13.B【反逆者:2】
前回の続きです。
(今回は子猫は登場しません)
2017年12月、今年最後の投稿・連載です。
▼▽ (13)
京都府の某所にある暗闇の細い道にて。
ある日の夜
女子高生のレイル・フライヤスが一人で、学校の帰り道に自宅まで歩いていると、左側の曲がり角から突然…一人の少女が飛び出してきて―――
どん!
そのままレイルとその少女がぶつかってしまった。
「あいたっ! ちょっと! 何…一体何なのよぉーーっ! 痛いじゃないのよぉーーっ!」
「…はぁはぁはぁはぁ…た、助かったの…? はぁー…」
その少女がレイルの身体に、しがみついてくる。
「お、お願いします! た、助けてください!」
「……え……?」
どうやら…この少女は誰かに追われているようなのだが…。
「私…このままだと…アイツに殺されるわ…うぅっ…」
「……は……何それ……?」
たん!
なんと言うことなのか、その少女が突然…レイルの身体から両手を離し、両膝を地面について、しゃがみ込んでしまった。
「…えっ!? どうしたの!? あなた…っ!?」
「……うぐぅ……」
その少女は何故か、左側の脇腹を手で抑えており、その手の間から…赤い液体が流れ落ちていて、服をつたって地面に滴り落ちている。
驚いたレイルも一緒にしゃがんで、その少女が心配で様子を見ている。
「…えっ!? あなた…大丈夫なの!? それって…もしかして…血…なの!?」
「…うっ…なんだか知らないけど、突然…通り魔みたいのに…刺されてしまって…うぅっ…」
「…えっ!? 通り魔…っ!? 嘘でしょっ!? この道って…そんなに物騒なの!?」
「…うっ…それは…よく解らないけど…うぅっ…」
「と、とにかく…すぐに救急車を呼ばないと…!」
「…いいえ…それよりもここから…早く…逃げないと…私だけでなく…あなたも…殺されるわよ…うぅっ…」
「……っ!!?」
タッ…タッ…タッ…
「ひぃ……っ!!?」
その少女が声にならない悲鳴を上げる。
タッタッタッ……
すると…この少女が逃げてきた方向から、男性の人影がレイルたちの方に歩いて近づいている。
「…だ、誰なのっ!? アンタは…っ!?」
「おやおや…夜遅くに美少女がもう一人…こんな所に居るとは…驚きだよね? ぐふふ」
暗くて顔は…あまりよく解らないけど、男であることには間違いなく、中年で…しかも体型はかなり太っていて、とても大きい…デブ…なのか? さらに左手には、大型のサバイバルナイフを持っており、刃先が少し赤く濡れている。
もしかして…アレでこの少女の左側の脇腹を刺したのか?
「ちょっと! アンタは何ぃっ!? なんでこんなことをするのよぉ!?」
「ふん、そいつがおとなしくブラジャーとパンティーを渡さないから、そうなったんだ!!」
「…うっ…だ…誰が…アンタ…なんかに…っ!」
「は…っ!? そんなことの為に、アンタは人を刺すの!?」
「けっ! うるさい!! 黙れ!! お前も…この俺様に下着を献上しないと、そいつみたいに刺し殺すぞ!!」
「ふざけないで! 誰がアンタなんかに…っ!」
「ふん、バカな奴らだよ!! それなら…力尽くで奪い取るまでだよ!!」
「くっ、日本は比較的に治安が良いって聞いてたけど、まさか…こんな変態が居るとは…!」
タッタッタッ……
「ひぃ……っ!!?」
その少女がまた声にならない悲鳴を上げた。
「うっへっへっへっ」
その中年の太った男が、刃物を持った左手を頭上に上げながら、顔はよく見えないけど…おそらくはイヤらしく笑う表情をして、どんどんとレイルたちの方に歩いて近づいてくる。
「うっへっへっへっ、覚悟しろよ! お前ら!」
すると突然…中年の太った男の背後から―――
「…覚悟するのは…お前の方だよ! バカめが!」
ガシッ!
―――と、その男姓の声と同時に、中年の太った男の刃物を持った左手を、掴む何者かの手があった。
「くっ、誰だ―――ぐがあぁっ!!?」
ドン! ドサッ!
その中年の太った男が、後ろを振り向こうとするのだが、首の後ろを(手刀の一撃で)強打されてしまい、中年の太った男が前のめりに倒れ込んだ。
なんと…そこに居たのが、一珂院恭、一珂院撩、一珂院翔の三兄弟であり、力自慢の恭が、その中年の太った男を捕まえている。
「あ、あなたたちは……!?」
「…その前に……」
撩が負傷している少女に近づき、流血している左側の脇腹の傷口を、少し光っている手で抑えつけていて、撩は魔法を発動している。
【補助魔法】
《セイント.ワールド.オブ.サウザント》を使用
撩の掌に「紅い瞳」がつき、この少女の左側の脇腹の傷痕をどんどんと吸収されていき、あっという間に傷口も流血も消えてしまった。
「えっ!? 傷口も血も痛みも全部無くなってる!? これって一体…っ!?」
「えっ!? 嘘ぉっ!? 一体どうやったのよぉ!?」
レイルもその少女も物凄く驚愕している。
「彼女の傷を異次元に吸収してもらったのさ。 もう消滅して…この世には存在しない。」
「……?」
「……マホウ……なの?」
「ああ、そうだな。 これを渡しておこう。 また何かあったら…ここに連絡しなさい。」
撩はレイルとその少女の二人に、一珂院家の名刺を渡した。
「いち……なんて読むの?」
「いちかいんりょう…だよ」
「一珂院…撩ね……日本の男性も、まだまだ捨てたものではないようね。」
「さぁもう夜も遅いから、俺たちが家まで送ろう。」
「はい、どうもありがとうございます!」
「ありがとう!」
そして…一珂院三兄弟は、レイルとその少女を、それぞれの自宅に送り届けていた。
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次回に続きます。
(2018年1月、来年より再開予定)