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再会の春



1年後



俺は久しぶりの島の空気に

大きく深呼吸をした


港から見える風景は

さほど変わっていなくて安心した



この1年、いとーさんとは一度も連絡を取らなかった


大変な事や寂しい時もあり

話したい事もたくさんあったが


なぜか、連絡を取る気になれなかった

電話なんかではなく

会って色んな事を話したかったから


今日はまとまった休みが取れたので

ようやく1年ぶりに島に来る事が出来た



早速、いとーさん家に行ってみる



港からそんなに遠くない

いとーさん家は歩いて行ける






「あれ?」


久しぶりに見るいとーさん家は

遠目から見ても雑草だらけで

しばらく手入れをしていない雰囲気だった


玄関を見てみると表札も無く

鍵が閉まっている




え、、、

いとーさん…???



嫌な予感がして

ドキドキと心拍が上がった



隣りの家は少し離れたところにある

俺は全力で走った


まさか、、し…?

いや、引っ越した?



「すみません!!」


隣りの斉藤さんの家のドアを叩き

ピンポンを押しまくった



「はいはい??」


斉藤さんはすぐに出てきてくれた


「あの、すみません突然

あの家に住んでる伊藤さんって

今どうしてるか知ってますか?」



「あの家?10年前くらいからずっと借屋だよ?」



……え?



「最近は誰も来てないなぁ

結構ね、来るんだよ、島暮らしをしてみたい人とか

島でロケする時なんかに借したり


オーナーは本島にいてね、山城さんって人

そろそろ手入れしに来るんじゃないかな」



「…いや、俺1年前

あそこに住んでたんですけど、、、」


「あ、そうなの?

じゃあ、あなたの後は誰も借りてないんじゃないかな

ここ1年は全然人の姿見ないからね」



「……、そうですか

あ、ありがとうございます……」





どうゆう事だ…??


いとーさんと暮らした1年は幻だったっていうのか?





【再会の春】







俺はあの当時

思いやりが無くてわがままで話の通じない嫁と離婚して

最愛の娘に会えなくなり

なのに毎日、真面目に汗水垂らして働いて

酒飲んで寝て、の繰り返し


その中で自分の人生を悲観したり

ネガティブな感情ばかり浮かんでいた…


俺は何のために生きているのかわからなくなっていた

そんな時に一年間転勤する事が決まり

見知らぬ土地で知り合いもいない中

1人で生活するにはあまりにも孤独で寂しすぎた











俺は、何だか現実とは思えない現実に呆然としながら

斉藤さんに御礼を言い


いとーさん家に戻った




久しぶりにいとーさんの畑に踏み入ってみる

何の野菜も無い、雑草だらけ

もう動物に狙われる事も無い


いとーさんが作った

カカシが何体も残っていたが

全て倒れていて、脳みそが飛び出していた


劣化しているカカシの1つ1つを立て直して

丁寧に脳みそを直す


ほんと変な事する人だったよな


俺とは真逆の人だった




いとーさんみたいな人が側にいたら

毎日楽しいだろうな

いとーさんみたいな人がいたら寂しさなんて感じないだろうな



毎日、毎日、思っていた

毎日、毎日、現実逃避していた





そうか、、、


そうだったんだ、、、




いとーさんは俺が作った幻想だったんだ!






そういえば、覚えがある…


何体のもカカシを作ったり

娘の好きなスイミーの絵本を思い出したり(カメムシと戦ったり)

セミの抜け殻集めも

藁で編んだマフラーも


いとーさんでは無い、俺がやった事だ!!




全部自作自演だったんだ!!




俺は、寂しさのあまり

いとーさんという架空の人物を作りあげていたらしい




俺は、吹き出して笑った


そして、涙が頬を伝った



いとーさん


俺はもう大丈夫です


あなた無しでも

ちゃんと前を向いて生きています


俺は、心の中で

もう会う事は叶わない

いとーさんに、そう報告すると



自分の胸に手を当て

ドクンドクンと脈打つ心臓を確かめてから

前を向き歩き出した




【完】

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