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男尊女卑な表現があります。すみません。
父からもらった手紙には、日にちの指定はあったが時間は明記されていなかった。
だが、それをこの男にいっても逆効果だと思いイリアは口を閉ざした。
そんなイリアに男はそのでっぷりした腹を揺らし更に怒鳴りつける。
「だいたい、新入りならば手土産を持ってくるのが礼儀であろう。何故何も持っていないのだ!気の利かないやつだな。こんなんだから、私は女を雇うのには反対だったんだ!」
「!」
どうやら私は望まれて内務省の役人になれたわけではないらしい。
アーネストと話したときにした、いやな予感は的中した。もしかしたら父がコネでも使ってねじ込んだのかもしれない。
「では長官、女の私が雇っていただいた訳をどうか教えていたたけませんか?」
「それはわしが聞きたいわ!いいか、内務省でのお前の仕事はな、疲労で倒れた者の看病だ。
実家では有能だと甘やかされていたようたが、ここでは政務に関わる書類に触ることはいっさい禁じる。女は男の世話をしておけば十分だろう。はっはっは!!」
あまりの男尊女卑な考えに呆れて閉口する。長官もう用事は済んだとばかりにイリアを部屋から追い出した。
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その後アーネストを探したが忙しいようで見つからない。
何度か同じ道を通ってようやく救護室につき、椅子に座るとイリアはわずかな怒りと疲労を感じた。
なぜ父はここが私のやりたい事がてきる場所、なんていったのか理解ができない。実家のほうがずっとずっといいじゃないか。
「父様は何を考えてか…」
周りを見渡すと、10個並んでいるベッドはすでに半分埋まっている。
このような仕事をするつもりできたわけじゃない。私にはもっと違うことができるのに…。
「…だめね。任されたことをやってないのに、そんなこと思っては。私ができることを精一杯やり遂げてから、何ができるか考えよう!」
自分を励ますように大きな声で言う。長官の理不尽さにはまだ腹が立つけど、すこし吹っ切れた気がした。
父が着ていくように言った、くるぶしまでのドレスは動きやすい。やっぱりこうなることを分かっていたようだ。
寝ている人には少し寒いかもしれないけれど、こもった空気を変えるために窓を開けた。
掃除もずいぶんしてなかったのだろう、窓のさんにはホコリが積もっていた。
昨日兄に聞いた、内務省は労働環境がよくないといった噂は本当のようだ。
ベッドが10個と机が1つ、小さい台所があるだけの部屋の掃除はすぐに終わった。
自分の部屋には人を入れたくない主義のイリアは貴族令嬢であったが、掃除くらいならできる。家族には散々止めるように言われてきたが役に立ってよかった。
「失礼、今日から出仕のイリア嬢ですか?」
扉をあける音がして振り返ってみると背の高い、少し癖のある長い銀髪を一つに纏めた男が立っていた。
「はい、そうですが…。ええっと、ベッドをお使いになりますか?」
男は静かにイリアに近づいてきた。
「いや、私はここの汚い布団は使いません。それより、申し訳ない。伯爵令嬢にこんな仕打ちを。さぞつらい思いをされたでしょう。」
汚い布団って分かってるなら掃除すればいいのに。
「いいえ、私なら平気です。女が内務省で働けるなんて、今思えばおかしい話でした。しかし、頂いたお仕事です。私にできることを精一杯やってみる所存でありますので、ご心配なく。」
当面の目標は労働環境をよくすることですね、と告げると男はしばらく黙った後クスクス笑い出した。
「なるほど。あなたのお父様が推薦する理由がわかりました。これは頼もしい。名のり遅れました、私はロシュバルト・アーケードと申します。お見知りおきを、イリア嬢。」
アーケードといえば、国をきっての名家だ。爵位は侯爵。
確か内務省の次官もアーケード家の者だった気が…。
「一応次官なので、困ったことがあれば教えてくださいね。」
イリアの淡い金色の髪を一房取り、それにキスを落とした。
「あ、だめです、次官様。さっき部屋を掃除したばかりなので汚いです。口をゆすいだほうがいいかと…。」
「は?」
「そういえば内務省にはメイドはいないのですか?途中まではたくさんいたのですが、内務省に入ったとたんに見あたらなくて…。掃除を手伝ってほしいのですが。」
「そうですね。女に書類を触らせるなというのが長官の命令ですので…。そのおかげで掃除などは私達でやっております。」
「え?次官様もですか?」
「私は忙しいのであまりする機会はないのですが時々。普段は下官達がしてくれています。」
侯爵家の人間に掃除をさせる内務省。それにしても、長官はどれだけ女を馬鹿にしているのか。
イリアの怒りか伝わったのか、ロシュバルトは苦笑いをしながら
「長官は古い考えて有名な方でね。そのくせ自分の部屋には連日女を連れてくるんですよ。本当に困った方です。」
「…なぜ、私が出仕することになったのかご存知ですか?今の話を聞くに、長官が私が働くことを許可するとは思えないのですが。」
「そうですね。大変お怒りでした。」
ロシュバルトは濃青の瞳を細めて笑う。
「あの人はなんでもポンポンと判子を押すのでね、貴女の勤務を認める書類を混ぜておいたんですよ。そのあと散々ゴネられたんですが、なんとか。」
ますます話が分からない。
なぜそんな苦労をしてまで呼んだのに、救護室勤務なのか。
眉間にしわを寄せ考えるイリアに更に近づき耳元で
「一年まってください。そうすれば全てが終わりますから。」
と囁いた。
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次官様の言うことを真に受けるなら、彼は長官を失脚させようとしているのかしら…。
私が何かできることはないか。
と思っていると、ベッドから人が出てきた。
イリアが救護室に入って2時間、死んだように寝ていた1人だ。
顔色は青く、まだ体調はよくないようだが仕事に戻るらしい。
「大丈夫ですか?お昼ご飯は食べましたか?よかったら、お仕事しながらでいいので食べてください。」
ロシュバルトが去ってから作ったサンドイッチを袋に入れて差し出した。
「え?…女の人が、なんで…?」
「本日から救護室で勤務することになりました、イリアと申します。よろしくお願いしますね。」
にっこり笑うと、男の青白い顔が元の色を通り越して真っ赤になった。
「あ、ありがとうございます!!頂きます!」
「あの、勤務時間に何時間も休んで大丈夫なのですか?まだ何人か休んでいらっしゃるんですが、起こした方が?」
「いや、大丈夫です。連続48時間以上働いた人は上司から許しがでるんで。寝かせといてあげてください。6時間寝たら起きる規則で、ちゃんと目覚まし鳴りますから。
じゃあ、あの、本当にこれありがとうございました!」
「…い、いいえ……。」
ほんとうに、酷い。48時間働いて、6時間しか寝れないの?しかも汚いベッドで。
そんなの体を壊すなって言う方が無理じゃない。
ロシュバルト出せました!
しばらくは、汚いのが長官ですが( ;´Д`)よろしくお願いします。
あと2回くらいで過去話終わると思います。
あと、ロシュバルトはエロボという設定です。(設定の無駄遣い)
主人公はフラグを建設しようとする、フラグクラッシャーです。