3-5 垣間見える幾つかの真実
高速で広い室内を飛び交う巨体をかわしながら、カイリは武器を嵌めた右の拳を床へと突き立てる。
滑空する巨体には掠りもしないものの、床を割り、本や窓ガラスが吹き飛ぶほどの衝撃を生み出すその一撃は、室内へ無造作に踏み込んできた有象無象の魔物の殆どを吹き飛ばした。
吹き飛んだ魔物は、ゲル状の物体であったり獣の姿をしていたりと様々であったが、吹き飛ばした端から、ぞわぞわと再び廊下の方から同じ量が潜入してくる。
室内だけでなく屋敷全体で魔法陣が発動していたことを察したカイリは、小さく舌打ちして再び魔物達を吹き飛ばす一撃を繰り出した。
直後、彼の頭めがけ、凄まじい勢いを以って何かが真っすぐに飛び込んでくる。
彼が素早く床へと伏せてそれを避けると、殺意を持ったその何かを追うようにして、もうひとつ、何かが彼の頭上を飛び越えていった。
凶器の如き鋭い嘴と鉤爪を有する、ゆうにその背に4・5人の人間を乗せられそうなほどの、巨大な鳥型の魔物。
鷹のような鋭い眼光と峻厳たる佇まいは、カイリの世界にも存在する、グリフォンと呼ばれる魔物を彷彿させる。
赤と青の不気味な光を放つ魔法陣から召喚されたものの中で、その魔物だけが、異様な強さと存在感を放っていた。
その魔物にとって広いとは言えない室内を、魔物は、翼から巻き起こす風や室内の壁、柱などを利用して器用に向きを変え、縦横無尽に飛び回る。
環は武器を携え懸命に魔物の軌道を追うが、繰り出された彼女の一撃は、その風圧で幾らかの有象無象と窓際の壁を破壊しただけだった。
環とて相当の速さで魔物を追っている筈だが……
魔物の動きが速すぎて、追いつけない。当たらない。
いつもの微笑みを消した真摯な表情の環は、窓際から大きく跳躍して室内のほぼ中心に居るカイリの隣へと戻ってきた。
彼女は戻る勢いを加えて横薙ぎに武器を振り抜き、あっという間に室内を侵食しようとする巨体以外の魔物達を、唸りを上げるその風圧で吹き飛ばす。
環は、既に起き上がって巨体を警戒しているカイリに背を預けて構えた。
「ごめんなさい、当たらないわ」
警戒を解かぬまま、カイリは彼女へ微笑む。
「役割を交代しましょう。僕があの魔物の相手をします」
「でも……」
ちらり、と、環はカイリの左肩を見遣った。
彼の左肩は服が裂けており、そこから伺える肩には横一文字に浅くはない傷が刻まれ、相応の血が流れている。
魔法陣が発動した時、環を庇って負った傷だった。
比較的、速力の必要な動きを苦手とする環。彼女が自ら巨大な魔物の相手を選んだのも、それが理由である。
「大したことはありませんから」
彼女の憂いを察して、カイリは更に微笑んだ。
そうしてから、殺意を纏って一直線に飛びかかろうと構える巨大な魔物を、真っすぐに見据える。
「大丈夫。速さで僕に勝てるものは、そう居ません」
カイリが宣言した、直後。
怪鳥が、2人めがけて疾風の如き速さで迫ってきた。
反応が間に合わなかった環を伏せさせながら鉤爪による初撃をかわし、カイリはすぐさま力強く床を蹴って、頭上を通り過ぎた魔物を追う。
魔物は、方向転換の為に壁へと着地しようとするも――
――その時には既に、カイリの射程に捉えられていた。
肝を冷やした魔物は急いで体の向きを変える。
空を支配するその魔物が、己よりも随分と小さな器しか持たぬ矮小ないきものに戦慄することなど、平常であれば有り得なかっただろう。
だが、鋭い眼光を己へと真っすぐに叩き付けてくる目の前の小さな存在は、捉えられれば終焉を迎えるという確信を魔物に植えつけてくる。
魔物はそれを吹き飛ばし距離を取るため、羽ばたこうとするが……遅かった。
魔物の翼が広がりきるその前に、カイリの拳は魔物の腹の真ん中へとめり込む。
拳が衝突した瞬間、魔物の背後の壁に放射状の鋭い亀裂が走った。
血走る金の目が見開かれ、嘴の端から赤い色の含まれた泡を吐き出しながら、吹き飛んだ魔物は壁へと衝突する。
亀裂の入っていた壁はその衝撃で破壊され、ガラガラと崩れ落ちた。
苦痛に喘ぎながらもその巨体を起こそうとする魔物だが、目の前の小さな人間は、それを待っていてくれるほど生易しい存在などでは無い。
即座に魔物の側面から叩き込まれる蹴り。奇声を上げながら高速で窓際へと吹き飛ぶ魔物をそれ以上の速力で追い、上空から再度蹴りでの追撃。床へ叩き付けられ跳ね上がった魔物に加えられる、拳での渾身の一撃。
窓を破壊しながら屋敷の外へと飛び出す魔物を、カイリは追わなかった。
追う必要のないことが、判っていた故に。
環は、窓から見える景色を光の粒で染めていくものを、静かに見ていた。
彼女では決して追いつくことの叶わなかった疾風の如き魔物。それが、カイリに捉えられてから決着が着くまで、ほんの数瞬の出来事だ。
騎士達がカイリに偵察を任せたのは、恐らくそこに理由があるのだろうと、理解する。
なにものも、彼に追いつくことは出来ない。
……逃れることも、出来はしない。
そんな風に、考えさせられる。
そうして、ふと、周囲を見回した。
室内を埋め尽くさんばかりにぞわぞわと湧いてきていた、有象無象の魔物達の追撃が無くなっている。
屋敷全体で発動した気配があったため、屋敷の規模から察するに、まだ残っていてもおかしくはなさそうなものだが……それについては心当たりがあったため、さしたる問題でもないと認識し、環は小さく息をつくカイリの傍らへと駆け寄った。
「お疲れさま」
いつもの微笑みに戻った彼女はそう言って、カイリをその場へ座るよう促す。
カイリは有象無象の魔物について警戒を見せるが、環と同じ結論へと至ったようで、大人しく腰を降ろした。
と、ほぼ同時に、白く清潔感のある布が彼の左肩へと巻かれる。
カイリの傍らで膝立ちになった環は、愛用の手巾に血が滲むことも厭わず、手早く応急処置を終えた。
「本当は、深冬ちゃんみたいに治せたら良かったのだけれど。庇ってくれて、ありがとう」
ぼっ、と、カイリの顔に一気に熱が上る。
彼はしどろもどろになりながらも、気にしないで欲しい旨を伝えることに何とか成功した。
先程までの凛とした姿など何処へやらである。
「親衛隊のお仕事は、大変だったの?」
カイリが改めて状況に狼狽えていると、ふいに、環が言った。
こうした怪我をするような状況が幾らもあったのかと。そういう意味合いだろうかと、彼は受け取る。
「あまり、大変だと思ったことはありません。恩人の力になることは、僕達の悲願でしたから」
「恩人?」
環が首を傾げて問うと、カイリは眼鏡の奥で、懐かしむように目を細めた。
「僕達の国は、度々戦が起こります。人の手で起こされるものも勿論ありますが、比率的には魔物の手によるものが大半。僕達は、そうして被害に遭い、残された……いわば戦災孤児だったんです」
よくある話です、と、彼は笑う。
「そうした子供達の為の施設などもありますが、僕達は国王自らが参戦した討伐戦の生き残りでもあった為か、国王に直接保護され、彼の子息と共に育てて頂きました。
そのうえ、王の子息を護る親衛隊の役目までいただいて……これ以上ない光栄なんですよ」
ただ、静かに。彼の話を聞いていた環は、柔らかく微笑んで、彼の頭に手を添えた。
よしよし。良い子良い子。
そんな声が聞こえんばかりの雰囲気で、彼女はカイリの頭を撫でる。
柔らかい灰色の髪が撫ぜられる感触に、緊張のあまり、カイリは硬直した。
「ところで……」
彼の頭をなでなでしたまま、環は入り口の方へ視線を向ける。
「覗きは犯罪よ? はるちゃん」
「何であたしだけ名指し!?」
思わず身を乗り出してしまった華奈は、しまったあああぁぁ!! と、頭を抱えて悶絶した。
それをきっかけに、部屋の入り口扉の後ろから、ぞろぞろと出歯亀達が姿を現す。計4人の出歯亀は、一部はばつが悪そうに、一部はあっけらかんとして、部屋の中へと入ってきた。
2人が有象無象の魔物達についての憂慮を取り払ったのは、既に彼らの気配が屋敷内にあると気付いた故である。環が応急処置を終えた頃には既に部屋の前に居ることにも気付いていたが、何やらこそこそしていたので、あえて放置していたのだ。
尤も、カイリは緊張のあまり、隠れていることにまでは気付いていない様子であったが。
「こそこそと隠れて何をしていたの?」
「い、いや~、良い雰囲気だったのでお邪魔しちゃ悪いかと」
あらあら、と、環は特に咎める様子もなく立ち上がった。
「それより、深冬ちゃん。彼、怪我をしてしまったの。見てあげてもらえる?」
「えっ、あ、うんっ」
ばつが悪そうにしていた深冬は、硬直したままのカイリの傍へ慌てて駆け寄る。手巾を外してみると、浅くはないものの、何とかなりそうな傷だった。
深冬が早速治療を開始する中、部屋の中央付近まで足を進めたフラットとパルスが、ある一点で視線を止める。
床にぽっかりと空いた、四角い穴。
下へ下へと続くであろう、長い階段。
不穏な気配と、神聖な気配。
「さっきの魔物達は、この階段の封印を解いたことで現れたのか」
独り言のように呟かれたフラットの言葉に、ええ、と、環が短く答えた。
この先に、精霊と……恐らくロドリグも居るのだろう。
しかし、何故。
魔族が封印を施した筈の精霊の傍らに、人間であるロドリグが居るのか。
空間移動の魔法など、高度な魔法を使っていたことから察するに、多少は力のある者のようだが……彼が魔族の仲間であるとは到底思えない。
むしろ、ある程度の加護の力を得る者なら、ヴィレイス復活の魔方陣の糧として連れ去られていてもおかしくない筈なのだが……
フラットがそのような考えを巡らせていると、華奈と、治療を終えた深冬も階段の周囲に集まってきた。
「うっわあ、凄い長い階段。落ちたらどうなるかな」
四角の中を覗き込みながら、華奈が言う。
確かに。底が見えないほどに、階段は長く続いているようだった。
「そこの黒い人。試しに落ちてみますか? 人類のために」
「お前が落ちろ」
「こんなか弱い乙女が落ちたら怪我しちゃうでしょ。アナタヒドイヒトネ」
「ハッ」
「うっわなんですか今の嘲笑。普通に返されるより腹立つわ。ツラ貸せや」
「望むところだ」
怪我と言えば、と。
華奈とパルスのいつものやり取りは放置し、フラットは、四角い穴をまじまじと覗き込んでいる深冬を見る。
「そういえば、カイリは」
「あっ、怪我は治せたから大丈夫なんだけど、その……」
深冬は言葉を濁し、ゆっくりと振り向いた。
フラットが彼女の視線を追うと、そこには、床へ腰を降ろしたまま硬直するカイリの姿が。
「全然動いてくれなくて。ど、どうしよう」
深冬は困惑した表情でオロオロと狼狽える。
(……頭を撫でられたのが、そんなに衝撃的だったのか)
フラットは心の中で苦笑し、深冬に対して大丈夫大丈夫、と言いながらカイリの傍へと歩み寄った。
「こういう時は、こうすればいいよ」
にこやかな表情でそう言って、彼は己の得物……ハルバートを構える。
照準はカイリの頭。
ゴッ
容赦なく振り下ろされたハルバートの柄の部分が、カイリの頭に命中した。
なかなか良い音がしたな、と、驚いて口論を中断した華奈は思う。
カイリはというと、流石に正気には戻ったものの、鋭いのか鈍いのかよく判らない痛みに、両手で頭を押さえて蹲っていた。
「そろそろ行くぞ」
「……!! ……!!?」
フラットが言うと、声にならない声を上げながら、カイリはようやく立ち上がる。無論、頭は押さえたままだ。
「……フラットっていつもこんなん?」
華奈はこっそりとパルスに耳打ちする。
「何がだ」
「いや、今日はよく彼の黒い部分を目にする日だなぁ、と」
「……今頃気付いたのか」
それは、彼の黒さにということですか、と。
華奈は小さく小さくひとりごち、合流するフラットとカイリを目で追った。
-*-*-*-*-*-*-
長く、長い階段をひたすら下りる。
通路に照明は無く、狭い。人間2人が並ぶのがやっとの幅であったため、6人は一列になって歩いた。
ランプを持つフラットを先頭に、カイリ、華奈達と続き、最後尾にはパルスが就く。
ランプの灯りに照らされる壁は、屋敷内と同じ(趣味の悪い)壁紙の貼られた人工的な壁が続いたが、しばらく下ってゆくとむき出しの岩肌になった。
その頃になっても、階段の終わりは見えない。
そうして、周囲の気配に気を配りながら無言で下り続けるという状況に、何人かが辟易し始めた頃。彼らはようやく、視界の先に微かな光源を捉えた。
階段を下りきると、ランプの炎を消し、やけに明るい空間へと彼らは足を踏み入れる。
その場所は、巨大な空洞だった。
水の精霊が封じられていた場所と、そう変わらない広さ。ただ、地面の色は土色で、階段と同様のむき出しの岩肌のような壁も同じ色。そして、高い天井にびっしりと散りばめられた、この空間の光源である石英のような石は、ほんのりと黄色の含まれた光を放っていた。
売ったら幾らになるだろうかと。セオフィラス湖畔の洞窟で華奈が気にしていたものと同種のその石は、あらゆる場所で採掘されるもので、第三世界の人々の夜間の一般的な光源として使われている。要するに、さして高価なものでは無いらしい。
と、今はそのようなことはどうでも良く。
彼らの正面、入り口から最も遠い場所。
そこには黄色に彩られるようにして、世界の力のひとつが存在していた。
デルヴィスやスプライト同様、人間の女性に近い姿。
肌は褐色で、顔を含め全身に、一段濃い色で複雑な紋様が刻まれている。
ゆるやかにたゆたう長い髪は深緑の色で、その御姿は、壮麗とそびえる一本の木を連想させた。
同様の封印なのであろう、地面からそびえる巨大な水晶の中に閉じ込められた精霊。
伏せられた瞳。その顔立ちは幼いが、鳥肌が立つことを禁じ得ない。
騎士達は最敬礼をし、ふと。顔を上げたところで、別の存在があることに気付いた。
精霊が在る場所の、すぐ手前。
跪き、何かを求めるかのように。縋るように、精霊へと手を翳しているのは……望まれぬ暴君、ロドリグだった。
華奈達が厳しい瞳でロドリグを見据え、足音を立てながら前進し始めたところで、彼はようやく侵入者の存在に気付いて勢い良く振り返る。
「それ以上近付くなっ!!」
そう叫んで、牽制の為か振り払うように腕を振った彼は、酷く狼狽しているように見えた。
何かに怯えているようにも見える。
だが、華奈達にとって、彼の心情など関係のないこと。知ったことかとばかりに、6人はロドリグの言葉を華麗に無視し、空間を奥へ奥へと進んでいく。
すると、彼らが空間の中央付近へと差し掛かった辺りで、ロドリグは表情を更に歪め、両手を広げる構えを取った。
不穏な気配を感じ取った華奈達は、ぴたりと足を止める。
彼の表情は悲愴的なものから怒気を孕んだものへと変わり、彼を取り巻く空気も変わった。
いや、空気と言うよりは。
……魔力だ。
うっすらと、しかし不気味に輝く魔力の渦が、彼の周囲を取り巻いている。
「ようやく、手に入れたのだ」
静かな口調で、彼は語り出した。
「不公平な光を持って生まれたあの男の所為で手に入れることを諦めていた、眩しかった地位。確かなる力。ようやく手に入れたそれを、貴様らは理不尽に奪おうというのか!!」
静かであったのは、語り出しのみ。彼の言葉には、徐々に、表情からも感じ取れる激しい怒気が含まれていく。
あの男とは誰を指すのか。
理不尽とは、誰に相応しい言葉なのか。
ロドリグは元々、この街の統治者の使用人であったと。酒場の店主の言葉を思い出す。
あの男というのが統治者を指しているというのなら。
統治者の元で働きながら、彼はずっとその立場を羨んでいたとでも言うのだろうか。同じ力を欲していたとでも言うのだろうか。
ならば、何故。
ようやく手に入れたというその力で、街人達をねじ伏せる道を選んだのか。
街人達から認められていたことを感じさせられる、行方不明の統治者。彼は少なくとも、ロドリグと同じ統制を布いてはいなかった筈だ。
力を振り翳せば、力により淘汰される。
それは結集した街人達の手によるかも知れないし、更なる力を持つ何者かの手によるかも知れない。
どちらにせよそれが世の理であるというのが、華奈達の認識だった。
「よく考えてみてください。貴方はほんとうに、この街の人たちから受け入れられているのかどうかを」
静かに、静かに。小さな子供に言い聞かせるかのように、環が言う。
うるさい、と、ロドリグは目を怒らせ、口の中で呟くだけであった。
「仮にもお前が支配者であることが出来たのは、他者を押さえ付ける力を持ってしまったから。それだけだ」
「そんなの、街の人達がいつまでも受け入れてくれる筈がないよ」
「真に従うべき存在の姿を、在り方を、街人達は知っている。彼らはいずれ本来の姿に回帰する」
パルス、深冬、フラットが続く。
うるさい、うるさい、うるさい……
初めは曖昧な発音でしか無かった彼の呟きは、徐々にはっきりと言葉として聞き取れるものへと変わっていった。
彼らの言葉は、今のロドリグには届かない。
街で初めて対峙した時は、話は通じないものの、まだ会話が出来ていた。
だが、今は違う。
彼の様子は、どこかおかしい。
華奈達と対峙しているというのに、彼女達を見ていない。目の前の彼女達ではない、別の何かに怯えているかのような……
……何より、彼を取り巻く不気味な魔力が不可解に過ぎる。
人間が持ち得る“魔法”と呼ばれる類の力では無いと。そんな予感がするのだ。
「あなたが、支配を止めないというのなら」
「……あたし達が、あんたを押さえ付けるだけだ」
カイリの言葉を引き継いで、華奈が締め括った。
話が通じない相手に取れる手段は、実力行使しかない。
街人達にそれが出来ぬというのなら、更なる力を持つ者……華奈達の手で、淘汰するのみだ。
「うるさい、うるさい、うるさあああああぁぁああぁあぁい!!!!」
遂に、ロドリグは咆哮した。
同時に、彼の両手と背後の空間に、不気味な赤の輝きを湛える大小様々な魔法陣が複数展開される。
華奈達が各々瞬時に動き出せる態勢を整えると、ゆらりと、同じ不気味な赤に支配された彼の目が、彼女達へ向けられた。