『現親友』って言葉よく使うよね。気に入ってるの?」

「え?…まぁ」

「ふーん…」

 細い目で美帆を見る。すると彼女は、またもや泣きそうな顔をした。

「美帆。二度目は通じないよ?泣いたフリしても無駄」

「…あ、バレた?あはは、ごめんごめん」

「にしても宝木、泣いたフリ上手いよな。練習でもしてんのか?」

 中田が問うた。

「んー?ああ、言ってなかったね。私、今度地方の五分ドラマに出るんだぁ。それで、私は悪の組織に悪さをされて、ヒーローに助けてもらう役。泣けなくてもいいから、多少の雰囲気は出せるようにしといてって言われてるから、練習してるんだぁ」

 ―うわっ、なんというベタな設定。

 心中西村は思わず苦笑いである。

「へぇ、凄いねぇ。今度はドラマデビューかぁ」

 南口が、関心そうに微笑んだ。

「ますます忙しくなるんじゃねぇか?人気者は大変だな」

「えへへ、そうでもないよ。まだまだモデルでも無名のほうだし。どちらかといえば、あの人たちの顔のおかげだよ」

「あの人たちって?」

 西村が問うた。

「んー?…ちょっと陽子には言えない人」

「えー、何それ。二人は知ってるの?」

「ん。一応、な。だが、結構冗談無しで言えないな」

 中田が言った。

「ぶー。いいなぁ、私も知りたいなぁ」

「んー、じゃあ、知れる方法があるよ」

 ふと、美帆が悪戯を思いついた子供のように言った。

「中田君のお嫁さんになること」

「へ?」

「…美帆?」

 西村は素っ頓狂な声を上げたが、それよりも南口が、見たこともない怒った表情で美帆を睨みつけた。

 流石の美帆も今度は懲りたようで、苦笑いをしてそっぽを向いた。

「はぁ、まぁいいよ。結局、みんなも二人の様子を確認しに来たんでしょ?」

「ん、まぁな。でも、二人はきっともう大丈夫だろ」

「そうだね。特に何か、悪そうなこともなかったし。それに…」

 南口が、笑いながら俯いた。それに続いて、残りの二人も反応が鈍る。

「…え?何々?また秘密の話?」

「うーんと。結構これも、特に陽子は聞かないほうがいい話」

 美帆が言った。

「えー!ズルいよ、私ばっかり!一つくらい教えてよ!」

 流石に全部置いてきぼりはつまらない。西村は、三人に迫った。

 三人は互いに顔を向けて、言うかどうかを表情で話し合っていた。

「…キスしてたぞ、あいつら」

「ふぇえええ!?き、キスゥ!?」

 そっぽを向いて言いづらそうに中田が言った。

 またもや衝撃的な話に、西村は叫んでしまった。

「ああ。で、先に顔向けたのはあいつだ」

「ヒロ君…そっか…」

 何だか、複雑な気持ちだ。片や心奈には、彼と仲良くしてほしい。だが、片や裕人は、一度自分が本気で恋した相手だ。そんな二人がそこまで発展したとなると、どう表せばいいか分からない気持ちになる。

「だから、聞かないほうがいいって言ったのに…」

 美帆が苦笑いを浮かべて言った。

「だって!そんなの知らないもん!」

「まぁ…そうだけどね。でも、それほど二人の仲は悪くなってないって証拠。何せキスできちゃうんだもん、私たちがここまで心配する必要も、無かったってことだよ」

「うん…そうだね」

「んじゃ、そういう訳だし帰るか。それとも、どっか食いにいくか?」

 美帆が話をまとめると、中田が話を仕切り始めた。

 すると、美帆が嬉しそうに手を挙げた。

「あ、行きたーい!今日はそうだなぁ…パフェの気分!」

「ぱ、パフェ?ファミレスでいいのか?」

「うん!いいよ!みんなも行く?」

「そうだね、二人が行くなら私も行こうかな」

 南口が賛同する。

「西村は?来るか?…ああでも、お前だけ電車か」

「そうだけど…ううん!私も行く!ヒロ君と心奈の復縁記念!ってことで!」

「おぉ、いいねそれ!」

「おいおい、本人たちいないのに復縁記念ってあるか?」

「まぁいいんじゃない?一応記念は記念だし」

 四人は揃い並んでお店へと向かいだした。

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