17.B【反逆者:6】
前回の続きです。
(※今回は子猫は登場しません)
▼▽ (17)
和歌山県の某所にあるホテル
ある日の朝
一珂院三兄弟の恭、撩、翔は、ホテル内にある飲食店で朝食を頼んでいて、恭は焼魚定食を、撩はサンドイッチを、翔はおにぎりを、それぞれ食べていて、一珂院三兄弟がゆったりと寛ぎながら話し合っている。
「うん、うまい。 いつも朝はしっかりと食しないといけないよな。」
「はぁー、そうかな? 俺はどちらでもいいけど……な?」
「ああ、そうだな。 ところで、この後は一体どうするつもりなのだ? 恭よ」
「ああ、例の事件のことなら…陸堂兄弟や八陀院家の連中が必死になって調べているから、今はまだ問題ない。」
「……」
「なあ、俺たちは何もしないのか? 恭兄」
「ふふふ、しっかりとやっているではないか。 サポートを」
「……」
「あーあ、そう…」
「ふふふ、何も心配しなくとも…じきに例の事件での経過や結果が、我々にも連絡してくるはずだから、我々はその後で対応すればよいのだよ。」
「……」
「はぁー、相変わらずだよな。 まったく…!」
「…なんだ? 何か不満なのか…? 翔よ」
「俺たち…何もしていないけど、本当にいいのか…? 恭兄」
「だから、やっているだろ? サポートを! サポート……例の事件についての情報を、しっかりと提供しているだろ?」
「……」
「ふーん、そう…」
「…なんだ? まだ納得していないのか…? 翔よ」
「いや、俺たちも表に出て活躍したいよね!? 俺たちが活躍しているところを、皆に見せたいよね!?」
「ふざけるな! ワガママ言うな! 面倒臭いだろ!」
「ああ、その通りだぞ、翔よ。 我々の役目は、あくまでも隠密行動……暗躍なのだよ。」
「はぁー、やっぱり…そうなのか…俺たち一族は…」
翔がガックリと肩を落としている。
「ああ、その通りだぞ、翔よ。 面倒臭い事や余計な事は、他の連中に任せるんだな。」
「ああ、そういうことなのだ。 それが我々の…一珂院のやり方なのだよ。」
「……」
翔がまあまあ呆れていて絶句しているのだが、三人の話し合いはまだ続いている。
◆◇◆
その後の例の事件……少女傷害暴行事件は、奈良県の県警と京都府の府警の努力と活躍、さらに八陀院家や陸堂家の多様な協力もあって、ようやく真犯人であるブサイクでデブのオタクで四十代の男性が、無事に逮捕されたのだ。
この後の関係者全員の捜査や取り調べなどで、その真犯人の男性の自供や物的証拠や目撃証人や防犯カメラなどが、次々と出てきて、これでようやく立件・起訴ができそうだ。
これにて少女傷害暴行事件は、なんとか解決できた…。
一方で大阪府の某警察署では、またしても誤って無実の罪の男性を逮捕してしまい、当然なのだが、事件当日のアリバイさえあって、真犯人の男性との関係性も一切ないのが捜査の段階で判明しているのに、どうやら誤認逮捕をしてしまい、しかもまだその男性を釈放していないようだ。 さらには、今回の誤認逮捕に対する、釈明も謝罪も何らかの会見さえもしていないのだ。
何故なら、その大阪府の某警察署にいた全員が、警察官(幹部・刑事)、署内職員、犯罪者(容疑者)、先程の無実の罪の男性さえも、忽然と姿が消えてしまったからだ。 これには、さすがに世間・世論も注目して大騒ぎをしていて、それは新聞やニュース・報道などに取り上げられている。 その見出しには、『謎の失踪!?』『署員全員が行方不明!?』『一体何が起こっているのか!?』などなど…。
一方で今回の大阪府の某警察署の署内の人間、全員が失踪・行方不明になった問題で、都道府県の警察官ならびに警視庁や警察庁が、この前代未聞の奇妙な出来事に、ただちに緊急対策捜査本部が全国各地に設置されていて、対応に追われている。
勿論、まだ何も解決していないのだが、警視庁と警察庁の合同で、取り敢えず…現状の報告をする為に記者会見を開いたのだが、そこでも紛糾している。 記者からは、『今回の誤認逮捕を隠蔽する為に、署内全員が逃亡した…とか…殺した…とか…何処かに匿った…とか…』 色々と有ること無いことを、次々と質問してきたのだが、当然…担当者は何も答えることが出来なかった。
◆◇◆
今回の出来事から、『死神反逆者同盟協会』が "上部からの依頼" で、先程の少女傷害暴行事件から、今度は大阪府の某警察署の署内の人間全員の失踪・行方不明事件へ対象になって、調査・協力などをすることになった。
奈良県の某所にある警察署
ある日の夜
署内にある応接室には、八陀院蒼依と八陀院凌の二人が、椅子に座って話し合っている。
「やれやれ、ようやく事件が解決できたと思えば、また新たな事件が起きたのか?」
「ああ、そのようだな。 これは以前の事件との関連性が、果たしてあるのか?」
「おいおい、あのデブならもう逮捕されているぜ。 あいつ一人で一体何ができるんだ?」
「いや、あいつは単なる囮…もしくは陽動…ただの捨て駒なのではないのか?」
「…何??」
「仮に…もし仮に少女傷害暴行事件 "そのモノ" が、ただの "囮" だとしたら…?」
「…? 言ってる意味がよくわからんのだが、じゃあ何か? ひとつの警察署の署内の人間全員を、まるまる拉致・監禁する為だけに、少女傷害暴行事件を引き起こした…とでも…?」
「……」
「おいおい、それマジかよ? その警察署に、どれだけ私怨や怨恨があるんだ?」
「いや、それは違う。 このやり方は、金銭でも怨恨でもテロでもない。 これは目的が "人間そのもの" なのでは…?」
「…何??」
「これはまさか……あの〈アウターマウカー〉の仕業なのでは…っ!?」
「…何っ!? あの〈アウターマウカー〉が、今回の事に関与しているのかっ!?」
「いや、まだ何も確証はないのだが…もしかしたら……」
「……」
するとそこに、担当の若い刑事が慌てて、蒼依と凌の二人がいる応接室に入ってきて―――
「た、大変だぁっ!!?」
「っ!!?」
「…!!?」
その担当の若い刑事のとても緊張感がある大声が室内に響いている。
どうやら蒼依の嫌な予感が的中してしまったのか…!?
△▲
━━━
京都府の某所にある総合病院
ある日の昼
病院内のある個室の室内には、ベッドに座り元気を取り戻した少女と、横の椅子に座る鳩邑紗希が、備え付けの小型テレビの方を見ていて、現在はニュース番組を見ている。
「どうやら…ようやく犯人が逮捕されたようね。 これでまずは一安心…と言うことね。」
「ええ、そうね。 良かった」
丁度、真犯人の男性が逮捕されている映像が流れている。
そして、少女はもうじき退院する予定だ…。
さて、次回からは一体どうなるのか…?