47.第四高校編[三学期]【日本人形:2】
怖い話 怪談『日本人形』の [後編] です。
なんと! 今回の物語(怪談)は予想外の展開を見せ遂に第四高校編でも "アレ" が登場する。
「…遂に現れたね!」
【アブソリュート=ゼロ】
第四高校編[三学期]
【日本人形】
四豊院奏が日本人形を生徒会室に持ち込みその日を境に夜の真っ暗な室内から "子供のすすり泣く声" が聞こえていた。
最初は無人で真っ暗な室内に三台の監視カメラを設置し様子を見ていたがそれだけでは何も解らず次に四豊院奏と三葉院将和と三葉院真純と遠藤惣四郎と裏井沢楓と斎城成瑠子とカレン・ウォールドヴァーゼの七人の "チーム・カナデ" が交代で夜の真っ暗な室内を調査・監視する事にしたが別室で待機中の奏のもとに日本人形を預けてもらっていたお寺の住職から "日本人形が消えた" との連絡があり……
登場人物
●第四高校
①四豊院 奏(2年A組)
②三葉院 将和(2年A組)
③三葉院 真純(2年A組)
④遠藤 惣四郎(2年B組)
⑤裏井沢 楓(2年C組)
⑥斎城 成瑠子(1年B組)
⑦カレン・ウォールドヴァーゼ(1年A組)
日本魔法学部第四高校(宮城県)
1月[三学期]
ある日の夜
生徒会室とは違う別室で待機している奏と将和と真純と成瑠子とカレンの五人と既に将和と真純から二番手に交代した惣四郎と楓の二人が真っ暗な室内を調査・監視していた。
別室にいる奏たちは話し合っていた。
①「…んー」
③「えっ!? 日本人形が消えていなくなったの?」
②「なにっ!? それは本当か?」
①「…そうらしいよ…」
⑥⑦「……」
②「…で どうするつまりだ? 奏」
③「日本人形を捜しに行くの? 奏」
①「う~ん 取り敢えずは日本人形の捜索は後回しにしてこちらの原因解明が先だね。 お寺の住職さんにもそう伝えたから」
②「ふむ なるほどな」
③「へぇー」
⑥「確かにさすがに二つ同時には原因の追求はできませんからね。」
⑦「…と言うことはこちらの方が片付いたら日本人形の捜索に行くのですか?」
①「まぁ うまく進めばそうなるかもね。」
②「ふむ そうか」
③「へぇー」
①「ところで将和と真純の方はどうだったの? 室内から "子供のすすり泣く声" が聞こえたの?」
③「全然 駄目ね 念の為に私が室内にいて将和がドア前にいた状態でしばらく様子を見たけど泣き声どころかラップ音すら聞こえなかったのよ。」
②「俺の方も全然 駄目だな まったく聞こえなかったよ。」
①「…出てこないか やっぱり霊力の高いボクたちを警戒しているのかなぁ?」
⑥「う~ん やはり心霊現象というのは難しいですね。」
⑦「う~ん やはりそう簡単にはうまく進まない様ですね。」
②「どうするつもりだ? 奏」
③「このまま続けるつもりなの? 奏」
①「うん 取り敢えずは今晩はこのまま続けて対策を練りつつ日本人形の捜索の件も視野に入れて思案するつもりだよ。」
②「そうか わかった」
③「まぁ そうね 奏のことだからそのまま終わらせるつもりはないわね。」
①「そうだね 『心霊現象研究会部』の部長としてこのまま終わらせるつもりはないよ。」
②「おう!」
③「ええ そうね」
⑥⑦「……」
…時間が過ぎて惣四郎と楓の監視担当時間が終わり二人が奏たち五人のいる別室に戻ってきていた。
⑥⑦「お疲れ様です。」
奏は惣四郎と楓に話しかけた。
①「どうだった? 二人共」
④「ああ 残念ながら幽霊らしきモノも出てこなかったし 泣き声らしきモノも聞こえなかったな。」
⑤「ああ 俺も全然 駄目だな まったく解らなかったな。残念だったよ」
①「そっかー やっぱり駄目だったかー 残念だったね」
⑥⑦「……」
①「じゃあ 次はボクたちの番だよ 準備はいい? 二人共」
⑥⑦「はい」
②③「……」
④「奏 やはり行くのか?」
①「もちろん 行くよ」
⑤「…そうか…」
今度は三番手に交代した奏と成瑠子とカレンの三人が真っ暗な室内を調査・監視する事になるがやはり前に調査・監視していた四人と同様に奏たち三人にも特に異常はなかった。
……………
夜も更けていきまた守衛さんが校内を巡回する時間がやって来た。
しばらくは何も起こらなかったが突然 男性の悲鳴が聞こえてきた。
「ぅうわぁーーーっ!!」
守衛さんの大きな悲鳴は校内に響いてこだました。
①②③④⑤⑥⑦「!?」
奏たち七人はそれぞれの持ち場から急いで守衛さんの悲鳴が聞こえた所まで移動していった。
そこは校庭と校舎の出入口でもある昇降口であった。
奏たち七人が駆けつけてみると守衛さんが震えて尻餅をついた状態である方向に人差し指を指していた。
「…ひぃっ!!」
守衛さんの声にならない悲鳴が聞こえる。
①「どうしたの? 守衛さん」
奏たち七人は守衛さんが指を指している方向を見てみるとなんと昇降口の扉にいなくなっていたはずの日本人形が立っていたのである。
何故ここにいるのか? 一体どうやってここまで来たのか? 誰かが持ってきたのか? それとも本当に人形が自分で歩いてきたのか? 奏たち七人にも衝撃が走る。
⑤「…むっ!」
④「…これはっ!?」
⑥「きゃぁっ!?」
⑦「…嘘っ!?」
②「まさか 本当に…?」
③「…あの人形が…?」
①「…なにっ!?」
『…しくしく…』
日本人形の方からまさに "子供のすすり泣く声" が聞こえてきたのである。
①②③④⑤⑥⑦「!?」
「…ひぃっ!? 泣いた?」
その場にいた全員が "それ" を聞いていた。
なおも日本人形は泣きながら奏たちに話しかけてきた。
『…カナデ…』
①「…えっ!?」
『…カナデ オネガイ…』
①「…お願い…?」
『…妹ヲタスケテ…』
①「…妹…?」
『…しくしく… …カ…ナ…デ…』
すると日本人形はコテンと倒れてしまった。
①「あっ!? …くっ!」
②③④⑤⑥⑦「あっ!?」
奏は日本人形の所まで行き日本人形を拾い上げて抱き抱えた。
奏は守衛さんに話しかけた。
①「守衛さんはそのまま校内の巡回を続けてください。」
「そ そうか わかった 後は頼むよ」
そう言うと守衛さんは懐中電灯を拾って立ち上がりまた校内の巡回を続ける為に廊下の奥の方へと消えていった。
③「一人で怖くないのかしら? 守衛さん」
①「その辺はプロだから大丈夫でしょ? もともとこの学校は "そういうとこ" だし…」
②「ふむ なるほどな」
④⑤⑥⑦「……」
①「それよりも今回の心霊現象の原因が判りかけてきたよ 真純 すぐに車の用意をお願い」
③「了解!」
奏は校庭に出ていき魔法を発動した。
【攻撃魔法】
《ゴーストマザークリムゾン》を使用
奏の身体から「長身で紅い服を着た女性の幽霊」が出現した。
①「この日本人形がもう一体あるの 見つけてきて」
奏がそう言うと「長身で紅い服を着た女性の幽霊」はコクリと頷いて何処かへ飛んでいった。
しばらくすると再び「長身で紅い服を着た女性の幽霊」が奏のもとに戻ってきてもう一体の日本人形の居場所が判り "ある目的地" である事が判明した。
また奏は "ある人" に今回の出来事を連絡していた。
奏たち七人が校門の前で待っていると黒塗りの長い高級自動車が一台やって来た。
三葉院家の執事兼運転手が運転席から降りてきて後部のドアを開けると奏たち七人が乗り込んだ。
その高級自動車は "ある目的地" に向けて走り出した。
……………
[県立ゴミ集積場]
ここは県内から集められたゴミを集積している場所で県が運営・管理している。
奏たち七人を乗せた高級自動車はここに停まり全員が車から降りて集積場内に入っていった。
登場人物
●第三高校
⑧七照院 燕彦(3年生)
●敵
⑨〈アウターマウカー〉(ステージ2)
奏たち七人がゴミ集積場内の奥に入って行くと人影が見えた。
①「燕彦っ!!」
奏がそう大声を上げて人影の名前を言うと人影が後ろを振り向いた。
彼の名前は七照院燕彦といい日本魔法学部第三高校の生徒で3年生である。
奏が先程 "ある人" に連絡した人物が彼である。
⑧「来たか 奏」
七照院燕彦は既に先にゴミ集積場に来ていてここで奏たち七人は燕彦と合流していた。
燕彦はある方向に人差し指を指していた。
⑧「アレだ 奏」
燕彦の指を指す方向に奏たち七人も見てみるとそこにはゴミが積まれた山のはるか上空に長身で全身灰色の人型化物の〈アウターマウカー〉(ステージ2)が右手にもう一体の日本人形を持って腕組みした状態で奏たちの方をじぃーっと見て静観していた。
⑨「……」
⑥「何 アレ?」
⑦「…化物…?」
④「こいつは一体なんだ?」
⑤「空中に浮かんでやがるぞ! アイツ!」
②「なんだ? アイツは?」
⑧「アレが〈アウターマウカー〉と呼ばれる化物だ」
③「…〈アウターマウカー〉…?」
①「…アレね」
⑧「ああ そうだ 普通に相手をしている幽霊や悪霊などとは比べ物にならないくらいの強力な実力を持ち "人語"・"理性"・"知識" なども人間よりも高い化物だ。」
③「…嘘っ!?」
②「…マジか?」
①「……」
〈アウターマウカー〉(ステージ2)が突然 話し出した。
⑨「ふふ ご紹介ありがとう 早速だが死ね!」
〈アウターマウカー〉がそう言うと突然 魔法を発動した。
【攻撃魔法】
《ダークノヴァ》を使用
ズドォーン!
黒き閃光が奏たち八人を襲う。
⑧「なんの!」
燕彦は他の者よりも素早く反応して魔法を発動した。
【攻撃魔法】
《エネルギーブラスト》を使用
ズドォン!
橙色の光線が『ダークノヴァ』を迎撃した。
ズバァー…ン!
相殺した。
⑨「何っ!? 『エネルギーブラスト』だとっ!? バカなっ!?」
〈アウターマウカー〉はひどく動揺している。
⑧「…ふっ」
①②③④⑤⑥⑦「?」
⑨「そ そうか 貴様は "あの男" の血縁者だな?」
⑧「……」
⑨「いや 違うな」
〈アウターマウカー〉はそう言うと眼を閉じて心を落ち着かせて再び冷静沈着となった。
①「…?」
⑨「なるほど そういうことか その制服… 魔法学校の生徒か? それなら貴様たちの中には "あの男" の知人・友人がいるということか…?」
⑧「…?」
真純が〈アウターマウカー〉に対して質問した。
③「さっきから "あの男" とは誰のことなの?」
〈アウターマウカー〉はその質問に答えた。
⑨「…ふふ それは "陸堂瑛" のことだ…」
②③④⑤⑥⑦「えっ!?」
⑧「…なにっ!?」
①「…瑛…?」
〈アウターマウカー〉は悔しそうな顔をして鋭い眼で奏たち八人に向けて睨み付けた。
⑨「…ちぃっ!」
〈アウターマウカー〉は自分が右手に持っていた日本人形を奏の方に投げ飛ばした。
①「!?」
奏は投げ飛ばされた日本人形を見事キャッチに成功しこれで日本人形姉妹の二体が揃った事になる。
⑨「ソレは返そう」
燕彦が〈アウターマウカー〉に対して質問した。
⑧「どういうつもりだ? 〈アウターマウカー〉!」
〈アウターマウカー〉はその質問に答えた。
⑨「残念ながら貴様たちがあの "陸堂瑛" の知人・友人などの関係者ならば今ここで貴様たちと殺り合うつもりは毛頭ない。」
⑧「なんだとっ!?」
①「…むっ!」
②「…?」
③「それは一体どういう事なの?」
⑨「ふふ 簡単な事だ 我々はまだあの男 "陸堂瑛" と敵対するつもりはないからだ あの男は本当に強くて危険だ! 既に我々の同胞も何人かは奴に殺されかけている そんな奴の相手はごめんだ!」
⑧「なんと!」
②「…マジか?」
③「凄い! 瑛様!」
①「なるほど 確かに」
⑨「あの男に会えたら伝えておけ! "我々はまだ貴様の相手をするつまりはない" とな…」
そう言うと〈アウターマウカー〉は何処かへ飛んでいって消えた。
⑧「……」
①「…あっ…」
②「行ってしまったぞ! アイツ!」
④「結局 何だったんだ? アイツ?」
⑤「まぁ なんにしても今回は殺されずにすんだな… 瑛に恐れをなしてか?」
③「確かにそうね やっぱり瑛様のおかげだね」
⑥「それにしても何であの化物は日本人形なんか持っていたんですかね?」
⑦「あっ!? 確かに言われてみればそうですね 何でだろう?」
③「そうね それは聞き損なったわね。 何故かしら?」
⑧「いや むしろそれに関しては質問しなくて正解だったのかもしれないな。」
②③④⑤⑥⑦「…?」
①「…遂に現れたね 〈アウターマウカー〉!」
奏たち八人も無事にこの県立ゴミ集積場から出ることができ奏たち "チーム・カナデ" の七人は第四高校の学校に戻り七照院燕彦は自宅に帰宅して行った。
日本人形も双子の姉妹が無事二体揃い持ち主の所に戻って行った。
こうして第四の心霊現象【日本人形】の謎を見事 解明・解決した。
―――――――
『今回の出来事』
[簡易型]
6.日本人形の捜索は後回しにして生徒会室内の心霊現象の調査・監視を続行。
↓
7.校内の昇降口で奏たち七人の前に消えたはずの日本人形が再び姿を現し奏に妹の救出を懇願する。
↓
8.奏たち七人は県立ゴミ集積場に急行して七照院燕彦と合流する。
↓
9.もう一体の日本人形を持った〈アウターマウカー〉がゴミ山の上空に登場し奏たち八人と対峙する。
↓
10.もう一体の日本人形を奏に投げ渡し〈アウターマウカー〉は撤退した。
『今回の幽霊』
【〈アウターマウカー〉(ステージ2)】
遂に第四高校編でも〈アウターマウカー〉が登場した。
魔法促進剤の失敗作として誕生した "悪魔の薬" こと『悪魔ウィルス』が人間を媒体とし新たに誕生した悪魔的化物がさらに進化し変身した第二段階目(ステージ2)である。
化物ではあるが今回の物語(怪談)の進行上 便宜上は『幽霊』扱いとなっている。
今回の目的はまったく不明で何故県立ゴミ集積場にいてもう一体の日本人形を持っていたかも不明である。
今回登場した〈アウターマウカー〉は非常に冷静沈着で引き際も良く無用な争いも極力避けた理性的であったが "陸堂瑛" に関する事にはひどく動揺していた。
二人の間に何かあったのか最初は奏たちに問答無用で攻撃したが "陸堂瑛" の関係者だと判ると奏たちと敵対せずに日本人形を返してその場を去ってしまった。
化物にしては不思議な光景であった。
ちなみに双子の姉妹の二体の日本人形が持ち主のもとに戻った後の生徒会室にはもう "子供のすすり泣く声" などの心霊現象は起きなくなった。
『使用魔法の紹介』
今回は第三高校の生徒である七照院燕彦が使用した魔法を紹介する。
【攻撃魔法】
《エネルギーブラスト》
(元素:火&破壊魔法)
火属性の橙色の光線を放出させて敵に攻撃する。
名前からして陸堂瑛が使用している攻撃魔法と同系統であると思われる。
(七照院燕彦の通常魔法)
【登場人物紹介】
[簡易型]
[七照院 燕彦]
年齢:18歳
岐阜県出身
日本魔法学部第三高校の男子生徒(3年生)
岐阜県の名士 名家・七照院財閥の御曹司。
元は生徒会役員であり前会長である。
『霊力』・『霊感』も一般的よりはかなり高い方である。
【日本人形について】
二体の日本人形(双子の姉妹)の所有者から一体の日本人形(妹)がいなくなってしまいもう一体の日本人形(姉)も泣き出した為に四豊院奏と七照院燕彦の二人が原因解明を依頼された。
奏は日本人形(姉)をしばらく預かり燕彦は日本人形(妹)の捜索と分担して行っていた。
日本人形(姉)はお寺から抜け出し夜な夜な奏を頼りに生徒会室に来ていたが夜は人がいない為になかなか会えずにいた。
日本人形(妹)は〈アウターマウカー〉が持っていた。
ちなみに日本人形(姉)を預かってもらっていたお寺の住職は奏の親戚にあたる。
日本人形(姉)の外見については前回の冒頭で説明した通りでもう一体の日本人形(妹)の方も蝶柄の金箔の付いた蒼い着物以外はほぼ日本人形(姉)と同じ外見である。