なんか当主になりました
今回の作品はベースは戦国時代ですが完璧にコミカルかつ時代背景気にしない作品です。
「まったく、しんどいったらありゃしない!」
彼女の名は五徳。戦国乱世の魔王、織田信長の愛娘である。
彼女は現在尾張清洲城にて山のような政務、軍事関連の書類に埋もれていた。
何故織田の姫である彼女がそんな事をしているのか、それは数日前にある超常人外なる大いなる存在によって出された布告が原因であった。
その超常人外なる大いなる存在とはなんなのか?
まぁ、一言で言ってしまえば『神』である。
なんでもその神によれば五徳を含めた室町後期から江戸初期に生きた俗に言う戦国時代の人間を、再びそれぞれが望む年齢の体で復活させ(しかも寿命は無いらしい)、かつていた彼女等が居た日本の地を模した別世界に召喚したらいのだ。
因みに五徳は十五歳を希望した。
(突拍子も無い話だ)
復活した人々は皆さぞこう思っただろう。
そして何故そのような事をしたのか?
神はその問に軽々しいノリで答えた。
「もう一回戦国乱世をしてもらう為です」
(意味が解らない)
五徳を含め日本全国の戦国時代の人々が一つの思いになった瞬間である。
自分たちが死んで大分経った平成の現在、この神は今更いったい何を考えているのか?
この神の奇行にそれを理解する事の出来る者はいなかった。
そしてとにかく五徳はそんな訳の分からない状況で生前の家、織田家の居城である清洲城に降り立っていた。
(まあ、どうせ姫である私は表立って何かするわけじゃないだろうし、父上に任せれば適当に何とかなるでしょ)
と五徳はその時甘い考えのまま、父織田信長の下へ向かうのだが、そこで有り得ない事態に陥ってしまう。
「これは……どういう事かしら?」
顔を引きつらせながら父の本来座ってるであろう上座の席にある『探さないでください』の手紙を見る五徳。
(家出する子供かい!)
五徳は手紙の表面に書かれた文字が何かの間違いであって欲しいと願いつつその内容を確認する。
しかしそこに書かれていたのは紛れもなく表面に書かれていた内容そのものであった。
なんでも天下統一間近に光秀に殺され、あまつさえその天下事業を秀吉に美味しいところだけをかっさらわれた形になり、結構見下してた家康に最終的には天下を盗られたのが未だにショックが大きいらしくとてもじゃないが再び天下を目指す気になれなかったらしい。
(それで家出すんなよ!!)
五徳は手紙を握り締めながら家出した父に怒りをぶつけた。
その後清洲城に召喚された面々に以上の事を話し、当主を誰にするかを話し合ったのだが……
「某が!」
「いやいや!わしこそが!」
と、一向に纏まらないのであった。
挙げ句の果てにはお互いに悪口を言い合う様になる。
(全く、目糞鼻糞を笑うとはこの事ね)
五徳は半ば呆れながらもイライラし始めていた。
そして当主を決める会議はその後同じ様な不毛な内容で3時間の時がながれる。
その時だ。五徳の頭から思いっきり『ブチッ』と、血管が切れる音が室内に響き渡ったのは。
「大の男がピーピー五月蝿い!!つか悪口の言い争いとか子供かお前ら!!!」
会議場はすっかり静まり返ってしまったが、次の瞬間である。
「流石五徳様、お父上である信長様のようです!如何かな?ここは一つ五徳様に当主になって貰っては」
『異議なし!』
清洲城に五徳達織田一門と共に、復活していた村井貞勝の一言で満場一致で五徳が当主に決まってしまったのだ。
「ちょ、何勝手に」
五徳はすかさず異議を申し立てようとするも、皆は全然聞かなかった。
そして織田家当主、織田五徳が誕生したのである。
それ故に現在彼女は書類に追われてるわけだ。
「五徳様、次の書類です」
大量の書類に半ばへばっている五徳に容赦なく更に書類を渡す貞勝。
それを恨みの籠もった眼差しで睨みつけた。
「鬼!悪魔!大災害!!」
「書類さえ片付けて下されば、何なりとどうぞ」
貞勝はそれをしらっとした顔で受け流す。
「ははは。まぁ、これも当主のお仕事です、我慢してください」
睨み合う二人に笑顔で語りかける彼は丹羽長秀。織田四天王の一人にして貞勝と共にここ清洲に召喚された武将である。
因みに四天王は彼を除いて全員各地で独立してしまっている。
「な~が~ひ~で~。そう言いながら笑顔で書類置くの止めて」
「止めてと言われましても、これ全て姫しか処理できない案件ですからなぁ」
顎に手を当て惚ける長秀。
「姫!無駄口開く暇があったら手を動かしてくだされ!!」
鬼のような形相で怒鳴る貞勝。
「あーーー!もぅ!誰か助けて!!」
五徳の魂からの叫び声が天守から城中に響き渡った。
そして一通りの仕事を五徳が終わらせたのは何時間も後の明朝の事であった。
五徳の目の下には隈が出来、顔を若干やつれている。
(ほんと死ねるわ、この世界でも過労死ってあるのかしらね?)
五徳はふらふらと歩きながら城の上に向かって歩く。
天守閣から城下を見下ろす為である。
日々街の発展を清洲で最も高い建物である清洲城天守閣から望遠鏡で眺める。
これが彼女の日課だった。
(向こうの区画はまだ開発の余地がありそうね、あっちはそろそろ色々導入しても良さそうかしら?)
彼女の行政はこういった所から始まる。
無論、この為だけに天守から眺めるのではなく個人的にもここからの眺めが好きなわけであるが。
(前世ではなれなかった当主の座……折角だし天下統一、やってみましょうかね)
五徳はその胸に大きな野望を抱いたのだった。
ごとく武将列伝
織田五徳
織田信長の愛娘にて今作主人公。
父親譲りのカリスマとツンデレで戦国の世を生き抜く。
あの世で見た現在の日本の文化では恋愛少女漫画がお気に入りなようだ。
十五歳設定
丹羽長秀
一家に一台ほしい万能男(しかしどれも優秀ではあるがチートキャラにはかなわない)。通称米五郎左。
織田四天王の一人で今回の乱世でも織田家に仕える唯一の四天王。
時には厳しく笑顔で、時には笑顔で鬼畜に五徳支える。
二十二歳設定
村井貞勝
織田家が誇る内政チート。五徳にとっては爺のような存在で、いつも小言が絶えない。
村井さんお疲れ様です
三十六歳設定