久しぶりの笑顔
二千×八年 三月下旬 現在高校二年生
ようやく公園に着いたと思うと、俺は目の前の「モノ」に狼狽した。
振り向きざまに見せる、その懐かしい笑顔を見た途端に、俺は驚愕とする。
本来なら、そこにはいないはずの笑顔だったからだ。
その笑顔を見た瞬間、俺の中で二つの感情が生まれた。「嬉しさ」と「恐怖」だ。
想いを断ち切ることなんて、とうの昔に出来たと思っていた。だが、実際はどうもそうではないらしい。
何故だろう。一度は「大切なモノ」であったこの笑顔が、今では「記憶から消し去りたいモノ」にまで成り下がってしまった理由は。
数年ぶりに感じる、体の中を巡る血が歓喜で沸き上がるような感覚と共に、同じく数年ぶりに感じる恐怖に、額には汗が滲み始めた。
その温かくも冷たい笑みは、段々と自分に歩み寄ってくる。
恐ろしさこそあったものの、恐怖で足が動かない。
やがて、そんな俺の目の前に、笑顔が止まる。
笑顔が一言、囁くような小声で告げた。
温かくも、冷たい笑顔で。
――久しぶり、と。
【追記】
※本作品は数年前に書き始めたものですが、現在は最新話の更新と共に、過去の話の改稿作業なども同時に行っております。
一部、内容の変更などもありますので、改稿後の話も読んで頂ければ、より楽しんで頂けるかと思います。
2017.6/16現在
【追記2】
長らく、第二針以降の改稿版が更新出来ておらず、申し訳ありません。当初は、現在更新中の第二部を書きながら、改稿版も書く予定でしたが、なかなか時間が間に合わずに、滞ってしまっているのが現状です。
そのため、現在更新中である第二部が終わり次第、第一部全てを含む、第二部中盤までの大きな見直しを行おうと検討中です。第二部終了まで、もうしばらく時間が掛かってはしまいますが、お待ちして頂ければ幸いです。
また、改稿がされていない話も、改稿版と内容が異なる部分もありますが、大まかなストーリー変更は行っていないため、恐らく問題無くこの話以降もお楽しみいただけます。
どうぞ、よろしくお願い致します。
2018.8/6現在