王の宣言と、解放の鐘
シュタインベック王城。
かつては軍靴の重たい足音が響いた場所も、今はただ、冷たい空気が流れているばかりだった。
玉座の間に足を踏み入れたユルゲン王は、一瞬だけ目を閉じた。
——自らの王国が奪われた日の記憶。
——地下牢に閉じ込められた夜の冷たさ。
それでも彼は、顔を上げた。
「ユルゲン・シュタインベック王、ただいま帰還した!」
王の声が響き渡ると、集まっていた民たちの間にざわめきが走った。
恐れ、困惑、そして……歓喜。
ユルゲン王は、ひとりひとりの顔を確かめるように視線を巡らせ、はっきりと言い放った。
「軍部のクーデターは、失敗した。
暴力と恐怖でこの国を支配しようとした不届き者どもは、すでに民の手により捕らえられた。
今日、この時をもって、わが国の秩序は民の手に取り戻されたのだ!」
叫びではなく、震えるほどの涙混じりの歓声が、玉座の間を包んだ。
ユルゲン王はアーサーとキャリントン公爵の前に歩み出る。
その手には、王家に伝わる古い勲章があった。
「アーサー王子、そしてキャリントン公爵。
そなたたちの勇気と慈悲は、わが国を無血で救った。
女神の御前に誓い、そなたたちに最大の賛誉を授ける」
二人が跪くと、ユルゲン王はゆっくりと勲章を掲げた。
「そなたたちの行いは、わが国の未来を繋いだ。
この功績、永劫に残すと約束しよう」
その言葉を聞いた瞬間、アーサーは胸の奥が熱くなり、拳を強く握りしめた。
——誰も殺さずに、国を救えた。
それは、彼が、そしてアマンダが何より望んだ未来そのものだった。
キャリントン公爵もまた、深く頭を垂れながら、静かに息をついた。
非殺の誓いを破らずにここまで来られたことへの、深い安堵が胸を満たしていた。
ユルゲン王は二人を立ち上がらせると、玉座の間に向けて高らかに宣言した。
「——シュタインベックは、今日より再び女神の光の下にある!」
城内に希望の鐘の音が響き渡り、
王の帰還を祝う歌が、王都全体に広がっていった。




