私の彼氏がヤンデレだったようです。(へタレ)
弓野先輩と、付き合いはじめて早3ヶ月。
どうやら彼はヤンデレだったようです。
ただの先輩後輩だったときは、朗らかな性格だった。
友達も多かったし、いつもニコニコ笑ってた。
でも、それは全部「仮面」だったと、付き合ってから告白されました。
「僕は周りの人間が物だとしか思えない。」
「だけど、君だけが違うんだ。君だけは命ある人間にちゃんと見える」
「君だけなんだ。僕の世界で生きてるのは」
そう言いはなつ、じっとりとした情熱のこもった瞳を見て、
喜ぶべきか、ドン引くべきか、ちょっと迷いました。
付き合いはじめて一ヶ月目で、束縛が酷くなり、今どこにいるのだ、なにをしているのだ、メールを返すのが遅いだの、なんなの理由をつけては、メールがやってきては、5分以内に返すことを強制されました。
2ヶ月目。チョーカーっぽい首輪が贈られました。
うへえ。
メールは電話に進化して、携帯のプランが特定の相手(先輩)とは無料になる契約に無理やり変更されました。
3ヶ月目。
しまいには、衣類を嗅いでは「他の男の匂いがする」とか。そんな末期症状まででてきてる始末です。
最近では、弓野先輩は、ジャニーズのような今時のかっこいい顔立ちなのに、目がドロリと濁って覗き込むと吸い込まされそうな暗さをたたえています。
えー。えー。なんでこうなった。
普通に、好き合って、つきあったつもりなんだけどなぁ。
あれかなぁ。蛙の子は蛙?
そういう因子をもったひとを無意識に好きになってるの?
私、普通のつもりなんだけどなぁ。
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遂に、ナイフ。
キラリと煌くナイフのご登場です。
うーん。警察に電話かなぁ。
どうしようかな。
「どうして君は僕だけを見てくれないんだよぉぉぉぉ。……うあああああああっ。苦しい。苦しいよぉぉぉ。君を殺して僕も死ぬぅぅぅぅ」
先輩が刃物を振り回して、イッてらっしゃる目をしています。
まぁ、しょうがないか。
ため息をついてしまいます。
「どうぞ?」
にっこり微笑んで、急所の首を差し出します。
「え?」
先輩の動きが止まります。
あ。今ならナイフが取れますね。でもまぁ、言葉のほうを続けます。
「だから、どうぞ、といいました。ただし、私を死んでいくところは一秒も目をそらさずきちんと見てくださいね。
殺したあと、ちゃんと私の死肉は髪の毛まで残さず食べてくださいね。で、食べて消化したあと、先輩も東尋坊でも飛び込んで一片の肉も残さず、死んでくださいね。
それが守れるのなら。どうぞ?」
腕を広げて、カモンと合図します。
「え?」
先輩はただ呆然としています。
鈍いなぁ。
私は、保育園の先生にでもなったかのように
優しく説明します。
「先輩、私、今の家族とは、養子関係なんですよ。」
「今まで誰にも言ったことありませんけど、
私の実の父と母は、お互いを殺しあって死んでいました。」
「どちらかの無理心中だと警察は判断しましたけど、私は違うと信じています。」
「だって、どちらも、とてもとても幸せそうな、死に顔でした。」
「思わず、羨ましくなるくらい」
「だから。どうぞ?」
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結局、先輩は戸惑うばかりで、私を殺せませんでした。
残念……なわけでもないんですが。
いえ、残念かもしれません。
だって、先輩の目がドロリと濁らなくなって、かわりに少し、怯えていました。
失礼な。
なんだっていうんですか。
殺したい殺したいって恐ろしい発言したの、そっちじゃないですかー!
私はいいよって言っただけなのに。
ナイフ持ったそっちが引くのってずるいと思うんですよねー。ああ。なんか、先輩とのお別れが見えてしまいました。……怯えなくてもいいのになー。
くすん。
あー。もう、普通の恋……もしくはちゃんと殺し合える恋が今度はできますように。
ヤンデレ男子をかこうとして
なぜかこうなりました。
先輩は最近多いなんちゃってヤンデレだと思います。