27.B【黒い影:03】
▼▽ (03)
日本の東北地方にある某所
ある日の深夜
その総合病院の誰もいない屋上で、不気味な黒い人影が宙に浮いていて、まだ不敵な笑みを浮かべていたが―――そこに、あの七照院燕彦と四豊院奏と八陀院凌と八陀院蒼依と男性死神・No.019の『ミドウリン』の五人が、突然…現れて取り囲んでいる。
この不気味な黒い人影とは、まさかの…地球の護り神〈アクナディオス〉であり、遂に…この東北地方にも出現したことになる。 そこに奏たち五人が、地球の護り神〈アクナディオス〉の周囲をガッチリ固めて、逃がさないようにしている。 ちなみに何故、奏たち五人が、この地球の護り神〈アクナディオス〉の所在が判ったのかは、企業秘密なので教えられない。
ちなみに地球の護り神〈アクナディオス〉が、一体何の目的でここまで来たのかは、今のところ詳細が全く不明なのである。
一見して、"四面楚歌" に思えるこの状態でも、地球の護り神〈アクナディオス〉は、まだ余裕綽々の不敵な笑みを浮かべている。
『フッフッフッ』
「―――こんな状況でも…余裕綽々だな…?」
この地球の護り神〈アクナディオス〉の、不遜で不気味な態度を見ていた『ミドウリン』が質問してきた。
『フッフッフッ、―――失礼……ア、ア、ア、グフッ』
なんと地球の護り神〈アクナディオス〉が咳払いをして、声帯や喋り方が急に変わった。
「―――失礼、この声には…まだ馴れていないものでな。 だが…何も問題はない。」
「…こ…声が変わった…?」
「……」
「へぇ~ なかなかやるわねぇ~ こいつぅ~」
「…ちっ! 余計なことを!」
「ほーう、なるほど…報告通りのようだな。」
そこで死神『ミドウリン』が、黒く古い本を取り出して、その謎の本をパラパラ開いていき、あるページで止まった。
「…何も問題ないとは、その声のことか? それとも…我々を前にしても、全然平気だと言うことか?」
「ふふふ、その両方だ」
「……なにっ!?」
何か危険を察知した、奏、燕彦、凌、蒼依の四人が、とっさに身構えて、ほんの少しだけ距離をとったが…『ミドウリン』だけは、微動だにしなかった。
だがしかし、この地球の護り神〈アクナディオス〉の方は、相変わらずの余裕綽々の不遜な態度で、ビッグマウスを続けている。
「ふふふ、誰も我々を倒すことも、捕まえることもできない。 我々はまさに無敵なのだ。 だから無駄だ」
「ほーう、なかなかの余裕ぶりだな。 すると…私たちだけでは勝てんとでも…?」
「へぇ~ スゴいわねぇ~」
「…無敵だと!? 神だかなんだが知らんが、俺たちをナメてんのか!?」
「…お、おい、あまり煽るなよ。 凌」
「なるほど、無敵か? 確かにそいつは困ったな。 だが…何も問題はない。」
「……何?」
今度は死神『ミドウリン』の方が、なにやら冷静沈着の余裕綽々な様子でいて、先程の黒く古い本のあるページを見ている。 いや、読んでいる。 だけど…一体何が書いてあるのかは、まったく解らない。 おそらく、それが読めるのは、死神だけなのだろう。
それに微妙に反応したのが、地球の護り神〈アクナディオス〉の方である。 今まで余裕綽々の不遜な態度でいたが、その時…ほんの一瞬だけ…戸惑いを見せている。
「…一体何が問題ないのか、とても理解できないのだが、何故問題ない?」
「ふふふ、それは我々が、本当に貴様を倒しにきたわけでも、捕まえにきたわけでもないからだ。 だから、先程の貴様の発言を聞いて、我々にも "勝機" が出てきたのだ。」
「ならば、一体何しにきた?」
「言ったはずだぜ。 貴様の目的を止める…と」
「それこそ、無駄だ。 我を倒さない限り、我々を止めることはできない。 つまり、まさに不可能なのだ」
「ふふふ、それを聞いて…尚更安心したぞ。 やっぱり貴様は何も解っていないようだな。」
「……何?」
「ふっ、勝敗は問題ではない。 最も重要なのは、その目的阻止にある。」
「…なんだと…?」
この『ミドウリン』の不可思議な発言に、さすがの地球の護り神〈アクナディオス〉も、ほんの少しだけ動揺している…?
「さぁ…行くよ!」
すると突然、七照院燕彦と四豊院奏と八陀院凌と八陀院蒼依の四人が、地球の護り神〈アクナディオス〉を中心に、四方向に散って四人同時に魔法を発動した。
【防御魔法】
《霊魂封印結界四陣》を使用
これで地球の護り神〈アクナディオス〉の動きを止めるのだが―――
「………」
「まだまだ、これからだ!」
するとそこに、死神『ミドウリン』が黒い小箱の "漆黒の騙箱" を取り出し、黒く古い本のあるページを、地球の護り神〈アクナディオス〉の方に向けて見開いた状態で、この『ミドウリン』の目の前で浮かんでおり、同じく宙に浮かんでいる黒い小箱の "漆黒の騙箱" のフタが、自動的にパカッと開いた。
「…なんだ…それは…?」
「…ふっ…」
この【防御魔法】《霊魂封印結界四陣》によって、動きを封じられたはずの地球の護り神〈アクナディオス〉が、冷静に淡々と質問してきた。
「これで貴様を封印する」
「……! なるほど… "封印" …か。 これなら確かに "勝敗は関係ない" とか "目的を阻止する" などの説明がつくな。」
「…ここまできて、また随分と余裕だな…」
「いいや、こう見えて…結構焦っている」
その地球の護り神〈アクナディオス〉が、動きを封じられた上に、今にも黒く古い本の「力」で黒い小箱の "漆黒の騙箱" の中に吸収・封印されようとしているのに、肝心の地球の護り神〈アクナディオス〉の方は、全く微動だにしない。
「ハッ!!」
なんと地球の護り神〈アクナディオス〉が、ほんのちょっと気合いを入れただけで、【防御魔法】《霊魂封印結界四陣》がすぐに解除されて、奏たち四人も少し後退した。
「…な…なんだと…」
「…ちっ、駄目か…」
さらには、『ミドウリン』が用意して宙に浮いていた、黒い小箱の "漆黒の騙箱" も見事に破壊された。
「…失敗したのか…?」
「…残念…神を封印することはできなかったけど、でも…まぁ、取り敢えずは…上々の出だしだな。」
「…なるほど…そういうことか…確かに、少し侮っていたようだな。」
これは一体何が起きているのか、よく理解できないけど、死神『ミドウリン』の余裕の笑みと、地球の護り神〈アクナディオス〉の少しの戸惑いに、一体どちらの方が優勢なのか、まだまだこれから続きそうに見えるが…。
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新年、明けましておめでとうございます。
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