38.B【黒い影:14】
▼▽ (14)
ここは日本の東京都の某所
翌朝、あの一珂院恭・一珂院撩・一珂院翔の一珂院三兄弟が、とある都内にある某病院の中にいた。
そこは院内の地下にあり、遺体が安置されてる霊安室である。
その霊安室とは、一般的に警察関係者・医療関係者や遺体を安置している親族などだけしか立ち入れない。
最もほとんどの人間は、滅多にあまり立ち入りたくない場所でもある。
また夜は勿論だけど、日中でも、あまり居たくない場所である。
―――とにかく怖いから・・・
この霊安室に、一珂院三兄弟がいる。
その他にも、日本支部長で男性死神の『ミドウリン』や警視庁の警視総監の里崎氏と、その部下たち数名や医療関係者の数名が、薄暗い霊安室の中と外にひしめいている。
この霊安室で遺体となって眠っているのが、警察庁長官の石橋氏である。
一同が、その遺体を静かにジィーッと見つめていると、
「本当に死んでるようだな。 だがまさか、"悪夢" を見た者が "悪夢" 以外の方法で死去するとはな。」
石橋氏の遺体を見た『ミドウリン』が驚いた顔で話し始めた。
「おい、検死とか解剖とかはされないのか?」
続けて、恭が近くにいた刑事に質問してきた。
「いえ、一応は自然死なので……でもどうなのでしょうか……?」
「……自然死……」
「……心不全ってことか……」
「………」
「そんな死に方をするとは……未だに信じられない……」
「だが既に、そういう死因で死んでいるのだ。 これは、もう仕方なかろう」
「……た、確かに……それはそうだが……」
「では、そのまま火葬されるのか? 彼には身内がいないんだろ? どうするんだ?」
「………」
「これは聞いた話ですが、彼の遺体を発見したのは、あの地球の護り神〈アクナディオス〉だと言うのは、本当のことですか?」
「はい、驚くべきことに救急車を呼んだのも、その護り神だそうです。」
「あ、あり得ない……」
だがしかし、そこで恭が―――
「―――ことでもあるまい。 異世界転移の準備や確認などの為に、わざわざ自宅に出向いてみたら、彼の死体を見つけた。 最も何故わざわざ救急車を呼んだのか、は解らんけどな。」
「そんなことは、どうでもいい! もし、それが本当だったら、その地球の護り神〈アクナディオス〉は実際に人間の家に勝手に上がり込んだことになるぞ!」
「ああ、まぁ住居侵入罪の不法侵入だからな。」
「いや、そういうことを言ってる訳ではない! 実際に護り神が人間の家まで、勝手に上がり込むことが出来たということだ!」
「………」
「そんなことは、もはや重要ではない。 忘れたか、奴らは既に様々な建物の中に侵入していることを。」
「では、一体何が重要なのだ?」
ここで撩の持論が展開する。
「ああ、重要な課題はふたつ。 ひとつは俺たちが地球の護り神〈アクナディオス〉に出会うことができなかったこと。 もうひとつは死の事実の改変だ。 本来なら、あの日あの時間あの場所で死んでいた。 もしくは、その前に異世界転移して、もう別の世界に行ってた筈だ。 なのに、その前に既に別の場所で死んでいた。 これは死の歴史や死の運命を大きく改変させる出来事だ。」
「………」
・・・
・・・
「それが一体なんだと言うんだ……?」
「あんた、一体何が言いたいんだ……?」
「ふん、"人間はいつか死ぬ。 遅いか早いかだけ" ……いう言葉もあるけど、問題はそこじゃない。」
「……何……?」
「なんだと?」
「ふん、問題なのは、そもそも人間の力では変えられない筈の死の運命を変えられたことにある。」
ここで撩が一呼吸、間をおいてから、次の持論を展開する。
「人間の死ってヤツは、人間の力では変えられない。 自然死は勿論だけど、病死・事故死・他殺・自殺・怪死・・・その全てが死の運命を統括している女神によって決められている。 たかだか地球の護り神〈アクナディオス〉ごときが死の運命を改変することなどできないはずだ。」
「……?」
「それが一体なんだと言うんだ……?」
「だから、どうした?」
ここでも撩が一呼吸、間をおいてから、また次の持論を展開する。
「ふん、まだ解っていないようだな。 今回の出来事は〈アウターマウカー〉や地球の護り神〈アクナディオス〉とかの仕業ではなく、まだもっと別の誰かの仕業ではないか、と言っているのだ。」
「「「「!!?」」」」
一同が驚愕する。
・・・
・・・
そこで撩がこんなことを言い出してきた。
「おい、石橋さんの遺体、まだ検死や解剖や火葬なんかするなよ? これはまだ利用する価値があるんだからな?」
「……利用……だと?」
「一体何をするつもりなのだ?」
「あんた、何言ってるんだ?」
「………」
「いいな?」
「……あっ、はい……判りました……」
「恭よ。 奏に連絡つくか?」
「ああ、それは問題ないが……まさか、アレを使う気か?」
「ああ、勿論。 使わせてもらうつもりだ」
疑問に思った刑事の一人が翔に質問してきた。
「さっきから撩さんや恭さんが言ってる奏って、一体誰のことですか?」
「ああ、四豊院奏さんのことかい? あの人は陸堂瑛・八陀院凌・一珂院撩の三人に匹敵するほどの実力と能力を持ってるお人だぜ。」
「えっ、そんな人がいるんですか?」
「ああ、これはオフレコだぞ。 おそらく撩兄は彼女の能力を利用したいんだよ。」
「……か、彼女の能力……?」
「そ、彼女の無敵の能力 "蘇生の力量" をね」
「……?」
・・・
・・・
そこで恭が七照院燕彦との連絡をつけて、その内容を撩に知らせる。
「……で、どうだった?」
「ああ、協力すると言ってる。 但し、むこうもこっちに協力を要請している。」
「ふん、いいだろう。 ギブアンドテイクだ。 協力しよう」
「わかった。 では、そのように伝えておくぞ。」
そこでまた恭が七照院燕彦と連絡して、お互いに問題解決を協力し合うことで一致した。
これはもしかして、近日中に一珂院三兄弟や『ミドウリン』が、陸堂兄弟・六甲院姉妹・七照院燕彦・四豊院奏たちと合流する日が近いかもっ!?
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※「蘇生の力量」とは、能力の正式名称ではなく、現時点で能力の情報の一端にすぎず、正式名称は不明である。
まだまだ次回に続きます。