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黄金の枕と女神の慈悲

 アイゼンベルグの行方がようやく判明したのは、クーデターの火種が消え、人々がようやく平穏を噛み締め始めた頃のことだった。


 かつての首謀者として執念深く追跡の手は伸びていたものの、彼は煙のように姿を消していた。しかし、捜索隊がたどり着いたのは、隣国キャリントン領へと続く深く暗い大森林の奥深くである。 彼は、もはや帰ることのない故郷に背を向け、逃亡の果てに力尽きていた。


 その遺骸は、奇妙なほど静かだったという。 アイゼンベルグは、溢れんばかりの金塊が詰まった鞄を枕にし、まるですべての執着を抱え込んだまま眠りについたかのような姿で見つかった。かつて権勢を誇った男の最期は、誰に看取られることもない、森の静寂の中での行き倒れであった。


 それから数年の月日が流れた。 シュタインベックの地にユルゲン王の穏やかな治世が戻ると、国にはある「変化」が訪れ始めていた。


 かつて失われたはずの魔法の力が、この地の子供たちに宿り始めたのだ。 最初はほんの小さな灯火のような、弱い魔力に過ぎなかった。しかし、その数は一人、また一人と増えていく。


 ユルゲン王は、この現象を深く喜んだ。 「これは、我が国が女神から許しを得られた証左である」 王はそう宣言し、魔力を持った子供たちが生まれたことを言祝ぎ、国を挙げて「許しの日」を制定した。街中が花の香りと祈りに包まれ、人々はかつての過ちが雪がれたことを実感したのである。


 当初、魔力を持った子供たちは魔法の先進国であるダベンポートの魔法学園へと留学させていた。しかし、国内で魔力を持つ子が急増するにつれ、親たちの間から切実な要望が上がるようになる。


「どうか、このシュタインベックの地にも、子供たちが学べる魔法学園を」


 ユルゲン王はその声に応えるべく、信頼を置く隣国の知己へと相談の書状を送った。 相手は、ダベンポートのアマンダ公爵夫人。 かつての戦友であるアーサーが、その功績によって新たに公爵家を興し、アマンダはその傍らで公爵夫人として凛とした美しさを湛えていた。


「アマンダ、君の知恵を貸してほしい。この国に、新しい魔法の風を吹かせたいのだ」


 シュタインベックの地にかつての魔法の栄光が、今度は正しい形で根付こうとしていた。

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