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アマンダの帰還と穏やかな午後

 シュタインベック王立魔法学園の卒業式。アマンダは、立派に成長した教え子たちと、信頼できる後任の校長にすべてを託し、その門を後にした。


 馬車がダベンポートの公爵領に入り、見慣れた城館の姿が見えてくると、アマンダの胸は高鳴った。門の前には、数年前と変わらぬ、いや、少しだけ大人びた渋みを増したアーサーが立っていた。


 馬車が止まり、扉が開く。アマンダが降りるよりも早く、アーサーはその手を取った。


「おかえり、アマンダ。……長く、寂しい数年だったよ」 「ただいま戻りました、アーサー。お待たせしてごめんなさい。でも、約束通り帰ってきましたわ」


 再会の抱擁を交わす二人の頭上には、澄み渡った空が広がっていた。かつて戦火を共にした二人にとって、この静かな再会こそが、何よりの勝利の証だった。


 数日後。公爵邸のテラスには、香ばしい紅茶の香りが漂っていた。 向かいの席に座るのは、親友のウェンディだ。二人の間には、色鮮やかなマカロンとスコーンが並び、かつての少女時代に戻ったかのような華やかな空気が流れていた。


「それで? 公爵夫人に戻った気分はどう、アマンダ? 校長先生も素敵だったけれど」 ウェンディが茶目っ気たっぷりに尋ねると、アマンダは照れくさそうに微笑んだ。


「まだ少し不思議な気分よ。でも、シュタインベックから届く手紙を読むと、あそこで過ごした時間は間違いじゃなかったって思えるの」


 アマンダは、机の上に置かれた数通の手紙に目を落とした。


「一期生のエリックを覚えている? 彼は今、王都の宮廷魔導師として、農業の収穫量を増やすための魔法研究を先導しているんですって。それから、泣き虫だったリナは、隣国の医療団に参加して、魔法で多くの傷病者を救っているそうよ」


「まあ! 素晴らしいわね」 ウェンディは感心したように頷いた。 「かつてのシュタインベックでは考えられなかったことだわ。魔法が『奪う力』ではなく、『育む力』として根付いたのは、間違いなくあなたの功績よ」


「私はただ、きっかけを作っただけ。彼らが自らの手で、女神の許しを証明し続けているのよ」


 アマンダは紅茶を一口含み、幸福な溜息をついた。 テラスからは、庭園で剣の手入れをするアーサーの姿が見える。


「さて、次はどの卒業生から良い報告が届くかしら」 「あら、まずはゆっくり休むのが先決よ。アーサー様も、これからはあなたを独り占めするつもりでしょうから」


 二人の柔らかな笑い声が、午後の光の中に溶けていった。シュタインベックの復興と、魔法の芽吹き。それはアマンダという一人の女性が蒔いた種が、今や大輪の花を咲かせた瞬間であった。


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