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現代に戻りました!
あの頃の自分は世間知らずのお嬢様だった。でも今ならわなるんです。ロシュバルト長官。
───あれ(・・)は一種のプレイだったんですよね。
前長官は、特殊な性癖を持っていたんですよね。
私にその相手になれっていうことだったんですよね。
王家簒奪なんて、全く関係なかったんですよね。
なんでその時に言ってくれないんですか。
分かった今、その事を思い返す度に自分を殴り殺したくなります。悶絶しています。
できればロシュバルト長官とアーネストと自分の記憶も抹消したいです。
前長官が連行されて、軍で事情聴取を受けた時に、すごく変な顔されたんですからね。
そういえば、その軍の方はロシュバルト長官の知り合いでしたよね。
私が話したことは噂にもならなかったのは、そういうことですか。
あなたのことです、周到に私の言っている戯れ言はもみ消して、上手く前長官を失脚させたんでしょう。
長官、ごめんなさい。馬鹿でごめんなさい。そしてありがとうごさいます。
庇ってくれて、嬉しかった。
そんなあなただから、私はこれまでついてきたんです。
──だから、長官が聖女と添い遂げたいと言うのなら、私は全力でそれを手伝いたい。
窓から見下ろすと長官は聖女の後をついて歩いている。
前は2階の窓からでも私の視線に気づいていた長官。
今はもう振り向かない。
「…あなたが、本当に愛する人を見つけられて良かった……。」
そっと触れた窓は冷たい。
すうっと息を吸い込み、
「……だって私、あんな恥ずかしいこと、もうしたくなかったんですからね!!!」
イリアは叫んだ。
人気が少ない場所をいいことに、叫び続けた。
「もう、どこでもイチャイチャって私の性格上すんごく辛かったんです!!
王様の前でもイチャイチャって、私がただの発情したバカ女じゃあないですか!!!
城下でも有名って、最悪です!!私の本当はありもしない醜聞を多くの人がしっているんですよ!!
ああああーーー最悪最悪最悪!!消えてしまいたい!!!」
ぜえぜえと息を切らすイリアは、叫びながら思わず床に叩きつけた書類を拾って集めた。
我ながらバカだと思う。ただ、これを週1はしないと気が持たかった。
最近は聖女が現れて長官(ストレス源)に手が掛からなくなり、これも2週間おきでも大丈夫になったのが嬉しい。
「聖女様、お願いだから長官と恋を成就してください……!」
そして今日も、涙をためながら祈るイリアの姿を見た官吏達から、菓子やら花やらがイリアの元に届くのだった。