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アブソリュート=ゼロ ~セイント.ワールド.ゼロ.オブ.ゴッド.フォー~  作者: 南かずしげ
B.【四豊院奏の最終報告書編】
121/132

32.B【黒い影:08】

  ▼▽ (08)


 ある日の朝のこと


 日本のとある地域の某所にて


 ここは都会の駅近に並んである高層ビルの上階のあるフロアで、オフィスに向かう途中の廊下を、一人の美女が漆黒の女性用スーツを着て、黒いハイヒールの音を立てながら歩いている。


 この美女が漆黒のカバンと茶色い封筒を持っていて、その中には……何かの資料・書類が複数枚入っていて、彼女が先を急ぐように足早で歩いている。


 その美女とは『弁護士』の『佐々崎理緒』 (その正体は〈アウターマウカー〉(ステージ4)である) であり、なにやらにやにや不敵な笑みを浮かべながら、その途中にある応接室の方に向かっている。


 ちなみに彼女が〈アウターマウカー〉(ステージ4)であることは、ほとんど人間がまだ知らない。 ほとんどの人が、まだ彼女は普通の人間の美女だと思い込んでいるようだ。

 

 その応接室に到着すると、すぐに中に入り、内側から(カギ)をかけて、外から入れないようにしていて、応接室の中には誰もいなかった。


 そして、椅子に座り、机の上に漆黒のカバンや茶色い封筒を置いて、その茶色い封筒の中から、資料や書類を全部出している。


 その資料や書類を手に取って見ながら、またにやにや不敵な笑みを浮かべている佐々崎理緒が、突然独り言を言い始めた。


「ふふふ、遂に日本の警視庁にも地球の護り神〈アクナディオス〉が出現したようね。」


「ふふふ、警察はこの事実を公表していないようだけど、まず公表できないでしょうね。」


「上手く隠し通すつもりらしいけど、そう簡単に隠し通せるものではないわ。 まったく日本のメディア・マスコミをあまく見てるわね。 日本の警察は……ふふふ」


「必ず突き止めて来るでしょうね。 日本のメディア・マスコミは、なかなか優秀だから、すぐに世界中に知れ渡るわよ。 ふふふ」


「しかし、驚いたわね。 まさか本当に日本にまで来るとは、地球の護り神〈アクナディオス〉は世界中に神出鬼没のようね。」


「これからが大変でしょうね。 何て言ったって、日本の警視庁にまで簡単に浸入されてしまうんだから、今さら何をやっても無駄でしょうね。」


 するとそこで―――


「―――なんでだ?」


 なんと佐々崎理緒の背後に、あのアルヴァロス・X・ラピッドマンが無音で、静かに突然出現してきて、彼女に質問してきた。


「簡単なことよ。 あの化物を止められる者など、この世にいないってことよ。」


 佐々崎理緒は振り返ることなく、そのままアルヴァロスの質問に答えてきた。


「……」


 まるで最初から、そこにいるのを知っていたかのように、そのまま続けている。


「まだ一般の人達は、この地球の護り神〈アクナディオス〉の事をあまり知られていないけど、もし知ったら大パニックでしょうね。」


「何故、大パニックになる?」 


「それは都市伝説的な噂話に "悪夢を見た者は必ず死ぬ" というのがあるわ。 ()()をやってるのが、地球の護り神〈アクナディオス〉だと思い込んでるんでしょう?」


「……違うのか?」


「勘違いしてるようだけど、()()をやってるのは、地球の護り神〈アクナディオス〉じゃないわよ。 彼らはあくまで死んだ者の魂・生命エネルギーを高純度エネルギーに変換して、地球の中心部に与えているだけにすぎないのよ。」


「では誰が、その "悪夢を見た者は必ず死ぬ" という力を使っているのだ?」


「―――()()よ。 地球が人間に "悪夢を見た者は必ず死ぬ" という力を使用して、それで人間をどんどん殺して、自分の力にしているのよ。」


「何っ!? では遂に地球が人間に反旗を翻したのか!?」


「それは違うわ。 むしろ逆よ。 人間が地球に反旗を翻したのよ。 その結果がこのざまなのよ。」


「―――何っ!?」


「さんざん人間が地球に牙を向けて壊してきたので、それで遂に地球が怒ったのよ。」


「そうか、遂に地球が怒ったのか? それは残念だったな。 人間たちよ」


「まぁ、男性死神No.019の『ミドウリン』からの情報だから、一体どんな原理・能力なのか知らないけど、とにかく地球には何か特殊な力があるそうね。」


「そうか、ところでお前はさっき、なんでにやにや笑ってたんだ?」


「ふふふ、この国の警察の対応があまりに滑稽だったので、それで少しおかしかったのよ。」


「そんなにおかしいのか?」


「ええ、かなりね。 ()()()()で日本国民を(あざむ)けるほど、日本国民はバカじゃないわよ。 少しナメてるわね。」


「ほーう、なるほどな。 それでお前たち〈アウターマウカー〉は、これから一体どうするつもりなのだ?」


「そうね、私たちはとりあえず静観ってところね……今のところはね。 まぁ、人間がどうなろうと知ったことではないしね。」


「ほーう、なるほどな。 では私も、そのように認識しておこう。」


「あらあら、そうなの? でも大変よね、人間も。 何せ、()()()()()()()()()()()なんですからね。」


「それで男性死神No.019の『ミドウリン』が言うには、地球が何らかの力を使用して、 "悪夢を見た者は必ず死ぬ" 能力を作動させて、人間たちを殺害して、人間の数をどんどん減らしているのか?」


「ええ、そうね。 彼が言うにはね。 一体どこからそんな力があるのか、よく知らないけどね。」


「ほーう、なるほどな。 確かに気の毒だな、人間も。」


「ふふふ、それで日本の警察は一体どうするのかしらね? だから滑稽で楽しみなんですよ。」


「……さすがに逮捕できんからな……相手が地球では……な。」


「だからこれからの人間たちの言動が楽しみなのよね。 ふふふ」


「……楽しそうだな?」


「ええ、だってある惑星がそこに住む人類を滅亡させようなんて、まさに前代未聞よ。 今までのツケが返ってきたようね。」


「……」


「そうそう、あなたの方はどうするの? アルヴァロス」


「……そうだな。 私の方もしばらく様子見だろうな。 特に何もしないつもりだ。」


「あらあら、やっぱりそうよね。 だってこれは人間たちの因果応報・自業自得だものね。 ふふふ」


「……確かにその通りだな。 理緒よ」


「ふふふ♪」


 そう言うと、アルヴァロス・X・ラピッドマンの姿が無音で、静かにスゥーと消えていった。




   ◆◇◆




 ある日のこと、俺は非常に困っていた。


 俺はラーメン屋でアルバイトをしている無職の成人男性だ。 将来の夢は、自分のラーメン屋を出店すること。

 だが一方で、俺はあることを懸念している。 それが例の "悪夢を見た者は必ず死ぬ" という夢を、俺も見てしまったからである。

 そう、つまり俺は必ず数日内に死んでしまうのだ。


 このまま俺は自分の夢を実現できずに、何もできずに死んでしまう?

 せっかく自分オリジナルの麺やスープなどが完成直前なのに、このまま何もできずに死んでしまう?


 夢も希望もなく失望し絶望し、いっそ、自分で自分の命を断とうかと思い始めた頃に、俺の目の前に()()()()()()()()が現れたのだ。


 これから俺は一体どうなっていくのか!?


  △▲


※『悪夢を見た者は必ず死ぬ』

その『悪夢』とは、夢の中で実際に自分が殺されることであり、見た者は数日以内の現実世界で()()に殺されることをいう。

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